「オープン球話」連載第29回 【楽天歴代ベストバッテリーは迷いなく決定!】――さぁ、八重樫さんが選ぶ「歴代ベストナイン」…

「オープン球話」連載第29回
【楽天歴代ベストバッテリーは迷いなく決定!】
――さぁ、八重樫さんが選ぶ「歴代ベストナイン」、今回は東北楽天ゴールデンイーグルス編です。2005年の球団創立からまだ16シーズン目。他球団と比べると歴史は浅いですが、よろしくお願いします!
八重樫 今回が、今までで一番難しかったよ(笑)。でも、僕も仙台出身なので気合いを入れて選びました。
――2005年の球団創設時、「八重樫、初代監督就任か?」という報道もありましたよね。
八重樫 ありましたね。もう大変だったんだから。そんな話なんてまったくないのに「あれは本当なんですか?」とか、「おめでとう」とか言われて(笑)。この時、僕はヤクルトのコーチだったんだけど、当時の若松勉監督から「おい、どうなっているんだ?」って聞かれました。あらためて言うけど、そんな話は全然なかったよ。

2013年に初の日本一に輝いた楽天
――わかりました(笑)。では、「楽天歴代ベストピッチャー」からお願いします!
八重樫 ピッチャーに関しては悩みませんでしたよ。マーくん、田中将大しかいないでしょう。東日本大震災以降、東北の人すべてに勇気を与えてくれたという感謝の思いもあります。現チームに所属する則本昂大もいいピッチャーだけど、球威、コントロール、変化球の精度、マウンド度胸、すべての面においてマーくんが上でしょう。
――現役メジャーリーガーとしての活躍も考えると、異存は少ないでしょうね。では、キャッチャーはいかがですか?
八重樫 キャッチャーも迷わなかったな。これは嶋基宏ですね。今年からヤクルトでプレーしているけど、震災時の「見せましょう、野球の底力を」というスピーチも感動的だったし、2013年の初めての日本一には彼の力は欠かせなかったでしょう。
――嶋選手も野村克也監督の下で鍛えられました。八重樫さんから見て、嶋選手はどんなキャッチャーですか?
八重樫 彼が楽天に入団して、最初に交流戦で対戦した時には、すごく積極的にピッチャーをリードしているように見えたので、「いいキャッチャーだな」と見ていたんです。それが、年数を経て経験を積んでいくうちに、リードに迷うようになったのかなという感じでした。古田(敦也)もそうでしたよ。野村さんからいろいろ学ぶうちに、高いレベルで迷うようになったんだろうね。
――野球の奥深さを知れば知るほど迷っていくという感じなんでしょうか? リードの特徴などはありますか?
八重樫 確かに一流の捕手になるには、そういう経験は必要でしょうね。野村さんがチームを去った後、嶋には自信が芽生えていたようだし、風格も出てきました。リードとしてはアウトコース中心のオーソドックスな配球です。西武の伊東勤のようなイメージかな? 野村さんの教えなのか、たまにインコースを何球も続けてみたり、嶋なりの個性が見られるようになった気がしますね。
【悩みに悩んだ野手陣】
――バッテリーは誰もが納得の結果でした。続いて、内野陣の発表をお願いします。
八重樫 ここは難しかったなぁ。まず頭に浮かんだのは、ショートの小坂誠なんですよ。彼は楽天でショートを守った機会も少なくて、ロッテのイメージが強いけど、地元宮城県の出身だし、現役も楽天で終えてそのままコーチにもなった(2011年から2013年まで。現在はロッテ育成コーチ兼走塁コーチ)ということで、彼を選びました。彼の守備は絶品でしたからね。楽天のショートだと松井稼頭央や茂木栄五郎の名前が浮かぶ人も多いと思うけど。ということで「ショート・小坂誠」が最初に決まりました。

マスク着用で取材に応じた八重樫氏
――続いて、他のポジションは?
八重樫 さらに悩みました(笑)。で、頭に浮かんだのが、銀次、藤田一也、高須洋介でした。いろいろ記録を調べたりしながら考えたのが、「ファースト・銀次」「セカンド・藤田」「サード・高須」という布陣。半世紀以上の歴史を持つ他球団と比べると、どうしても小粒な感じは否めないけど、僕としてはこれが「歴代ベスト内野陣」という感じかな?
――それでは、外野手の3人はいかがでしょうか?
八重樫 まず、盗塁王も獲得した聖澤諒かな? 若くして引退したのは残念だったけど、守備率は高かったし守備は安定していました。そして、鉄平。中日では芽が出なかったけど、野村監督の指導の影響もあったのか、楽天に移籍してから一気に成長した感じがします。2009年に首位打者を獲得した頃は、本当にいいバッティングをしていましたよ。聖澤、鉄平はスムーズに決まったんだけど、ここから先が難しかった(笑)。
――悩んだ末に最後の一枠は誰に決まったのでしょうか?
八重樫 悩んで、迷って、ここはウィーラーに決めたんだよね。でも、そうしたら巨人に移籍が決まっちゃった(笑)。本業は三塁手で、守備力では「歴代ベスト」と呼ぶには少し難があるけど、勝負強いバッティング、ムードメーカーという点で、楽天史上でも記憶に残る選手になるんじゃないのかな?
【もしも、「楽天監督」のオファーか来ていたら?】
――さぁ、では最後に「歴代ベストDH」をお願いします。
八重樫 これは簡単でした(笑)。DHは山﨑武司しかいないんじゃないかな? 中日時代はよく見ていたけど、オリックス時代にパッとしなくて、「もう終わりなのかな?」と思っていたら、野村監督の下でいきなり二冠王になったわけだから。中村紀洋も頭に浮かんだけど、ここは順当に武司でいきましょう。
――では、打順も含めた最終発表をお願いします!
八重樫 創設16年目ということで、長い歴史のある他球団と比べると小粒な感じはあるけど、「いい選手がそろっているな」とあらためて感じましたよね。
1.聖澤諒(中)
2.銀次(一)
3.ウィーラー(左)
4.山﨑武司(指)
5.高須洋介(三)
6.鉄平(右)
7.藤田一也(二)
8.嶋基宏(捕)
9.小坂誠(遊)
P.田中将大
――冒頭の話に戻りますけど、もしも楽天の監督依頼が来ていたら、地元出身として「やってみたかった」という思いはありませんでしたか?
八重樫 地元の力になれるのなら嬉しいけど、僕は自分の本心を押し殺して駆け引きをしたり、選手に厳しく接したりするのは苦手だから、監督には向いていないよ。よくウワサされているオーナーの現場介入が本当だとしたら、僕なんか耐えられなくて、キャンプの時点で辞任しています(笑)。でも、いち指導者として関わることができるのなら、それはやりがいもあって「やってみたかったな」という思いもありましたけどね。
――今回は今まででもっとも苦労した選考となりましたね。
八重樫 そうでしたね。楽天については、「オレたちがこれからの時代を築いていくんだ」という思いを持って、現役選手たちには頑張ってほしいです。
――さぁ、次回は「広島東洋カープ編」です。引き続きお願いします。
八重樫 はい、わかりました。次回もよろしくお願いします!
(広島ベストナインにつづく)