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欧州サッカー関係者が、日本人サッカー選手の特性で、高い評価を与えるものがある。「俊敏性と技術の融合」だ。
キュッキュッと音がするような鋭角に動けるクイックネスというのだろうか。ボールタッチも細やかで、両足が使える。アフリカ人選手のようなスプリント力やヨーロッパの選手のようなパワーはないが、機動力でアドバンテージを取れる。その特性を用いることによって、サイドから守備を崩すだけでなく、ゴールも狙えるのだ。
久保建英(ビジャレアル)は、今やその筆頭だろう。他にも、中島翔哉(ポルト)、堂安律(PSV)、乾貴士(エイバル)、安部裕葵(バルセロナB)、三好康児(アントワープ)、食野亮太郎(ハーツ)、伊藤達哉、中村敬斗(ともにシント・トロイデン)など、欧州戦線に飛び出した選手は枚挙にいとまがない。最近では、横浜F・マリノスの遠藤渓太がドイツのウニオン・ベルリンに移籍した。
横浜FCの松尾佑介(23歳)も、遠からずヨーロッパから声がかかるアタッカーと言えるだろう。

湘南ベルマーレ戦で2得点を決めた松尾佑介(横浜FC)
8月15日、ニッパツ三ツ沢競技場。リーグ戦で5連敗と勝ち星から見放されていた横浜FCは、メンバーをテコ入れしている。さらに、戦い方も大幅に変更。極端なマンマーキング戦術を捨て、布陣も3-4-2-1から4-4-2というオーソドックスな形にしていた。
それが功を奏したのか、最下位の湘南ベルマーレを4-2と下している。
戦い方の変化の恩恵を最も受けたのが、松尾と言えるだろう。旧システムでは、左のウィングバックのようなポジションで、対面する敵に対し、守備で引っ張られる形になった。しかし新システムでは、左サイドで相手の蓋をしながらも、高い位置を取って、裏を狙うことができていた。攻撃で相手をノックアウトすることができたのだ。
15分、トップの一美和成選手が下がってボールを受けた瞬間、松尾は入れ替わるように裏に走り、スルーパスを受けている。一気に加速して相手ディフェンスを置き去り、追走する選手をかわし、さらにGKとの駆け引きでゴールネットを揺らした。目を引くのはスピードだが、走り出すタイミングやボールコントロールの質も非常に高い。難しいプレーを簡単にやってみせた。
20分には、右で味方がボールを持った瞬間、左の松尾はポジション的優位を得ている。相手の背後を取る形でクロスを呼び込むと、そのボールの置きどころが完璧。左足でニア上に放り込むシュートも圧巻だった。実は、伏線がこのプレーの直前にできていた。右からのクロスに対し、やはりいいポジションを取っており、そこにボールが来るはずだったが、相手ディフェンスのハンドでPKになっていたのだ。
松尾は、すべてのプレーがゴールを匂わせる。
こぼれたボールを右足で躊躇なく振り抜くシーンなど、イメージの強さを感じさせる。そこから逆算し、ポジショニングのよさがあるだろう。準備の時点で勝っているし、タイミングの取り方がうまいことで逆をつける。サイドバックとの連係で、ワンツーを何気なくタメて出すことでラインを突破させたプレーなどは象徴的だろう。
欧州で活躍するには、実は俊敏性と技術だけでは足りない。ポジショニングやタイミングが悪いと、水の泡。利点をうまく用いて、したたかにゴールへ迫る必要があるのだ。
「いいイメージで試合に入って、それがゴールにつながりました。ハットトリックしたかったので、(後半10分での)交代は少し早いな、というのはありましたけど。次もすぐに試合がありますので、そこで結果を残せるようにしたい」
試合後、ヒーローインタビューを受けた松尾は淡々と語っているが、ルーキーらしからぬ剛胆さが見える。
「松尾はつかみどころがない」
チーム関係者はそう言う。力みがなく、流されない性格なのだろう。たとえば、クラブユース育ちの選手が、少し年齢が上の先輩選手を「君付け」で呼ぶことは珍しくないが、松尾はアラフォー世代の選手たちも君付けで呼ぶなど、独特の感覚で周囲を驚かせる。さすがにカズ(三浦知良)だけは、「カズ君」ではなく「カズさん」と呼んでいると言うが......。
この日のスタンドには、日本代表の森保一監督も視察に訪れており、"御前試合"になった。10月に予定される代表戦に招集される可能性も、十分にあるだろう。Jリーグの同じポジションだと、首位で躍進する川崎フロンターレでゴールを量産している三苫薫との争いになるか。
次節は8月19日、横浜FCは同じく本拠地で鹿島アントラーズとの一戦を迎える。