今年はコロナ禍のため、調整日数・実戦機会が少なく混迷を極めた高校野球界。それでも夏の地方独自大会などで、驚きのニューフ…
今年はコロナ禍のため、調整日数・実戦機会が少なく混迷を極めた高校野球界。それでも夏の地方独自大会などで、驚きのニューフェイスが続々と出現している。
夏の甲子園が中止になったこともあり、3年生中心のチーム編成を組むチームが多いなかでも、今夏は2年生投手の大物台頭が目立った。
2020年甲子園交流試合で大きな成長を見せたのは、達孝太(天理)だった。身長193センチ、体重83キロの大型右腕は、わずか1イニングの登板ながら2者連続三振を奪い、鮮烈な投球を見せた。

甲子園交流試合で好投した天理の2年生・達孝太
1年生だった昨秋は近畿大会決勝の大阪桐蔭戦で先発抜擢され、終盤につかまったものの、7回まで3安打1失点と試合を作り優勝に貢献した。明治神宮大会でも中京大中京戦で先発登板して好投したが、球速は常時130キロ前後にとどまっていた。
それでも、資質の高さは当時から示していた。長身でも身のこなしにぎこちなさがなく、鋭敏な指先感覚で変化球も器用に扱った。試合後、達はこう語っている。
「体重を増やして、下半身で投げるピッチャーになりたい」
その言葉どおり、当時から3キロ増やして臨んだ甲子園では、球速は常時140キロを超えた。昨秋の明治神宮大会と比べると明らかにボールの力感は増し、平均球速は10キロ近く上がっている。
末恐ろしいのは、まだまだ成長の余地を感じさせることだ。達は3月27日生まれで、4月上旬生まれの同級生と比べて約1年も遅く生まれている。成長上のハンデにも思えるが、幼少期から体が大きく、「早生まれをコンプレックスに感じたことはありません」と本人は語る。
中学時代から爪の保護のためにネイルサロンに通うなど、野球への意識も高い。あと1年間の高校生活でどこまで伸びるか。そして、将来はどんな大投手になるのか、期待はふくらむ。
同じく甲子園交流試合で目立ったのは、名門・大阪桐蔭の2年生左腕である松浦慶斗だ。父は日本製紙石巻の元監督である松浦吉仁氏。宮城・石巻で生まれ、北海道・旭川で育った大器は、高校からエリートが集う大阪桐蔭に入学した。
身長186センチ、体重80キロの均整の取れた体型に、柔らかさと強さの共存した腕の振り。今夏の大阪独自大会では履正社戦でリリーフ登板し、その日4安打を放った小深田大地からストレートで三振を奪うなど、3回無失点と気を吐いた。なお、スカウトのスピードガンでは150キロを計測したという。
甲子園でも東海大相模との注目の一戦で8回からリリーフ登板し、2イニング打者6人をパーフェクトに抑えて勝利に導いている。
大阪桐蔭には、関戸康介(大阪桐蔭)という2年生の本格派右腕も控える。小学6年時にはソフトバンクジュニアに選出されて最速129キロをマークし、「スーパー小学生」と話題になった。明徳義塾中ではエースとして全日本少年軟式野球大会準優勝。大阪桐蔭でも順調にスケールアップを果たし、今夏には150キロに到達した。一部スカウトのスピードガンでは154キロを計測したという。
松浦、関戸を中心とした大阪桐蔭投手陣は、今年も全国屈指の陣容になりそうだ。
関戸と同様、中学時代に軟式野球をプレーした投手にも逸材が多い。中学時代は高知県で関戸以上に注目された森木大智(高知)は、中学軟式で前人未到の150キロを計測。高知中のエースとして、春の全日本少年軟式野球大会、夏の全国中学校軟式野球大会と全国大会を春夏連覇している。
高知高では1年時に軽度の右ヒジ痛を発症し、今夏は「オール3年生」で臨んだチーム事情から目立った活躍は見せられていない。それでも、中学時代から指導する恩師の濱口佳久監督のもと、一つひとつ課題をクリアしている。センセーショナルな投球を見せてくれる日もそう遠くはないだろう。
中学時代から森木と互いにライバル視し合い、現在も交流を続けているのが仙台育英の笹倉世凪(せな)、伊藤樹の左右二枚看板である。ふたりは仙台育英の系列校である秀光中等教育学校で夏の全中決勝まで勝ち進み、森木に投げ負けている。
ともに1年夏から甲子園を経験し、左腕の笹倉は最速149キロ、右腕の伊藤は最速147キロと球速を伸ばしている。3年生に向坂優太郎という好左腕がいたためエースには届かなかったが、大事な試合を任されるであろう今秋以降に真価が問われる。
また、中学軟式出身で華々しい実績は挙げていないものの、底知れないポテンシャルを見せていたのが高須大雅(静岡)だ。磐田東中では身長183センチだった身長は現在190センチまで伸び、マウンドでの立ち姿からして雰囲気がある。中学時代にはタテに大きく曲がるカーブを武器にしていた。高校でも順調にステップを踏んでおり、楽しみな存在だ。
今夏の独自大会で爆発的なパフォーマンスを見せた風間球打(ノースアジア大明桜)、小園健太(市和歌山)は早くも「ドラフト1位クラス」というスカウトの声も聞こえてくる。
風間はプロ志望届を提出した佐々木湧生ら、最速140キロ超の3年生3投手を差し置いて素材はチームナンバーワンと評判だった。秋田独自大会では破壊力満点の腕の叩きから最速150キロを計測し、タテに鋭く落ちるスライダーでも奪三振を量産した。名投手コーチとして知られた尾花高夫総監督の指導を受け、その才能に磨きをかけている。
小園も1年時から評判だった能力が冬を越して凄みを増してきた。夏までに最速152キロに到達して、速球の軌道から小さく変化するカットボールも高い精度で操る。和歌山独自大会では、智辯和歌山戦で好リリーフを見せた。今秋以降にエースとして順調に実績を積み上げていけば、来年のドラフト1位候補に浮上する可能性は高いだろう。
前述の通り、今夏は3年生中心にチームを編成するチームが多かったため、下級生の逸材が潜伏しているケースは多い。現段階では他にも金井慎之介(横浜)、鴨打瑛二(創成館)といった好左腕の評判を耳にする。
コロナ禍によって来年の選抜高校野球大会などビッグイベントが開催できるのか、先行きの見えない時期が続く。それでも、新たな有望選手の台頭は未来への希望になる。これからも心躍る大器の出現を心待ちにしたい。