ウエスカ・岡崎慎司インタビュー 後編 前編はこちら>>岡崎慎司の現地スペインでの評価はこちら>> 自らの活躍でウエスカ…
ウエスカ・岡崎慎司インタビュー 後編 前編はこちら>>
岡崎慎司の現地スペインでの評価はこちら>>
自らの活躍でウエスカをラ・リーガ1部昇格へ導いた、岡崎慎司をインタビュー。昨シーズンの印象に残ったゴールや、7ゴールも取り消されたVARについて。そして、新シーズンへの思いを語ってもらった。
今季の岡崎の得点にフォーカスする時、どうしても見逃せないものがある。それは"VAR"だ。7ゴール分を取り消された岡崎は、今季もっともVARに泣かされてきたストライカーといえるかもしれない。
「『あー、これも取り消されるのかな』って思うと、あんまり喜べないことが多かったですね。でも、ネガティブなことばかりではないと思っています」
それはVARに泣かされてきた、岡崎なりの向き合い方だった。
「ほかの選手のオフサイドとか、自分が30秒前にしたハンドの判定で取り消されたりとか、自分のフィニッシュシーンとは直接関係のない微妙な判定も多々ありました。そういった時、自分のなかでは半分ゴールと換算して手応えにしていました。それとVARで取り消されることが増えると、周りにはそれだけゴールに絡めているような印象が残るんですよ。だから自分にとっては無駄ではなかった。自分を評価する人にも12点にプラスして取り消された分の7点を考慮してもらえる可能性だってありますよね」
VARがあることでプレーの質が変わったのだろうか。DFとギリギリの駆け引きを繰り返す岡崎にとって、その影響は小さくないと想像した。
「今までギリギリでオフサイドかもしれない場面で決めてきたゴールもあるし、その逆もあった。僕はそこをいかに掻い潜ってゴールを決めるかにやりがいを感じています。VARがあることでより高いクオリティーの動きが求められて、それができればより注目を集めるじゃないですか。細かいリプレイも増えましたからね。だから僕はどちらかといえばVARをポジティブに捉えていたし、楽しみのほうが大きかったですね」
泣かされてきたと思ったVARを岡崎はむしろ楽しんでいた。そしてVAR以上にフットボールを、いや、世界中を変えてしまった新型コロナの世界的蔓延について聞かないわけにはいかなかった。岡崎にとっては4試合4得点と、絶好調のタイミングでのリーグ中断だった。
「当時は正直、そんなことよりもコロナの感染が酷い状況で試合をしている場合ではなくて、自分の調子はどうでもよかった。どちらかといえば4点取れていたからいいか、という感じでした」
およそ3カ月に及んだ中断期間で家族の健康など、不安に思うことが多々あるなかで、岡崎自身はサッカー選手としてはなにを感じていたのだろうか。
「中断期間で感じたのは、試合という目標があることがこんなにも大きかったのかと。1週間を過ごすなかで土日に試合がない日々を送っていると、何をしにスペインに来てんねやろって、そんなことばかり考えていました。リーグ再開後は試合に向かっていけることの有り難みをどの選手も感じていたと思います」
リーグ再開後、ウエスカは6勝2分3敗で4位からの逆転優勝を果たした。再開後に岡崎が奪った4ゴールはどれも確実にタイトルをたぐり寄せた。ただ、中断前と比べうまくいかないプレーが多かったという。
「選手たちのコンディションはバラバラで、スケジュールが本当にタイトななかでうまくいかないことが多くなるのは当たり前なんですよね。ウエスカは形にこだわったサッカーをしてきたんですけど、それができなくなっていました。
だから、大雑把でもいいから自分がなんとかするという意識に変わりましたね。あらゆる状況が変化したなかで、自分が以前のサッカーのイメージに縛られていたらうまくいかない。だから今まで積み上げたいいイメージを捨てようと、そう腹をくくったら結果が出始めました」
そうして掴んだ2部優勝と1部昇格。来季はついに目標とした1部の舞台での戦いが待っている。
「来季は多くの選手が入れ替わるのは間違いない。リーグでの戦いだけではなく、新たにポジション争いも始まりますね。またどんな状況でも受け入れるつもりだし、その覚悟はもうできています」
その緊張感とともに、やはり胸の高鳴りを抑えることはできない。
「34歳でずっと憧れていたスペインでプレーできる喜びやモチベーションは、当然2部の時よりも大きいと思います。やっとここでプレーできるという喜びに勝るものはない。試合に出るたびにその喜びを感じて、プレーで表現できたらいいなと思います」
そして岡崎は野心に燃えている。失ったものを取り戻し、この場所で証明したいものがあった。
「ここでまた2ケタ取れたら、ヨーロッパの3大リーグで結果を残した選手として認めてもらえるはずだし、自分はそのためにここに来たわけです。岡崎はもう終わったんじゃないかって、そういう流れを崩したい思いがあるんです。あのレスターでの最後の悔しさを払拭して、ここで価値を証明するチャンスがやっと巡ってきた。来季は新たな挑戦、重要な1年になりますね」
最後にキャリアの晩年を意識する岡崎に、自身のキャリアの終え方を考えることがあるのかを聞いた。
「この年齢になれば1年、1年が勝負。来季も結果が出なければ僕のチャレンジは終わりという意識でやりますよ。一方で、結果を出せたら今度はイタリアで結果を出してみたいと思うかもしれない。そんな気持ちはありますけど、結果が出せなかったらいつでもそこで終わりという崖っぷちでやるのが、今の自分には大切なのかなって思います」
今の岡崎はどんな状況になっても受け入れる覚悟がある。そのうえで、この濃密な1年はラ・リーガ1部で結果を残すための準備だったのだろう。輝きを取り戻したストライカー・岡崎慎司が、キャリアのすべてをかけて夢の舞台に挑戦する。
(おわり)
岡崎慎司
おかざき・しんじ/1986年4月16日生まれ、兵庫県宝塚市出身。ウエスカ(スペイン)所属のFW。滝川第二高校から05年に清水エスパルス入り。10年から活躍の場をヨーロッパに移し、ドイツ、イングランド、スペインでプレー。レスターではプレミアリーグ優勝を経験した。日本代表国際Aマッチ119試合出場50得点。10年南アフリカ、14年ブラジル、18年ロシアと、W杯3大会に出場している。滝川第二高→清水→シュツトガルト→マインツ(以上ドイツ)→レスター(イングランド)→マラガ→ウエスカ(以上スペイン)