異例のシーズンにおける各クラブの対策(前編) 今季J1は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、長期に渡る中断を余儀なく…
異例のシーズンにおける各クラブの対策(前編)
今季J1は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、長期に渡る中断を余儀なくされた。その結果、再開後のスケジュールは、中2日、3日での"連戦"が続く過密日程となっている。
そんな「超」の付くハードスケジュールを、いかに乗り越え、勝ち点を積み重ねていくか。そこに異例のシーズンで成績を残すためのカギがある。
そこで、7月の1カ月間に行なわれた第2節から第7節までの6節――中3日(クラブによっては中2日も含む)での3連戦を2回こなした――を振り返り、各クラブの"過密日程対策"を探ってみたい。

※順位は第9節終了時点のもの。平均人数については、小数点第2位以下は四捨五入。
表に記したのは、各クラブの「当該6節での勝ち点」、「当該6節全試合に先発出場した人数(そのうち、フル出場した人数)」、「当該6節で5試合以上に先発出場した人数」、「前の試合から入れ替わった先発メンバーの平均人数(※小数点第2位以下は四捨五入)」を記している。
ただし、名古屋グランパスとサンフレッチェ広島については、第7節の試合が中止となったため、試合数がひとつ少ない。「5試合以上に先発出場」の項目については、「4試合以上に先発出場」の人数となっている。
表を見てまず目につくのは、5試合以上に先発出場した選手が8人以上いるクラブが、最新順位(第9節終了時点)のトップ4を独占していること。つまり、先発メンバーを概ね固定して戦ったクラブが、好成績を残しているということだ。
当該6節で全勝し、現在首位を独走する川崎フロンターレは、試合ごとの先発入れ替え人数も2.2人と、全18クラブ中4番目に少ない。他クラブ垂涎の選手層を誇る川崎だが、意外と先発メンバーを動かしていない。

過密日程のなか、メンバーを固定して勝ち点を積み重ねた名古屋グランパス
また、消化が1試合少ないながらも、当該6節の勝ち点で川崎に次ぐ2位につけた名古屋は、先発メンバーの固定化がさらに顕著だ。全試合先発は実に8人を数え、全クラブ中最多。全試合フル出場4人も最多タイである。
やはり、実質的に新シーズンのスタート直後であり、しかも、十分な準備を行なえないままに迎えた再開だっただけに、ある程度メンバーを固めて戦ったほうが、チームとしての練度は高まるということだろう。
5試合以上先発が9人と、全クラブ中最多タイのセレッソ大阪にしても、ふた桁の勝ち点11を稼いでいる。C大阪は、全試合先発も7人と名古屋に次いで多く、メンバーを固めることのメリットを示している。
少し変わった動きを見せているのは、柏レイソルだ。5試合以上先発は3人と全クラブ中最少にもかかわらず、不思議と先発入れ替えも3人と少ないのである。
これは負けている間(第2~4節)は先発を大きく入れ替え、第5節の勝利を境に方針転換し、勝っている間(第5~7節)はほとんど入れ替えをしなくなったからだ。5試合以上先発は少ないものの、どちらかと言えば、固定化傾向に色分けできるのかもしれない。
とはいえ、過密日程の今季を長い目で見たとき、同じメンバーで戦い続けることのデメリットもあるだろう。
まだシーズン序盤の、しかも高温多湿の過酷な環境下での試合に出続ければ、当然、疲労の蓄積を引き起こし、ひいてはケガにもつながりかねない。さすがに、このままずっとほとんど変わらないメンバーで戦い続けるとは考えにくいが、いずれこのツケを払わされることにもなりかねない。
対照的に、勝ち点のうえでは伸び悩みつつも、メンバーを積極的に入れ替えていたのが、横浜F・マリノス、大分トリニータ、ベガルタ仙台、湘南ベルマーレの4クラブだ。
4クラブとも、先発入れ替えは1試合平均で4人を超え、5試合以上先発はいずれも5人しかいない。
なかでも、昨季王者の横浜FMは、先発入れ替えが4.8人と最も多く、試合ごとに先発の半分近くを入れ替えていることになる。
今季の横浜FMは、ちょっとしたコンビネーションの乱れから安易な失点をすることも多く、昨季のような圧倒的な強さを見せられてはいない。メンバーを毎試合のように入れ替える弊害にも見えるが、疲労という面では、肉体的な負荷を分散させながら戦っているとも言えるだろう。
当然、すべてのクラブにとって、スタートダッシュが成功するに越したことはない。しかし、だからといって、そのためにエネルギーを使いすぎ、途中で息切れしたのでは意味がない。
つまり、"メンバーを入れ替え"ながら"勝ち点を稼ぐ"ことができればベストなのだが、やはり、どのクラブにとっても"二兎"を得るのは難しい。数字はそのことを示している。
あたかも童話「アリとキリギリス」のごとく、まずは持てる力を存分に発揮しているクラブがリードを奪い、先を見据えるクラブは余力を残している状態にある。
もちろん、現実の話は、童話ほどに単純には進まないだろう。
メンバーを固定することで、先に土台を作り上げたクラブのほうが、その先の選手の入れ替えがスムーズにできるのかもしれない。あるいは、序盤戦で積極的にメンバーを入れ替えているクラブは、これといった組み合わせを見つけられずにいるだけかもしれない。
それだけに、過密日程対策においては、ふたつに色分けされたクラブが今後、どんな展開を見せるのかは興味深い。
アリとキリギリス。それぞれの動きに注目である。
(つづく)