先月28日からメキシコ・モンテレイで行われた「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」は、日本が初代王者となって幕を閉じた。侍ジャパンU-23代表の選手はそれぞれに持ち味を発揮し、優勝に大きく貢献したが、その中でも世界に通じる“快足”で魅…

先月28日からメキシコ・モンテレイで行われた「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」は、日本が初代王者となって幕を閉じた。侍ジャパンU-23代表の選手はそれぞれに持ち味を発揮し、優勝に大きく貢献したが、その中でも世界に通じる“快足”で魅せたのが、阪神の植田海内野手だった。

■7回中6回成功、第3戦では3盗塁をマーク、世界大会のタイトルは「大きい自信に」

 先月28日からメキシコ・モンテレイで行われた「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」は、日本が初代王者となって幕を閉じた。侍ジャパンU-23代表の選手はそれぞれに持ち味を発揮し、優勝に大きく貢献したが、その中でも世界に通じる“快足”で魅せたのが、阪神の植田海内野手だった。

 ファーストラウンド初戦から決勝戦まで、全9試合で「2番・遊撃」を任された。同じポジションでは、楽天から吉持亮汰がメンバー入りしていたが、指揮を執った斎藤雅樹監督は植田を起用。今季から始めた両打ちという使い勝手の良さもあったが、ウエスタン・リーグで盗塁死ゼロの12盗塁を決めた足が魅力だった。

 指揮官の期待に応えるかのように、第2戦チャイニーズ・タイペイ戦で初盗塁を決めると、第3戦アルゼンチン戦では1試合3盗塁をマーク。結局、全9試合で7度盗塁を試みて6度成功させ、見事盗塁王に輝いた。

 機動力を基本線にした「つなぐ野球」を目指す“斎藤ジャパン”の攻撃をつないだ俊足に、植田自身は「(対戦投手のモーションが大きい)ファーストラウンドで結構稼いだ部分もあるんで」と照れ笑い。だが、自慢の足が世界でも通用する手応えを得たことは大きい。「こういうもの(盗塁王)を取れたことは大きい自信になる。来年この経験を生かして頑張りたいと思います」と、3年目のシーズンの奮起を誓った。

 同じく長所でもある守備では、少しつまづいた。第2戦から3戦連続で舞台となったサルティージョの球場は、内野の芝がまばらで、土の部分には表面に石が飛び出しているなど、グラウンド状態は決して良くなかった。ノックの打球もイレギュラーすることがしばしば。そんな中、植田はファインプレーを次々披露した一方、第3戦でまさかの3失策を記録。「守備はそんなによくなかったです」と声を落としたが、第4戦以降は無失策。「いつもと変わらず、試合中には1歩目の速さを意識している」という言葉どおり、三遊間を抜けそうな際どい打球に何度も飛びつき、アウトにした。

■出塁率.432&6犠打をマーク、出塁して送って“2番”を全う

 もう1つ、このW杯でつかんだ大きな収穫がある。それが「2番」の役割を全うしたことだ。30打数9安打で打率3割をマークしたが、これに加えて7四死球で出塁し、6犠打も記録。出塁率は.432に上り、レギュラー陣としてはベストナイン受賞の武田健吾(オリックス)、MVPとベストナインをW受賞した真砂勇介(ソフトバンク)に次ぐ高さを誇った。

 今季ウエスタン・リーグでは、打率.168、出塁率.268と、打撃成績はいまいち奮わなかった。だが、侍ジャパンU-23代表の2番として、出塁し、進塁し、あるいは送ってチャンスを広げるという仕事をし、勝利を呼び込めたことで自信を深めた。

「2番でずっと出させてもらって、バントでつないだり、自分で出塁してチャンスを作ったり。そういうことが、ようやくちょっとできた。この役割をチームに戻ってもやっていきたいです」

 侍ジャパンのユニフォームに身を包み、決して恵まれたプレー環境ではない舞台で、世界を相手に積み上げた経験は、来季以降に植田が一回りも二回りも大きく成長するための貴重な財産になったはずだ。