ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(HC)のもと欧州遠征中のラグビー日本代表は、11月14日、東恩納寛太の追加招集を発表した。

 東恩納は今季、国内最高峰トップリーグ(TL)でキヤノンの左PRのレギュラー格として活躍。ギデオン・レンシングFWコーチの指導のもと、HOの庭井祐輔主将、すでにジャパンとして渡欧中の右PR山路泰生らと強力なパックを形成。かねて「スクラムの細かい技術で、自分の強みを出す」と息巻いていた。

 沖縄の名護高から帝京大入りし、最終学年時は大学選手権6連覇と日本選手権でのTL勢撃破を実現(2015年2月8日/東京・秩父宮ラグビー場/対NEC/〇31―25)。身長178センチ、体重114キロとトップレベルにあっては並のサイズながら、スクラムでの強固な姿勢が買われてきた。PRなら左右両方ともこなせる。

 学生時代は最後まで、1学年下の深村亮太(今季から東芝)と右PRの座を争ってきた。常時先発とはいかなかったが、キヤノンの瓜生靖治スカウトは我先にと東恩納にラブコールを送った。練習中や普段のしぐさから、生真面目な気質を嗅ぎ取ったからだ。

 今季のキヤノンの強みは、レンシングFWコーチが指導するスクラムだ。

 それは開幕9連勝中のヤマハをも苦しめた。9月2日、東京・町田市立陸上競技場での第2節。序盤のスクラムこそヤマハが制圧も、中盤以降はキヤノンが形勢逆転した。試合は16-35と敗れたが、日本代表のスポットコーチでもあるヤマハの長谷川慎FWコーチはやや舌を巻いたか。

 そして東恩納は、ルーキーイヤーだった昨季の開幕節の時点で今季の状態を予感させていた。

 2015年11月15日、兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場。背番号1をつけて先発した東恩納は、結局4強入りした神戸製鋼に18-23と屈した直後にこう語っている(このシーズン、キヤノンは6位)。

「最初の公式戦ということで少し緊張して入ったんですけど、ファーストスクラムをいい形で組めて、それがほぐれた。キヤノンとしましては、春からスクラムを積み上げてきた。今年から新しいコーチが来ていて、やって来たことが結果として実ったのではないかと思います」

 この午後はすべてのスクラムを圧倒できたわけではないが、「いい形で組めればいいんですけど、気を抜いてしまうと相手に入り込まれる部分があった。常にいいスクラムを組むことを意識してやっていかないといけない、という感覚でした」と課題を明確にしていた。

 今春は、若手中心の日本代表に参加。アジアラグビーチャンピオンシップで3つのテストマッチ(国際間の真剣勝負)を経験した。この時の中竹竜二HCには、発言力の向上を褒められた。

 中竹HCが率いた2012年度の20歳以下(U20)日本代表時代に比べ、ミーティングで考えを述べさせた際の答えに張りがあったのだという。当の本人は言った。

「U20の時は下級生で未熟な部分もあったのですが、帝京大の3、4年でしっかりいろんなことを勉強して、いまに至っている。帝京大では上級生が率先していろいろなことをする文化があって、上級生とは何かについて考える時間が増えた。周りに目配り、気配りができるようになって、それが自分を変えたんだと思います」

 ジョセフHC率いる日本代表では、左PRの人員が削がれている。稲垣啓太は候補合宿中、三上正貴は遠征中にと、昨秋のワールドカップイングランド大会出場者が相次ぎ離脱しているのだ。
 
 そんななかチームは19日に敵地カーディフ・プリンシパリティスタジアム(ミレニアムスタジアム)でウェールズ代表と、26日にはフランスのヴァンヌにあるスタッド・ドゥ・ラ・ラビーヌでフィジー代表と激突。ヤマハの仲谷聖史、山本幸輝に続いてこの秋5人目の背番号「1」候補となる東恩納は、出番を得られるだろうか。 
(文:向 風見也)