右目の下が腫れていた。
 悔しいというより無念。早稲田実業のNO8丸尾崇真主将は、準優勝の賞状を手にロッカールームに戻る途中でそう言った。
 11月13日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた第96回全国高校ラグビー大会の東京都第1地区予選決勝で、34大会ぶりの花園切符を目指した同校は東京高校に12-33で敗れた。東京高校は昨年の決勝で國學院久我山に12-12と引き分けながら、抽選で全国の舞台を逃した悔しさを晴らした。
 2大会ぶり12回目の花園出場にSH春野日向主将は言った。
「自分たちの原点である、ディフェンスで前に出ることができた。ボールをタテに運んで、ゲームをテンポよく運べた。試合後、(バック)スタンドに走っていったら先輩たちがいました。去年のぶんまで勝てて良かった」
 
 試合直前、早実の大谷寛監督はピッチ横に並んでいた選手たちに、「最初の10分な」と言って15人を送り出した。その言葉に呼応するかのように、キックオフボールを追い、相手を激しく倒したのが丸尾主将だった。前半6分にはトライ。全員が何度もタックルをしたし、ブレイクダウンに頭を突っ込み、サポートに走った。
 しかし、背番号8のリーダーは「自分たちのやりたいことがひとつもできなかった」と言った。
「最初の10分はよかったけど、その後はペナルティーで自分たちのペースを崩してしまいました」
 スクラムで圧倒された。ブレイクダウンを重ねるうちに綻びが出た。東京高校の圧力に、少しずつ沈黙の時間が増えてしまった。

 先制点を奪ったものの、前半10分と16分のトライで5-14と逆転された早実にとって痛かったのは前半26分に許したトライだ。せっかく敵陣深くに攻め込み、トライラインに迫ったのに、密集でのボール扱いが乱れて転がったボールを相手にセービングで確保され、そこから切り返された(最後はWTB水野景介がトライ)。21-5で迎えた後半10分にもターンオーバーからSH春野日向にトライを決められ、勝負はほぼ決まった。

 やり合った60分を終えて「相手との差はあまり感じなかった」と体感を振り返る早実・丸尾主将。それだけに、花園出場という目標を達成できなかったことが無念だった。ブレイクダウンでの丁寧さと判断。エース的存在のCTB中西亮太郎がボールを持った瞬間に東京高校SO杉浦拓実が猛タックルを浴びせるなど、勝負どころの集中力も勝者が上回った。この経験を大学ラグビー部での日々につなげたい。
 ロッカールームに戻ったら、仲間に感謝の気持ちを伝えるつもりと言った。
「みんなには、ありがとうと伝えたいです。これまで怒ったり、キツいことも言ったりしたけど、みんな耐えてくれて、この日を迎えることができました。感謝です」
「あっという間」と表現した3年間は濃密だった。花園への道は途絶えたけれど、楕円球と熱く生きる日はこの先も続く。