第96回全国高校ラグビー大会の栃木県予選が11月12日に栃木市総合運動公園陸上競技場でおこなわれ、春の全国高校選抜大会でベスト8だった國學院栃木が佐野日大に76-0で快勝し、17年連続22回目の花園出場を決めた。攻めては合計12トライ、守…

 第96回全国高校ラグビー大会の栃木県予選が11月12日に栃木市総合運動公園陸上競技場でおこなわれ、春の全国高校選抜大会でベスト8だった國學院栃木が佐野日大に76-0で快勝し、17年連続22回目の花園出場を決めた。攻めては合計12トライ、守っては一度もインゴールを割らせない完勝劇だった。國學院栃木が出場する全国大会は、12月27日に東大阪市花園ラグビー場で開幕する。

 開始直後から國栃(國學院栃木)が躍動した。前半1分、ファーストスクラムからの2フェイズ目でWTB檜山成希がスコアラーになった。佐野日大も鋭いダブルタックルで応戦するが、トップスピードで走り込んでくる紺色ジャージィに断ち切られてしまう。國栃が11分までに3トライを追加し、開始11分で、スコアは早くも26-0となった。

 國栃は同カードだった昨年の決勝戦において、前半を5-7で折り返すなど、立ち上がりで苦戦した。そんな苦い経験を踏まえ、吉岡肇監督はこの日、ロッカールームでの声の掛け方を工夫した。
「選手に『(お互いの)顔を見ろ』と声を掛けた。『ちょっと硬いんじゃない』と言って、和んだ。そういう送り出し方が、今日はハマったのかなと。珍しいんですよ。試合5分前にロッカールームで笑いが出るというのは」
 同じ轍は踏まなかった。緊張のほぐれた國栃フィフティーンは、開始直後から実力を発揮した。

 連続4トライを奪われた佐野日大だったが、闘志溢れるキャプテン・FL佐藤龍悟が中心となって、その後攻勢に出た。國栃がキックでのエリア獲得に苦戦する間、しぶとく敵陣に居座って連続攻撃を重ねる。しかしラインアウトでのミスなどがあり、チャンスを活かしきれない。すると前半30分、國栃はインターセプトからWTB竹ノ内建太がトライ。33-0とリードして前半を折り返した。
 
 迎えた後半、紺のジャージィがさらに勢いを増す。ともに2年生のHO照内寿明、NO8福田陸人が突破役としてゲインラインを切ると、SH本堂杏虎がパスアウト。國學院栃木の浅野良太コーチが「ブレイクダウンでスムースにボールを出せたのが大きかった」と語る素早いアタックで、前半を上回る計7トライを挙げた。
 
 破れた佐野日大のFL佐藤主将は、涙をこらえ、殊勝に試合を振り返った。
「自分達のつくろうと思っていたラグビーが全然出来なくて、悔しいです」
 敗色濃厚だった後半終了間際であっても、インゴールで円陣を組むなど、チームを鼓舞し続けた。守りのキーマンでもあるスキッパーは、チャンスがあれば大学でもラグビーを続けるつもりでいる。

 佐野日大の指揮官、藤掛三男監督は、柔和な眼差しで教え子の敗戦を見つめた。
「入りの部分でしっかりとプレッシャーをかけて、うちが敵陣に行っている状態をつくるのがシナリオだったんですが、受けてしまって、ポンポンとトライを取られた。浮足立ったところが、今日のすべてだと思います」
 
 勝った國學院栃木は、吉岡監督が「のびのびやってくれた」と振り返る戦いぶりで、合計12トライ。うち9トライは、この日先発した4人の2年生が記録した。なかでも吉岡監督が「肝が据わっている」と太鼓判を押すNO8福田は、パワフルな突進で4トライを挙げる活躍だった。
 
 昨年度の全国大会では、3回戦で京都成章(近畿ブロック代表)に15-17で惜敗し、涙をのんだ國栃。いざ、たくさんの記憶が詰まった舞台へ。
 佐野日大の想いも背負い、関東の雄が、今年も花園に乗り込む。(文/多羅正崇)