本来なら、もっと騒がれてもいいと思うーーのが、長友佑都のマルセイユ移籍だ。彼のプレーや入団会見の写真がないせいか、スポーツ紙の扱いも予想外に小さかった。しかしマルセイユである。

現在は酒井宏樹も所属していて、長友は左SBのバックアッパーだろうが、両SBを日本人が務めるのは快挙と言っていいだろう。

改めて紹介するまでもないが、マルセイユはリーグ・アンで優勝9回を誇る名門だ。ここ10シーズンほどは優勝から遠ざかっているものの、昨シーズンは2位となり、9シーズンぶりにCLの出場権を獲得した。

そしてマルセイユとCLと言えば、思い出すのが1993年の決勝である。それまでトーナメントによるチャンピオンズカップから、リーグ戦が導入されチャンピオンズリーグに名称が変更された初の大会で、マルセイユはバジール・ボリ(後に浦和でもプレー)の決勝点でACミランを破ってフランス勢としてCL初優勝を果たした。

1986年に会長に就任したベルナール・タピは豊富な資金力でチームを強化し、アラン・ジレス、パパン、フランチェスコリらを擁し、1989年からリーグ4連覇を達成するなど絶頂期にあった。そして1993年にパパン、デシャン、ボリ、デサイー、GKバルテズらフランス代表を軸にヨーロッパの頂点に立った。

しかしシーズン終了後、リーグでの八百長が発覚して1993年のリーグ優勝は取り消され(5連覇は幻に)、CLのタイトルも剥奪こそ免れたものの、同年12月12日のトヨタカップへの出場資格は失ったのだった。

この1993年のトヨタカップは、Jリーグが開幕したことも相まって、旧国立競技場は立錐の余地がないほど超満員だった。カード的にも、ヨーロッパは過去2度の優勝を誇るACミラン。対する南米勢は前年にクライフ率いるバルセロナを破ったブラジルの名門サンパウロ。南米は、ウルグアイ、アルゼンチン、コロンビア勢の出場も悪くはないが、やはりブラジル勢となると話は別格だ。

試合は3-2でサンパウロが競り勝ったが、ミランの黄金時代を築いたフリットはサンプドリアへ、ライカールトはアヤックスへ去り(ファン・バステンはリハビリ中)、マッサーロとパパンがゴールを決めたものの、かつての華やかさはなかった(ミランは翌94年も出場したが、アルゼンチンのベレス・サルスフィエルドに0-2の敗戦)。

一方サンパウロはというと、ベテランのトニーニョ・セレーゾがレオナルドのアシストから2点目を決めるなどMVPに輝いた。レオナルドは後に鹿島に移籍して世界トップクラスの実力を披露する。一方のセレーゾは2000年に鹿島の監督に就任し、いきなり3冠(リーグ、リーグカップ、天皇杯)を達成するなど数々のタイトルを鹿島にもたらした。

話が横道にそれてしまったのでマルセイユに戻そう。八百長の発覚に続き会長の脱税が判明するなどスキャンダルまみれのマルセイユは、主力選手が離脱しただけでなく1994年には2部降格のペナルティーも受けた。

1部に復帰後はフィリップ・トルシエの監督就任で中田浩二が移籍したこともあったが、近年は深刻な財政難からついに2016年、アメリカの実業家にクラブを売却。これも時代の流れだろうが、そのおかげで経営も安定したようだ。

新シーズンは久しぶりにCLに復帰するマルセイユ。長友のコンディション次第だろうが、CLのグループリーグで左サイドを疾走する彼の勇姿を見たいと思っているのは筆者だけではないだろう。