「オープン球話」連載第31回 【ロッテ最強投手は、マサカリ投法の「あの人」】――八重樫さんが選ぶ「球団別歴代ベストナイン…

「オープン球話」連載第31回
【ロッテ最強投手は、マサカリ投法の「あの人」】
――八重樫さんが選ぶ「球団別歴代ベストナイン」、今回はロッテ編です。オリオンズ時代から、現在のマリーンズ時代まで、思い出に残る選手を挙げてください。
八重樫 ピッチャーは村田兆治さんかな。まだ大エースになる前の、若手時代の村田さんを二軍で見ているんですよ。当時はマサカリ投法じゃなかったんだけど、まだまだコントロールに難があって、球は速いけど粗(あら)も多いピッチャーだった。でも、それがあの独特の投げ方を身につけて大エースになって、さらにトミージョン手術の先駆けとして、見事に復活も遂げた。ここは村田さんで決まりじゃないかな。

ロッテの主砲だった落合博満(左)とエースの村田兆治(右)
――確かに「サンデー兆治」としての復活劇は感動的でしたし、先日の始球式で見せたように、70歳の現在でもすごいボールを投げますからね。
八重樫 若い頃から、とにかく強く腕を振るピッチャーでしたね。その代わり、どこに来るかわからない(笑)。だから、あんなすごいピッチャーになるなんてまったく思わなかった。おそらく、追究心がすごいんでしょうね。あれだけ膝をかがめたピッチングフォームにたどり着くまでに、相当な研究をしたはずです。そして、それを支える強靭な下半身。村田さんの成功は努力のたまものだという感じがするね。
――他の候補は誰かいましたか?
八重樫 村田さん以外では迷わなかったな。伊良部秀輝もすごかったし、牛島和彦もいたし、仁科時成も印象的な投手だったけど、ここは文句なく村田さんでいきましょう。
――わかりました。では、キャッチャーは?
八重樫 これは迷ったんです。平成時代の里崎智也と、昭和時代の袴田英利とね。でも、トータルで考えた結果、里崎かな? 個人的にも里崎は気になっていたし、バッティングは勝負強かったし、リードも粘り強くしつこかった。相手の弱いところを徹底的に突いていくし、「ここが打てない」と見極めたら、集中的にそこばかり攻めていく。いやらしいキャッチャーですよ。
――「個人的にも気になっていた」というのはどういう点ですか?
八重樫 本当に個人的なことなんだけど、仙台のクラブで飲んでいたら、ホステスさんが「里崎さんも来たことがあるんです」って言っていてね。「本当に気の利くいい人なんですよ」って力説していたから、「里崎っていいヤツなんだな」って気になるようになったんだよ。接点はないんだけど、なぜか気になるんだよね(笑)。
【リー兄弟が揃ってランクイン】
――では続いては内野陣をお願いします。
八重樫 最初にイメージしたのは「リー兄弟」です。レロン・リーとレオン・リーの2人。レオンは後にヤクルトでチームメイトになったけど、球史に残る助っ人だよね。ということで、まずはお兄ちゃんのレロンをDHに。弟のレオンをファーストで選びました。
――レオンの息子で後のメジャーリーガー、デレク・リーは日本での暮らしが長くて、今でも日本びいきだと言いますね。リーブラザーズが日本にアジャストできたのはどうしてだと思いますか?
八重樫 お兄ちゃんが、日本が大好きだったって言うよね。で、弟のレオンはお兄ちゃんを尊敬していたし、ほぼイエスマン状態だったから、兄弟揃って日本になじめたのかもしれないな。あの2人は性格が最高だったから、日本人選手からも愛されていた。80年代までは日本を舐めていた外国人選手が多かったこともあって、よけいに際立ったんだろうね。レオンがヤクルトに移籍したときには、通訳を交えてよく一緒に呑んだよ。
◆セクシー&キュート!ライオンズの美女パフォーマーたち
――どんな話題で飲むんですか?
八重樫 野球の話をしたり、他愛のない話ばかりです。で、カラオケのある店に行ってレオンは英語の歌を歌って、僕も英語の歌を歌ったりしてさ。たとえば、『カントリーロード』とか(笑)。そのリー兄弟は問題なく決まったんだけど、他のポジションについては、今でもまだ迷っているんですよね......。
――どのポジションで迷っているんですか?
八重樫 ポジションというよりも、有藤通世さんのことなんです。この連載の「中日ドラゴンズ編」でも言ったけど、落合博満は中日でも、巨人でもなくロッテ時代が一番輝いていたと思うんだよね。三冠王を獲得したのもロッテ時代だし。だから、落合はどうしても選びたい。順当に考えれば80年代前半の「セカンド・落合、サード・有藤」でいいかもしれない。でもね......。
【「ミスターロッテ」がまさかのランク外に!】
――......でも? 「セカンド・落合、サード・有藤」で何も問題ないと思いますが......。
八重樫 セカンドには西岡剛がいるんですよ。攻守にわたって西岡の存在感は大きかったと思います。ということで、泣く泣く有藤さんを選外にしたんです。でも、本当にそれでいいのか、いまだに迷っているんだけどね。
――セカンドでは山崎裕之さんも忘れがたい名選手ですが、いかがですか?
八重樫 あっ、そうだ。山崎さんがいたね! すっかり忘れていたな(笑)。評論家時代、山崎さんとはいつもよくしゃべっていたのに、忘れちゃいけないよね。セカンドは西岡もいいけど、山崎さんということでいきましょう。有藤さんには申し訳ないけど、今回は選外ということで......。
――「ミスターロッテ」がまさかの選外ですか! ということは、「ファースト・レオン、セカンド・山崎、サード・落合」という布陣になりますね。では、ショートは?
八重樫 ショートは水上善雄ですよね。迷ったのは小坂誠。でも小坂は、以前の「東北楽天ゴールデンイーグルス編」で選んでしまった。だから、残るのは水上ということになったんです。もちろん、水上だって「歴代ベストナイン」の名に恥じない選手ですから。
――なるほど、八重樫さんの中では「一度選んだ選手は別の球団では選ばない」というマイルールがあったんですね(笑)。
八重樫 そうそう。どうせなら、多くの選手を紹介したいじゃない(笑)。
――では、外野陣を発表してください。
八重樫 外野手はサブロー、西村徳文、福浦和也の3人かな? 福浦はファーストがメインだったけど、ポジションの都合もあって外野で選びました。張本勲さんは晩年の二年間の在籍だったので除外して、この3人だね。サブローは巨人に移籍したけど、古巣に戻ってきたし、生え抜きならではの渋い顔ぶれだけどなかなかいい布陣だと思うな。ということで、打順はこんな感じかな?
1.西村徳文(中)
2.サブロー(左)
3.レオン・リー(一)
4.落合博満(三)
5.レロン・リー(指)
6.福浦和也(右)
7.里崎智也(捕)
8.水上善雄(遊)
9.山崎裕之(二)
P.村田兆治
――今回も白熱した議論となりました。次回は「横浜、大洋編」をお願いします!
八重樫 現役時代に対戦した選手の思い出がたくさんあるので、いろいろ思い出しながら考えておきます!
(横浜、大洋編につづく)