ウエスカ・岡崎慎司インタビュー 前編 後編はこちら>>岡崎慎司の現地スペインでの評価はこちら>> ラ・リーガ2部のウエ…
ウエスカ・岡崎慎司インタビュー 前編 後編はこちら>>
岡崎慎司の現地スペインでの評価はこちら>>
ラ・リーガ2部のウエスカで12ゴールと2ケタ得点を挙げ、チームの1部昇格に貢献した岡崎慎司。移籍時のトラブル、新しい国のサッカーへの順応など、さまざまな苦労があった激動のシーズンを振り返ってもらった。
「今となってはよい思い出と言えるかな......。開幕戦を3日後に控えた日に『選手登録ができない』と告げられました。そのタイミングで自分が試合に出られないのは、僕にとってはもちろんですけど、チームにとっても大きなことだったと思いますね」
それからも岡崎の選手登録はなかなか完了しなかった。
「次の試合もまだ登録できない、その次の試合もまだできないと言われて、1週間ごとに『またあかんのか』って。それで結局、移籍市場が閉まるギリギリでの契約解除。その時は結構メンタル的にやられました」
岡崎はマラガと契約解除した2日後に、同じ2部リーグのウエスカと契約を結んだ。すでに第3節が終わっていた。
「契約した当初、ウエスカは2勝1敗でチームの調子は悪くなかった。しばらくは出場できないだろうなと思いましたね。でも、これで試合に出られる(可能性がある)喜びのほうが大きかった」
本人の心配をよそに、岡崎は第4節に早速ベンチスタートから出場。第6節からは先発で出場するようになった。レスター時代には叶わなかった"9番"のポジションでのプレーだった。やはりそこに喜びは感じたのだろうか。
「レスター時代にやっていたプレーは決して嫌だったわけではないですよ。あれは自分が試合に出るための手段だった。レスターにはジェイミー・バーディーという絶対的なストライカーがいて、自分はポジションを勝ち取るためにはどうすればいいのか。そう考えた時にあのスタイルが生まれて、必死に見つけた自分の居場所でした」
レスターで生き残るため、チームのために身を粉にしてピッチを走り回ったあの頃と、ウエスカで見える景色は違ったという。
「レスターでは(カウンターが多く)ゴールから自分がとにかく遠かった。でもスペインはビルドアップからチーム全体で崩していくので、ゴールが近く感じました。スペインはプレミアよりかは身体能力がずば抜けている選手は少なくて、自分のFWとしての特徴や経験を出せればポジションを勝ち取れるチャンスがある。2部だけど、ここは自分のストライカーとしての能力で勝負ができる国だなって思いましたね」
岡崎は第6節から12試合連続で先発し、ほぼフル出場した。そしてその間チームは6勝2分4敗と勝ち越していた。ただ、岡崎は3得点にとどまり、期待に応える活躍とまではいかなかった。
「なにがいちばん大変だったかというと、"2部でプレーすること"を受け入れるのに時間がかかった点ですね。初めての2部で、ここで這い上がって1部に挑戦するための切符を掴み取るのはかっこいいと思ったし、キャリアの最後に崖っぷちから這い上がっていく姿を見せたいと思った。それは言葉にすればかっこいいんですよね。でも実際にそれを本当に受け入れてプレーするのには時間が必要でした」
言葉ではそう自分に言い聞かせ、頭では覚悟が決まっていると思っていた。けれどここまで積み上げてきた選手としてのプライドが、本能的に抗っていたのかもしれない。本当の意味で吹っ切ることができたのは、ほんの些細な出来事だったという。
「第18節のアルコルコン戦から3試合連続でベンチスタートになりました。それで多分、ベンチでボーッとしていたんでしょうね。ある試合で監督から途中交代で急に呼ばれて、すぐに着替えて試合に出ようと思ったらベンチにいるチームメイトが俺のこと見て笑っているんですよ。『お前、それで出るつもりかよ』って。
それで自分がレガースを忘れているのに気がついて『しまったー!』って、慌てて取りにいって、そのせいで交代が5分くらい遅れちゃって。もう自分でも笑ってしまうようなミスからそのまま慌てるように試合に入っていったんです。その時になんか自分の中で『もう2部だから』とか、そういうのを考えるのやめようと、自然と思えたんですよね」
その小さな事件をきっかけに岡崎はようやく地に足をつけて、今いる場所を現実のものとして捉えることができるようになっていた。
「それがあって次の日からチームメイトとくだらないことで笑いあったり、練習でどんどん声を出して盛り上げたりできるようになったんですよ。それでもう2部とかそういうのは頭から捨てなきゃいけない。それは今の自分には邪魔でしかないなって。
今いるこの場所で、目の前にいるこいつらと競い合って、ポジションを掴んでやっていこう。それは今までやってきたことと何が違うのか。何も変わらないよなって。そこに2部とか関係ないんだって。変なプライドとか、やらなあかんという焦りとか、ネガティブな感情一切が吹っ切れて、ようやく言葉だけではなく本当の意味で、ここで戦う覚悟ができた瞬間でしたね」
すべてを受け入れて戦う覚悟が決まり、岡崎の本当のスペイン挑戦が始まった。
(つづく)
岡崎慎司
おかざき・しんじ/1986年4月16日生まれ、兵庫県宝塚市出身。ウエスカ(スペイン)所属のFW。滝川第二高校から05年に清水エスパルス入り。10年から活躍の場をヨーロッパに移し、ドイツ、イングランド、スペインでプレー。レスターではプレミアリーグ優勝を経験した。日本代表国際Aマッチ119試合出場50得点。10年南アフリカ、14年ブラジル、18年ロシアと、W杯3大会に出場している。滝川第二高→清水→シュツトガルト→マインツ(以上ドイツ)→レスター(イングランド)→マラガ→ウエスカ(以上スペイン)