山本昌が読者の質問に答える! 前編 50歳まで現役を続け"球界のレジェンド"として活躍された山本昌氏。今回、「山本昌氏に…

山本昌が読者の質問に答える! 前編

 50歳まで現役を続け"球界のレジェンド"として活躍された山本昌氏。今回、「山本昌氏に聞きたいことは?」とスポルティーバのツイッターで募ったところ、多くの質問が寄せられた。対峙した強打者の印象やドラゴンズ復活の条件など、数々の質問に答えていただいた。



山本昌氏の現役時代、よく打たれた選手として名前が挙がった内川聖一

── まずは、東京の「タマネギ」さんからの質問です。現役時代、対戦したくなかった打者を5人挙げてください。また、対戦してみたかった打者も教えてください。

山本昌 そうですね。5人を挙げるとすると、内川聖一、青木宣親、土橋勝征、清原和博、古田敦也になります。

── 最初に名前が挙がった内川選手は、2008年に右打者として史上最高打率(.378)で首位打者にもなったバッターです。

山本昌 とにかく技術的な水準が高くて、どんなコースにでもヒットにできるバッターです。しかも、意図的にトップスピンをかけるから、ゴロでも打球が速くて、打ちとったという当たりもヒットになってしまう。よくハマスタ(横浜スタジアム)で打たれた記憶が残っています。個人的には、歴代の右打者でも技術的にはトップクラスだと思います。

── 2番目に挙げられた青木選手は、どのあたりに対戦の難しさがありましたか。

山本昌 青木(宣親)も内川と同じく高度な技術を持った打者で、左バッターなのによくやられました。青木もトップスピンをかけるのですが、さらにアッパースイングとダウンスイングを使い分ける。打ちとるのが大変で、ピッチャーにとってはほんと厄介な選手です。

── 内川選手、青木選手は球界屈指のヒットメーカーとして数々の記録を残していますが、3番目に挙げた土橋さんは少し意外でした。

山本昌 僕をはじめ今中(慎二)など、とにかく中日の左腕がよく打たれました。前日の試合でスタメンを外れていても、左投手が先発の時は必ず出てきて、いい仕事をする。また野村(克也)監督が絶妙なところに土橋を置くんですよ(笑)。一発の怖さはないのですが、空振りしないし、粘り強い。いやらしい打者でしたね。

── 清原さんに関しては、やはり一発の怖さがあったということでしょうか。

山本昌 そうですね。清原は逆方向に大きい当たりを打てるバッターで、アウトローの変化球をすくわれてライトスタンドに放り込まれたことがありました。ただ、清原は好不調の波が激しい打者で、悪い時はそれほど怖くないんです。でも、調子がいい時は手がつけられない。どのコース、どの球種にも対応してきますから。それに清原が打つと球場が盛り上がって、チームに勢いがつく。なので、細心の注意を払いながら投げていました。

── 古田さんは球史に残る名捕手です。当然、駆け引きとかあったのでしょうか。

山本昌 古田は同じ歳で今でも仲がいいのですが、現役時代は打たれた記憶が強いですね。通算成績でも3割後半と打ち込まれていると思います。やはり、配球を読むのがうまかった打者でしたね。

── 印象に残っている対戦はありますか。

山本昌 どの対戦というのはないのですが、神宮球場での試合は、普段よりも長いバットを持って打席に入っていたんです。アウトコースのスクリュー対策として。当時の神宮は今よりも狭かったですし、その球を拾われてスタンドインというもの何回かありました。古田が打席に入ると、何を狙っているのかなと、必要以上に考えてしまうというのがありましたね。シーズン中、何度も食事に行きましたが、今にして思えば手の内を探られていたのかもしれないですね(笑)。

── 対戦してみたかったバッターは誰ですか。

山本昌 32年間現役を続けていたので、ほとんどの打者は対戦しているんですよね(笑)。イチローや松井(秀喜)とも対戦していますし......。やっぱり、王(貞治)さん、長嶋(茂雄)さんには一度でいいので投げてみたかったですね。野球人として憧れはあります。

── 現役の選手だと誰になりますか。

山本昌 ヤクルトの村上(宗隆)ですね。彼のスイングは本当にすばらしい。マウンドに立って、彼がどれだけすごいバッターなのか確認してみたいですね。間違いなく球界を代表するバッターになるでしょうし、ホームランだけでなく、打率も残すバッターになると思います。

── 続いて、千葉県「ジャック」さんの質問です。現役時代、負けたくなかった選手はいましたか。また、その理由を教えてくださいとのことです。

山本昌 高卒の同期入団の選手には「絶対に負けたくない」と思っていました。僕らの代はすごく豊作で、甲子園のヒーローだった水野雄仁を筆頭に、野中徹博、渡辺久信、加藤伸一らがドラフト1位で、2位以下にも池山隆寛、吉井理人、星野伸之たちがいました。僕はドラフト5位で中日に入ったのですが、初勝利を挙げたのがプロ5年目。渡辺久信なんて、僕が一軍に定着する頃にはすでに50勝くらい挙げていましたからね。

── 同級生の方とは今でも交流はありますか。

山本昌 昭和40年会という集まりがあって、今でも仲良く集まります。最初は近況報告などの話をするんですが、酒が入るとやっぱり野球の話題になるんです(笑)。同級生の活躍は刺激になりましたし、彼らに負けたくないということがモチベーションにもなりました。

── そのなかで負けたくなかった選手をひとり挙げるとすると、誰になりますか。

山本昌 池山ですね。彼とは対戦する機会も多かったですし、よく打たれた記憶があります。僕が一軍で投げ始めた頃、彼はバリバリの主力だったので、こっちも意識しました。池山は「なんでそのコースを打てるの」といった感じで、意外性を持っていました。一発の怖さがあるし、とにかくフルスイングしてくる。やっていて楽しかったですね。

── 続いて、愛知県の「ゴメスさん」の質問です。近年、中日は7年連続Bクラスと低迷していますが、復活のために必要なことは何でしょうか? 

山本昌 たしかに結果は出ていませんが、そこまで悲観することはないと思います。戦力的にはBクラスにいるチームではありません。とくに先発は以前に比べて駒が揃ってきました。欲をいえば、あと1、2枚、年間でローテーションを回せる投手がいれば、編成的にもっと楽になるはずです。

── 打線のほうはどうですか。

山本昌 シーズン序盤はケガや本調子ではない選手が多かったですが、今後は上がってくると見ています。高橋周平を筆頭に力のある選手が揃っていますから、しっかり打線を組むことができれば、さらに得点力も上がってくると思っています。また、根尾(昂)や石川(昂弥)といった若手も育ってきている。楽しみな若手が本当に多いチームになりました。そういった意味でも、ドラゴンズの未来は明るいです。

── 現在のチームの課題を挙げるとすれば、どのようなところでしょうか。

山本昌 野球を知っている選手がもう少し出てきてほしいなと思っています。強かった時のドラゴンズは野球を深く理解している選手が多く、自分が何をすべきなのかわかっていた。今シーズンのドラゴンズを見て思うのは、たとえば無死一、二塁の場面で送りバントの失敗やゲッツーで点が入らないというケースが目立ちます。そういったところでしっかり進塁打を打てる選手がほしい。あとはもっと足を絡めた野球ができれば、もう少し攻撃の幅が広がると思います。相手チームが嫌がる攻めをもっと意識的にやってほしいですね。

(後編につづく>>)