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「レオ(リオネル・メッシ)はまず、バルサとの契約があるからね。移籍についてはわからないよ」

 スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』のインタビューで、元バルサのデコはそう答えている。現役時代、デコはリオネル・メッシとチームメイトで、ともに栄光を勝ち取った。

「レオは勝つ意欲が非常に強い選手で、チームが競争力のある組織を作れるかどうか(が選択の分かれ目)だろう。(残留か移籍か)決断するのは難しい。なぜなら彼は3、4年、バルサにいただけの選手ではない。クラブの歴史に残る世界最高の選手で、家族ごとバルセロナという街と密接に結びついている。レオのいないバルサは、想像できない。ただ、今の状況だとあり得ることだ」

 デコの証言は、バルサとメッシの現状を象徴的に説明している。今まで、英雄メッシなしのバルサはあり得なかった。しかし、状況は切迫しているのだ。

 メッシにとって、「残るも地獄、去るも地獄」という事態になりつつある。



去就が注目されているリオネル・メッシ(バルセロナ)

 そもそも、メッシの移籍は現実的なのか。現時点での答えはノーだ。設定された移籍違約金は7億ユーロ(約840億円)。常軌を逸した金額である。

「メッシは新しいプロジェクトの中心」

 新たにバルサの監督に就任したロナルド・クーマンも明言しているだけに、たとえメッシ本人が移籍を希望しても、実現は難しい状況だ。

 ただし、不穏な事態であるのは間違いない。

「バルサでの将来が明確に見えない。今はクラブ内より、クラブの外から見ている感じだ。もちろん、契約上の問題があることは承知しているが......」

 クーマンとのミーティングで、メッシがそう伝えたことが報じられている。これほど重要なメッセージが、どうして外部に流れたのか。「メッシの移籍はない話ではない」という状況が明確化された形だ。

 メッシがクラブに対して不信感を抱いているのは間違いない。

 フロントはストライカーひとりも満足に補強できず、ここ数年で明らかにチームを弱体化させてきた。先日のチャンピオンズリーグ(CL)、バイエルン戦の2-8という大敗は衝撃的だった。さらに今季は、ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長の陣営が、PR会社に資金を流し、SNSでメッシ、ジェラール・ピケなどへのネガティブキャンペーンをしていた疑惑も生じた。

 クラブは、ピケ、セルヒオ・ブスケッツ、ジョルディ・アルバ、ルイス・スアレス、イヴァン・ラキティッチなど、30歳以上のベテランを"戦力外リスト"に載せている。この情報のリークは、長年クラブのために戦ってきた選手に対して礼を欠くものだった。スアレスが、「何かあるなら直接言うべき」と遺憾の意を表明したのも当然だ。

 クーマンは強権を求める指揮官で、容赦なく功労者も切り捨てる方向だろう。かつてのルイス・ファン・ハールのように、バルサのオランダ化を推進する可能性もある。オランダ代表として率いた経験を活かし、すでにドニー・ファン・デベーク(アヤックス)、メンフィス・デパイ(リヨン)、ジョルジニオ・ワイナルドゥム(リバプール)、マルテン・デローン(アタランタ)、ステファン・ベルフバイン(トッテナム)、ドニエル・マレン(PSV)などに接触したと言われる。

 33歳になるメッシにとっては、「外堀を埋められていく」という感覚だろう。残留したとしても、"終活"のような状態に追い込まれる可能性もある。それはバルサの屋台骨だった選手のプライドが許さない。

 となると、やはり移籍はひとつの選択肢として残る。

 巷で有力視されるのは、イングランド、プレミアリーグのマンチェスター・シティである。かつての師であるジョゼップ・グアルディオラが監督を務め、スタッフにも元バルサの関係者が少なくない。プレースタイルもかつてのバルサに近く、資金力も豊富。英国内では、「なんとしてもCL王者にという野心でチームとメッシは共通。メッシのゴーサインで本格交渉へ」などと報道されている。

 フランスのパリ・サンジェルマンも、メッシの友人であるネイマールを窓口に下交渉を始めたと言われる。キリアン・エムバペを含めた3トップは、たしかに夢がある。

 伏兵はイタリアのインテルだろう。中国人オーナーはセリエA史上最高(クリスティアーノ・ロナウド以上)の年俸を準備。すでに移籍金2億6000万ユーロ(約310億円)を提示したと言われ、金庫が枯渇し、補強もままならないバルサの気持ちをくすぐっている。

 ただ、メッシはやはりスペイン、イングランドなどトップリーグでの勝負を望むのではないか。

 断言できるのは、メッシがバルサに対し、強い愛情を持っている点だろう。完全移籍した場合、容易には戻れない。1シーズン待てば、来年の会長選では、盟友シャビ・エルナンデス監督を擁立するビクトール・フォント候補が勝つ公算は高い。

「メッシは売り物ではない」

 現時点で、それがバルサの公式なスタンスである。