たった1つのミスが失点に直結するゴールキーパー(GK)というポジション。当然ながらGKがゴールを決めることはほとんどなく…

たった1つのミスが失点に直結するゴールキーパー(GK)というポジション。当然ながらGKがゴールを決めることはほとんどなく、ストライカーやドリブラーに比べて目立ちにくい部分もある。

しかし、裏を返せばセーブひとつでチームを救うこともできる、勝敗のカギを握るポジションとも言える。今回の企画『Unbelievable Saves』(信じられないセーブ)では、各クラブの守護神たちが見せた驚きのセーブを紹介していく。

今回は、ロストフのロシア人GKデニス・ポポフが見せた異例のセーブショーだ。

ロストフのユースチームに所属するポポフは、トップチーム昇格を目指し日々研鑽していたが、2020年6月19日に行われた、ロシア・プレミアリーグ第23節、ソチ戦で思わぬ形でトップチームデビューを果たすことになった。

世界中で猛威を振るっている新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で3月中旬から中断していたロシア・プレミアリーグ。その再開初戦となったこの試合だったが、直前にトップチームの6選手にコロナウイルス陽性判定が出てしまう。

これにより、トップチームの選手、コーチングスタッフら全員が濃厚接触者として2週間の隔離措置を取ることになり、今回の一戦を平均年齢17歳のユースチームで戦うことになった。

ほとんどの選手にとってプロデビュー戦となったこの試合では、シニアチームが出場しているソチの一方的な試合になったが、ポポフが獅子奮迅のプレーを見せる。

まずは2-1とリードされて迎えた23分、ボックス左近距離からのFWアンドリー・モストヴォイのシュートを好反応で弾きセーブ。さらに26分、PKを献上してしまうもFWアントン・ザボロトニーのキックを素晴らしい反応でセーブした。

さらに30分、ボックスの外からのMFニキータ・ブルミストロフの豪快なミドルシュートを横っ飛びでセーブすると、36分にはFWアレクサンドル・ココリンのゴール前でのオーバーヘッドシュートを足でセーブし、40分にもザボロトニーのボックス内からの強烈なシュートを弾き、セーブを記録した。

しかし、ハーフタイム前後でついに守備が崩れ、5-1とされて迎えた50分、再びボックス内でザボロトニーがヘディングからチャンスを作るも、ポポフがスーパーセーブを記録する。さらに7-1とされた55分には、サイド突破からボックスに侵入したDFエルミル・ナビウリンのニアポストへの強烈なシュートも好反応でセーブしている。

68分にはコーナーキックのこぼれ球を拾ったブルミストロフのボックスの外からのシュートをセーブすると、83分には再びブルミストロフの至近距離からのシュートもブロックしてみせた。

結局試合は10-1と歴史的な大敗となったものの、点差が開き続けてもベストを尽くし続けたポポフをはじめとするロストフユース選手はチーム内外から惜しみない賛辞を受けた。

またポポフは、この試合でPKストップを含むリーグ史上最多の15セーブを記録。10失点を喫したにもかかわらず、異例のマン・オブ・ザ・マッチに選出された。