「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第23回目の講師は、大学進学後にカヌーを始め、3年時で日本代表に選出。アテネ、北京、ロンドンオリンピックを3大会連続出場し、2009年ワールドカップ500mシングルでは金メダル。2010年世界選手権200mシングル銅メダル、同年のアジア競技大会200mシングル金メダル、500mペア銀メダル、500mシングル銅メダルなど、世界の第一線で活躍をした北本忍さんだ。全国高校カヌー部の現役部員や顧問の教員など約50名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

継続すること、助言を聞くことは成功へのチャンス

「短い時間ですが、気軽に意見交換をしたり、お互いが何かを得られる良い時間にしたい」と北本さんが挨拶し、オンラインエール授業はスタートする。

まず、マネージャーを務めている生徒から話を聞くと北本さんは「(マネージャーは)一番尊敬していて、献身的に選手が気持ち良く練習に集中できるように考えてくれていて、分析で助けてくれたりなど、マネージャーの力なしでは勝つことが出来なかった」と支えてくれる人の力の有難さを口にした。

次に話題は北本さんの高校時代の話となる。高校を卒業するまでの10年間は、大好きだったバレーボールを続けていたと言う。「大学でも、やる気満々だったが、推薦の選手がたくさん入ってきて、一般入試の私には敷居の高さを感じてしまい、他のスポーツに挑戦しようと思ったところ、クラスの友だちに誘われカヌー部に気軽に入部した」と意外な事実を告白した。「先輩には日本代表の選手がたくさんいて、手取り足取りと教えてくれたことで、1秒も乗れなかったカヌーに乗れるようになると、どんどん楽しくなった」(北本さん)。そして転機は大学2年生のオフシーズンに訪れた。「コ-チから『1日も休まず練習したら代表になれる』と言われ、1日も休まずにやってみたことで結果を出した。続けてやること、コーチや先輩からのアドバイス、提案は成功のチャンスだと思うようにしている」と継続することが力となり、周りの助言を聞き入れることで可能性が広がることを説いた。

熱心に聞き入る高校生から技術的な質問も多く聞かれた。入部してまだ間もない生徒から「流れが強い時に船を止める方法について?」という相談には、「それを習得するには、まだ時間がかかるが高い意識でやっていることはとても良いと思う。筋トレで力を付けたり、体重移動の経験も増えれば出来るようになる。焦らずに続けて練習を頑張って欲しい」とアドバイスを送った。また「指導してくれる先輩がいない」ことに関しては「先生の言うことをしっかり聞くことや好きな選手の真似をしたり、動画を検索する。他校の選手と友だちになって情報交換をすること」と行き悩むのではなく、選択肢があることを伝えた。

魅力と情熱があれば人を動かすことは可能

後半はメンタルや将来への質問も含めた内容となった。「キツい練習の時や心が折れかけた時は、どうやって乗り越えていますか?」という質問に対しては「私は完全な準備をしてスタートラインに立ちたいので、諦めたり手を抜いた時は、もの凄く後悔をする」と話すと「もう少し頑張ろうという気持ちが続けば乗り越えられるようになる」と続けた。そして自身の経験を元に具体的な例を挙げて「感覚だけでは分からないことも多いので、スピードメーターなどの機器を使い、目に見える数字を頼りにし、今の限界を乗り越えたかを確認することも大切。感覚と数字がピッタリと合った時に確信を持つことが出来る」と答えた。

続いて「地元でカヌーをしている人が少なく、高校も廃部が決まっている。どうしたら興味を持つ人が増えるのか?」という切実な問題に対し、北本さんは「まだまだメジャーと言えない競技なので普及は難しいと思う」と言葉を選ぶと、大学時代のエピソードを次のように言った。「私が大学1年生の時、カヌー部員は2人。カヌー部に入部した子がクラス中に『楽しいよ』と声をかけ、その魅力を話していて、その子のあだ名が『カヌー』になっていた(笑)。お陰で私の学年は20名以上が入部していた。その子は情熱に溢れていたし、カヌーが大好きで魅力を伝えていた。魅力と情熱があれば人を動かすことは可能で、楽しさを広めたいという情熱を考えて挑戦して欲しいと思う」。

北本忍さんが語る“明日へのエール”

最後に“明日へのエール”を求められた北本さんは「練習が出来ず、大会もなくなり落ち込んだと思うが、少し考え方を変え、この間に仲間との絆が深まったことや対話の時間が増えたことなど、後から実感できることがこれからあると思う。自分作りが将来に現れると思うので、希望をもって毎日を進んで欲しい。お互いにそれぞれの場所で頑張れたら」と、コロナに夏を奪われた高校生に熱いエールを送るとカヌーのパドルを構えたポーズを取り記念撮影をし、オンラインエール授業は終了した。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。