「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月31日~男子9月13日/ハードコート)大会2日目、男子シングルス1回戦で、現在世界ランキング115位のアンディ・マレー(イギリス)が4-6、4-6…

「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月31日~男子9月13日/ハードコート)大会2日目、男子シングルス1回戦で、現在世界ランキング115位のアンディ・マレー(イギリス)が4-6、4-6、7-6(5)、7-6(4)、6-4で西岡良仁(日本/ミキハウス)を下し、2回戦進出を決めた。

勝者マレーは、試合後の記者会見で以下のように語った。(前編)【動画】マレーvs西岡 まさに死闘といえる大激戦【まるごと記者会見】マレー「オリンピックの時は、フェデラーがボックス席に座ってた」全米OP1回戦後(後編)

Q: 今日のあなたのプレーと、それについてどう思うか教えて下さい。

「もちろん僕の過去最高のプレーとは言えない。コート上での試合後インタビューでも言ったけど、最初の2セットは、完全にプレーのバランスが崩れていた。球を十分に打てていなかったから、相手に主導権を握られた。それで攻撃的になり過ぎて、ミスが出た。

でもだんだんに、コート上でやるべきことのバランスが取れるようになってきた。最後の方では、絶好調とまではいかないけど、球もよく打てていたし、サーブも良くなったし、出るべき時にネットに出ることができた。第2セットや第3セットでも前には出ていたけど、正しいタイミングじゃなかった。

試合の最後の方では正しいバランスでプレーできた。勝てたのは本当にかなり特別なことだ、僕はベストのプレーができてなかったからね。観客は誰もいない。5セットの長い試合。長い間5セットマッチはやってなかったからね。勝つためにものすごく頑張ったよ」

Q: どの段階で、流れを変えられると確信しましたか?

「第3セットを取った時かな。少しプレーが良くなってきたから。それまでほどサーブをキープするのにプレッシャーを感じなくなった。まだすべてのラリーの主導権を握ってはいなかったけど、それまでよりラリーを支配できるようになっていたし、どうすれば勝てるか分かってきた。最初の頃は、わかってなかった。

危ない試合だった。西岡はとても良い選手だよ。彼はこれまでにもハードコートですごくいい選手に勝ったことがある。すごくいい選手と接戦で負けたこともある。だから難しい試合になるとわかっていた。西岡は相手に難しい試合をさせる。彼と試合するのは簡単じゃない。

それと、試合の最初の方で、何というかちょっとペース配分してしまった。経験が浅い頃、5セットマッチをあまりやったことがない頃にやってしまうようなことさ。メンタル的に、長い試合をしたらどう感じるかわからない不安があって、エネルギーを使い過ぎたくなかった。

でもそうすると、動きも悪くなるし、適切なショットが打てなかったりして、結果的に試合は長引く。つまりやるべきことの真逆なんだ。長いこと5セットマッチをやっていないと、心理的にそういうことが起こり得るんだと思う」

Q: 4時間39分の試合でした。体調はどうですか?アイスバス(疲労回復のための低温風呂)はあるんでしょうか?他の選手たちが会場に与えられた特別室から出てきて、観戦していたのに気付いていましたか?

「うん、彼らが観戦してたのは知ってたよ。僕には力になった。たくさんの他の選手たちが自分の試合を見てるっていうことはあまりないからね。ボックス席を見上げたら世界のトップ5とかトップ10とかの選手たちが自分を見てる、というのはある意味気が散るかもしれない。

でも僕にとっては、(テニスコーチの)妻の父が見ていた。兄とそのコーチが見ていた。他にも何人かイギリスの選手たちが見に来て、応援してくれた。観客はいないから静かなものだけど、見渡すと少なくともいくつか僕を励ましてくれる人の顔が見えた。それは本当に、本当に力になったよ」

Q: それで体調はどうですか?アイスバスはあるんでしょうか?

「うん、2つあるけど、使っていいと聞いたよ。もちろんロッカールームに入る人数と同様、施設を使うにも制限がある。でも試合の後には使っていいと言ってたから、助かるよ。

アイスバスはつま先が心地良くないんだ、なぜかは知らないけど。長い試合の後、つま先も他の所も疲れていて、アイスバスに入る。するとつま先は、本当に心地良くないんだ(笑)。

長い試合が無事終わって嬉しいよ。体力的には悪くなかったと思う。つま先とかあちこち痛いけどね。でもあれだけ長い試合をよく乗り切ったと思うよ。それがいくらかペース配分して最初の2セットであまり体力を使わなかったせいかどうかはわからない。でも体力的には、良かったと思う」

Q: あなたは以前はもっと、いわば悲しげな声で話していたように思います。今は前より明るいというか、少し違って見えます。状況が変わって記者会見へのアプローチも変わったのでしょうか?

「分からないな。変えようと思ったわけじゃない。でも確かに、ここ3年ほど、試合の後いつもかどうかはわからないけど、身体の痛みのせいでみじめで、テニスをすることを楽しめなかった。でも今は、もう二度とできないだろうと思っていた4時間半の試合もできた。

今は(2019年、手術前の)“全豪オープン”でロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)と試合した後よりずっといい気分だよ。骨盤にずきずきする痛みを感じることなくここに座っている。今夜もぐっすり眠れる、そんな理由でね。

僕の生活の質は著しく向上した。だから気分もいいし、幸せだと思う」

Q: 今回の逆転勝ちはあなたの中でどのぐらいの位置づけですか?あなたは2セット先取され、第3セットでも先にブレークされ、第4セットではマッチポイントを握られ、第5セットでも先にブレークされました。

「マッチポイントを握られたことはすっかり忘れてたよ。どのぐらいの位置づけかというのはわからないな。全部の試合を憶えているわけじゃないし、全部の5セットまでいった試合や、先に2セット取られた試合を憶えてるわけじゃない。

ここまで来るための努力、やってきたすべてのことという意味では、もちろん一番大変だったよ、すべての旅路を考えればね。試合自体で言えば、体力的にもっと大変だった試合はあったし、もっとすごい逆転もあったんじゃないかな。でも位置づけはわからない。

第5セットで先にブレークされたって言ったけど、第3セットもだよね?」

Q: そうです。

「つまり敗北は目の前だった。でも何度も何度も追いついて、戦い続けた…そのことを誇りに思うよ」

(後編に続く)

(テニスデイリー編集部)

※写真は「全米オープン」でのマレー

(Photo by Al Bello/Getty Images)