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シュートの数は浦和レッズ=3本対サンフレッチェ広島=20本。しかしスコアは1−0。ありがちと言えばありがちだが、あべこべと言えばあべこべだ。なんとも不思議な展開で、浦和は広島に勝利を収めた。

最終ラインからチームメイトを鼓舞する槙野智章
前節の名古屋グランパス戦で2−6という衝撃的なスコアで敗れた浦和にとって、この試合のテーマは守備の再整備にほかならなかった。「非常に難しい1週間を過ごした」という大槻毅監督は、前節からスタメン5人を変更。うち2人は最終ラインに手を加えた。
CBの鈴木大輔に代えて槙野智章、左SBの山中亮輔は宇賀神友弥に入れ替えた。長く浦和に在籍するオーバー30のベテランふたりに、そのテーマを託したのだ。
試合は浦和にとって、おあつらえ向きの展開となった。開始5分、汰木康也がエリア内で倒されてPKを獲得。これをJ1でも変わらぬ決定力を見せつけているレオナルドが確実に決めて先制に成功する。
あとはゼロに抑えるだけ。残り85分間を、浦和は専守防衛に徹したのだ。
4バックの浦和に対し、広島は3−4−2−1。システムのギャップを、浦和は人海戦術で埋めていく。広島の1トップ2シャドーを、後ろの4枚でケア。中をしっかりと固めつつ、高い位置を取るウイングバックには両サイドハーフが戻って対応する。相手の攻撃が4人であれば5人、5人であれば6人と、数の論理で対抗していった。
とりわけ忙しかったのは、右サイドハーフの関根貴大だろう。広島の攻撃の特長はドリブラーの柏好文が君臨する左サイドにある。そのストロングポイントを何度も活用し、浦和陣内へと攻め込んだ。
そのたびに関根は、自陣へと戻された。右SBの橋岡大樹が外につり出され、中央のスペースを開けてしまったら元も子もない。その危機感を胸に、関根は走り続けた。実際のトラッキングデータは10.5kmだったが、「感触的には20kmくらい走った」と試合後に振り返るほどだった。
そうした献身性が浦和の守備を強固なものとしたが、本来は守備に比重を置きながらもカウンターから追加点の機会をうかがいたかったはずだ。しかし、この日の浦和はあまりにも相手にボールを持たれすぎた。関根だけではない。常にリアクションの動きでは、実際以上の疲労を感じるものである。
硬さはあったが、隙がなかったわけではなく、すぐさま同点とされてもおかしくない空気が流れ始めた。そんな嫌な流れを断ち切ったのは、GKの西川周作である。
17分にレアンドロ・ペレイラの決定的なヘディングシュートをストップして勢いに乗ったこの守護神は、21分にもレアンドロ・ペレイラのバイシクルシュートを見事な反応でゴールの外へとかき出した。
圧巻だったのは、後半立ち上がりの51分。CKをニアで合わせられたハイネルのヘディングシュートを、反応の逆を突かれながらも右手1本ではじき出した。まさに当たり日だった西川こそが、この日の最高殊勲選手であったことは間違いない。
一方で槙野もまた、勝利の立役者のひとりだろう。レアンドロ・ペレイラの対応に苦しみながらも要所で力強い守備を披露。ハイライトは後半立ち上がりのプレーだ。川辺駿の強烈なシュートを、身体をなげうってブロック。弛緩した空気が流れやすい時間帯で見せたこの魂のプレーが、再び浦和に活力と緊張感をもたらしたように見えた。
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2012年の加入以来、常に浦和の最終ラインに君臨してきた槙野だったが、今季は決してレギュラーの座を約束されていたわけではなかった。開幕戦ではベンチに回り、中断明け後はベンチにも入れない日々が続いた。そんな状況から故障が疑われたが、自らのSNSでこれを否定。自身の立場を認めたうえで、再びレギュラーに返り咲くことを誓っていた。
第7節の横浜FC戦で今季初先発すると、完封勝利に貢献。続く清水戦では1−1で引き分けたが、3度目の先発となったこの広島戦で再びクリーンシートを達成して見せた。
先発した3試合で2勝1分と負けなし。失点はわずかにひとつのみ。前節の名古屋戦でも後半からピッチに立ち、5失点を喫した前半とは打って変わって、チームに安定感をもたらしている。守備に不安を抱える今季の浦和にとって、このベテランCBの存在が再びクローズアップされることは想像に難くない。
終始攻め込まれながらも、2連勝と好調だった広島を結果的に無失点で抑えたことで、名古屋戦の悪夢はひとまず払拭されただろう。もっとも、「よかったのは勝ち点3を取ったことだけ」と関根が言うように、内容的には得るものが少ない試合だったのも事実だ。
守りを固めて、実際に守り切った点は評価に値するものの、西川や槙野、あるいは関根といった個人のパフォーマンスに委ねられた部分も大きい。
「もう少しボールを握ったりとか、そういう要素が全然なかったので、難しかったと思っています」と大槻監督が言えば、「自分たちがやりたいサッカーではなかった。自分たちからアクションを起こすサッカーをしたい」と関根も悔しさをにじませる。
結果がすべての世界である。一方で、次につながらなければ意味がないという考え方もある。この勝利に意味を持たすには、次節以降が重要だ。中3日で迎える敵地でのガンバ大阪戦で、その真価が早くも問われることとなる。