南野拓実がリバプールで初ゴールを決めた。しかもゴールは、8月29日に行なわれたアーセナル対リバプールのコミュニティー・…
南野拓実がリバプールで初ゴールを決めた。しかもゴールは、8月29日に行なわれたアーセナル対リバプールのコミュニティー・シールドでの貴重な同点弾。チームは1−1の末にPK戦で敗れたが(スコアは4−5)、南野にとって大きなステップとなる意義深いゴールになった。

アーセナル相手に貴重な同点弾を決めた南野拓実
この試合のポイントはふたつあったように思う。ひとつは、南野投入時から導入した4−2−3−1が試合の流れを変えたこと。
キックオフ時は従来どおりの4−3−3でスタートしたが、前半早々に先制点を奪ったアーセナルに深い位置で守備を固められると、リバプールの攻撃は手詰まりになった。そこでユルゲン・クロップ監督は、後半14分の早い時間帯にフォーメーションを4−2−3−1へ変更。南野を左MFに入れると、CFにモハメド・サラー、トップ下にロベルト・フィルミーノ、右MFにサディオ・マネを配置した。
攻撃時にはフィルミーノがCFの位置に加わって4−2−4に変形し、前線を厚くしてアーセナル陣内に押し込んだ。ここで違いを生み出したのが南野だった。
左サイドだけにとどまらず、頻繁に中央部に侵入。相手DFとMFの「ライン間」に入って味方のパスを引き出し、チャンスと見ればDFラインの裏に抜ける動きを見せた。そして、スペースがあれば積極的に滑り込み、得意の鋭いターンで突破を図る。
おかげで、リバプールの攻撃に確かなリズムが生まれた。守備を固めるアーセナルには、非常に嫌な存在だったことだろう。
こうした南野の動き出しに合わせて、周囲の選手も日本代表にパスを入れた。チームメイトの信頼が高まっている証拠で、味方選手からも「南野を使おう」という意識が見えた。クロップ監督の言葉を使えば、「タキのパフォーマンスから言うと、今日のゴールは自然な流れだった」ということだ。
リバプールとしても、4−2−3−1の「プランB」が機能したのは大きい。基本フォーメーションの4−3−3は、とくに昨シーズン終盤がそうだったように、対戦相手の分析が進んで苦戦する試合が増えている。それだけに、今季はオプションとして4−2−3−1を採用する試合が増えそうだ。
そのなかに、南野がいた。マーカーの寄せがキツく、敵を背負いながらプレーするCFよりも、一列後ろのサイドMFやトップ下から最前線に飛び出していくほうが、南野の持ち味は生きやすいだろう。今後も、ライン間でのプレーや鋭いターンで違いを作っていきたい。
実際、英紙ガーディアンは「南野が投入されると、すぐに輝いた。南野は左サイドや10番の位置を動き回りながらプレーした。相手が深い位置で守備を敷いてくると、リバプールは南野が見せたような怖さが足りなくなる。南野は、リバプールに新たな一面をもたらした」と高く評価した。
リバプール、そして南野にとっても、4−2−3−1が効力を発揮したのは大きいだろう。
もうひとつのポイントは、南野がプレミアリーグ特有のプレースピードにアジャストしたうえで、アグレッシブなプレーを見せたこと。
投入時は0−1で相手がリード。アーセナルは自陣深くで守備を固めていたが、南野は密集地帯からでもグイグイと仕掛け、積極的な攻めの姿勢で強引にゴールをこじ開けた。
フィルミーノとサラーとの連係で崩し切ったゴールもそうだったが、そのほかの場面でも南野の積極的な仕掛けが光った。
左SBのアンドリュー・ロバートソンとのワンツーで突破した後、さらにもう一度フィルミーノとワンツー突破を図ったシーンはそのひとつ。スペースのない狭いエリアでも「前へ、前へ」と仕掛ける意識が見え、ワンツーからリターンパスをもらうことで、味方が南野を信頼している様子も伝わってきた。
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試合後、英紙デイリー・ミラーは「クロップ監督にとって、南野のパフォーマンスは大きな収穫だった。新シーズン開幕時で、すぐに先発メンバーに抜擢されることはないと思うが、クロップ監督の構想のなかで大きく成長し、非常に重要な役割を担っていくだろう」と評した。
また、テレビ番組に出演した元イングランド代表FWのピーター・クラウチは「僕はずっと南野のファン。昨シーズンはあまり出場機会がなかったが、ゴールに近いところにはいた。今日はボールを持った時の動きがシャープだった」と称賛。
同じく元イングランド代表DFのマーティン・キーオンも「ファインゴールだ。この得点は、南野に大きな自信を与える。加入以来、唯一足りなかったのがゴールだったからだ」と褒めていた。
新シーズンの前哨戦となるコミュニティー・シールドを消化したにすぎず、大事なのはこれから。だが、勝負の年となる在籍2年目を最高の形でスタートしたのは間違いないだろう。