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 2020-21シーズンの開幕に向けて、久保建英を擁するビジャレアルは、すでに2試合を戦っている。カルタヘナ(3-1で勝利)、テネリフェ(2-3で敗北)という2部のクラブとのテストマッチだ。シーズンに入るための調整試合だけに、勝敗そのものは重要ではない。

「こうした試合を重ねることで、チームは戦い方を見つけていく」

 指揮官であるウナイ・エメリも、そう明言している。

 しかし、すでに"兆し"のようなものは見える。昨シーズンはリーグ戦5位で、今季はヨーロッパリーグにも出場するビジャレアルは、新シーズンをどのように戦うのか。

 そして、久保に求められるものとは――。



テネリフェ戦は前半のみの出場だった久保建英(ビジャレアル)

 カルタヘナ戦、テネリフェ戦と、エメリ監督はオーソドックスな4-4-2を主に用いている。これは、選手の適性や能力を見極めるためだろう。選手を先発、控えと決めることなく、ミックスして起用している段階だ。

 バックラインは、GKセルヒオ・アセンホ、DFは右からルベン・ペーニャ、ラウール・アルビオル、パウ・トーレス、アルベルト・モレノで構成するのが、ひとつの基本型か。ただ、アルビオルは合流が遅れており、トーレスはオウンゴールなど失点に絡み、モレノは負傷。MFも、軸になるはずのダニエル・パレホのプレーが低調で、フィットするのに時間がかかるかもしれない。

 一方、攻撃のエースは、スペイン代表FWジェラール・モレノになりそうだ。

 ジェラール・モレノは、昨シーズンも18ゴールで、得点ランキングは3位。サラ賞(スペイン人得点王)を獲得している。カルタヘナ戦、テネリフェ戦では2トップの一角でプレーしながら、積極的にサイドへ流れ、タイミングよく中盤まで落ち、プレーメイクに参加している。どちらの試合でもアシストを記録するなど、万能のゴールゲッターだ。

 そして、2試合を通じて脚光を浴びているのは、久保と同じ19歳の2人のアタッカーである。どちらもビジャレアル下部組織育ち。昨シーズン限りでサンティ・カソルラのような古参選手が退団し、若い力が台頭しつつある。

 フェルナンド・ニーニョは、2試合連続でジェラール・モレノと組んでスタメン出場している。2019-20シーズンにトップデビュー。そのアラベス戦では交代出場でいきなり決勝点を入れてヒーローになった。父はマジョルカでスペイン国王杯優勝を飾るなどの活躍をしたディフェンダーだ。

 また、アレックス・バエナはテネリフェ戦で左サイドアタッカーとして先発出場し、精力的な動きを見せると、前半終了間際に見事な先制点を決めている。右からのクロスを確実にコントロールし、右足をひと振り。スペインU-20代表で、そのポテンシャルは高く評価されている。

 そして久保は、カルタヘナ戦は後半から、テネリフェ戦は前半から出場している。カルタヘナ戦は2トップの一角、テネリフェ戦は右サイドに入った。

 サイドで敵と対峙した時の存在感は、マジョルカ時代と同様に際立っている。カルタヘナ戦は終了間際、右サイドを鋭く駆け抜けてクロスを放つ。テネリフェ戦では、1対1からドリブルで持ち込むと、クロスがブロックされてCKに。そのキッカーを早速、任されていた。

 とは言え、見せ場は乏しかった。

「テネリフェ戦でのタケ(久保)は再びグレー(目立たない、地味)な出来だった。カルタヘナとのデビュー戦よりも悪かった」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』の戦評である。現時点で、現地メディアはチームについても久保についても静観といったところか。

 久保が右アタッカーとして起用されるとすると、ライバルはナイジェリア代表のサムエル・チュクウェゼになる。チュクウェゼは左利きのアタッカーで、爆発的なスプリント力を武器とする。ビジャレアルの下部組織育ちで、昨シーズンの主力だけに、アドバンテージはある。

 久保の最大の武器は、抜群の適応力にある。選手とプレーを重ねることで、その良さを理解し、引き出し、同時に自らの力も発揮できる。フィットしてくるのはこれからだ。

 昨シーズンのマジョルカでは、久保が持ち込み、パスを出してもリターンがないという場面がしばしばあった。しかしビジャレアルでは選手の質が高く、クオリティは確実に上がる。コンビネーションが確立した時、久保はさらに進化することになる。

「まずは、堅固な集団を作ることが先決だ」

 MFビセンテ・イボーラが説明しているように、今はあくまでチームを構築する段階である。今後、ビジャレアルは、1部のバレンシア、レバンテなどと濃密なプレシーズンマッチを戦う。