日本を代表する拳士が「オンラインエール授業」で全国の高校生に夢授業「インハイ.tv」と高校高体連が明日へのエールプロジェ…

日本を代表する拳士が「オンラインエール授業」で全国の高校生に夢授業

「インハイ.tv」と高校高体連が明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する「オンラインエール授業」。8月8日は世界を制した拳士であり、現全国高校少林寺拳法連盟理事長を務める福家健司さんが登場。インターハイが中止となった全国の少林寺拳法部60人に向け、オンライン授業を行った。

 この「オンラインエール授業」は、インターハイ実施30競技の部活動に励む高校生とトップアスリートらが、「いまとこれから」をオンラインで話し合う企画。これまで、ボクシングの村田諒太、バドミントンの福島由紀と廣田彩花、卓球の水谷隼、サッカーの仲川輝人、佐々木則夫さんらが講師を務め、高校生たちが今、抱く想い、悩みに寄り添いながら、未来に向かって激励してきた。

 第21回の講師は、日本を代表する拳士、福家健司さん。2013年世界大会で一般男子4段以上の部で1位、2012~14年、全国大会一般男子5段以上の部で1位の戦績を残して引退。現在は全国高校少林寺拳法連盟理事長を務め、都立清瀬高の少林寺拳法部監督として、高校生の指導にもあたる。

 中学2年生で少林寺拳法に入門。「中学、高校と俗にいう不良でした」と笑う福家さんは、「ケンカに強くなりたい一心で」見学に訪れた空手道場を見学。そのとき、偶然、隣で稽古をしていた少林寺拳法に衝撃を受けて、入門を決めた。

 オートバイに乗り、腕試しをしながら、「その日、その日、楽しければいい」と過ごした高校時代。「何か人に負けないものを作りたい」という負けん気は強かったが、はっきりとした将来像はなく、右往左往していたと振り返る。「自分にできるのは少林寺拳法だけ。腕っぷしには自信があった」と、当時、少林寺拳法の学生王者だった日体大へ進学。その後、大学4年間の様々な経験や監督、先輩との出会いのなかで、「自分には少林寺拳法しかない」と考えるようになった、という。

 高校時代を振り返り、「後悔することはいっぱいありますが、一生懸命に生きていた」と福家さん。「中学、高校時代に抱いていた大人に対する反抗心や愚直な正義感。それは、競技をやるうえで精神的な支柱となったと感じています」。

 質疑応答の時間には、具体的なトレーニング法や上達のコツから、後輩への指導法、そして拳士としての将来の道に至るまで、幅広い質問が飛んだ。少林寺拳法の本質は「人づくりの行」であり、競技スポーツとは一線を画す。そのためか「競技に取り組む姿勢」に関する質問も相次いだ。

「少林寺拳法の一番の目標は大会で一等賞を獲ることではない」

――演舞の土台となる、筋力トレーニングと基礎練習を教えてください。

「少林寺拳法には敏捷性、素早さが必要。重りを持つ筋力トレーニングよりも、上半身と下半身をつなぐ体幹、コアのトレーニングが、特有のスピード感のある動き、冴え、止めの動きの役に立つ。ただし、今日やって明日、結果が出るものではない。目的意識を持って、少なくとも3か月間は向上心を持って続けてほしい」

――大会の成績がすべてではないが、一方で、「成績を残したい」という拳士もたくさんいます。どういう気持ちで取り組んでいけばいいですか?

「少林寺拳法の一番の目標は大会で一等賞を獲ることではなく、修行を通してどういう人間になるかです。ただし、少林寺拳法に限らず、目標に向かい、自分が限界と思うところ、あるいは限界以上に進んだことは、その後の人生で必ず役に立つ。結果(を出すこと)が目標・目的ではないが、本選に出場しよう、入賞しよう、メダルを取ろうという気持ちも大切。やるからには、てっぺんを目指してほしい」

――どんどん上達する後輩をみていると、抜かされそうで焦ります……。

「上達が早い人とゆっくりの人はいるので、短いスパンで考えると、後輩に抜かされることもある。ただし、修行という長いスパンで考えると、出だしでの上達のスピードはあまり関係がありません。

 高いところに上れるかどうかは、どこまで諦めずに続けたか、にあります。高校年代は、他人の評価が気になるのは当然だし、負けたくないという気持ちを持つことも大切です。でも、行き詰ったとき力になるのは、1ミリでも1歩でも前に進めているかどうかの自分の中での評価です。

 私よりもセンスがある人はたくさんいましたが、私は諦めずに続けたから一番高いところにたどり着けた。人生は長いし、少林寺拳法はなくならない。昨日より今日、今日よりも明日、自分は頑張れたか、うまくなったか。もっというと、前さえ向いていれば、立ち止まってもいい。そうやって諦めずに続けていけば、絶対にうまくなるし、強くなります」

――少林寺拳法のことをあまり知らずに部活に入りまだ1年ちょっとです。少林寺拳法と出会ってよかったと思うことは何ですか?

「少林寺拳法の技術はものすごく実践的で合理的で理路整然としている。三鼎三法二十五系、六百数十種もあり、一生涯追求できる武道です。

 皆さんも副読本で教えを勉強していると思うが、技術を通して『人としてどう生きていけばいいか?』を明確に教えてくれるのが少林寺拳法。それを要約した言葉が『自己確立』『自他共楽』の教えです。

 中学・高校と自分のことしか考えられない悪たれだった私が、先生と呼ばれたり、様々な賞を頂けるようになったりするなど、少林寺拳法に出会ってなければあり得ません。本当に出会ってよかったと思いますし、(皆さんにも)絶対に長く続けてほしいと心の底から思っています」

高校生を率いる立場からエール「朝の来ない夜はない」

 自身も高校生を率いる立場でもある福家さん。それだけに3月の全国選抜大会に続き、インターハイも中止となった高校生拳士、そして部を率いる顧問や指導者に寄り添う想いも強い。授業の最後は「先行きが不透明な状況」(福家さん)を雪山に例え、エールを送った。

「私はスキーの指導員もやっていますが、雪山では風が強い日、大雪の日もあれば、快晴で何10キロ先までキレイに風景がみえるときもある。今を雪山に例えると、ガスが立ち込め、前後不覚の『ホワイトアウト』といわれる状況です。

 しかし、ゲレンデはなくなっているわけでなく、雲が晴れればキレイな風景はあります。前が見えないときは、足元に目線を落とし、確実に前に進む。それでも危ないときは止まる。先の遠い目標よりも今日に感謝し、今日を頑張ろう、今日できることをやろう、という1日1日を積み上げていってください」

「朝の来ない夜はない」。最後は力強い福家さんの言葉と、参加者全員の「左前中段構え」の記念撮影で、授業を締めくくった。

■オンラインエール授業 「インハイ.tv」と全国高体連がインターハイ全30競技の部活生に向けた「明日へのエールプロジェクト」の一環。アスリート、指導者らが高校生の「いまとこれから」をオンラインで話し合う。授業は「インハイ.tv」で全国生配信され、誰でも視聴できる。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。