「黄金世代」臼井麗香インタビュー(前編)プライベートを語った後編はこちら>>新型コロナウイルスの感染拡大の影響でトーナメントの開催中止が続いていた日本女子ツアーだったが、ついに6月、今季開幕戦としてアース・モンダミンカップ(6月25日~28…
「黄金世代」臼井麗香インタビュー(前編)
プライベートを語った後編はこちら>>
新型コロナウイルスの感染拡大の影響でトーナメントの開催中止が続いていた日本女子ツアーだったが、ついに6月、今季開幕戦としてアース・モンダミンカップ(6月25日~28日/千葉県)が開催された。待ちに待ったトーナメントとあって、日本のトッププレーヤーが集結。4日間、白熱した戦いが繰り広げられた。
その熾烈な戦いにおいて、話題を集める「黄金世代」のひとり、"レイチェル"こと臼井麗香も奮闘。初日から上位争いを演じた。最終日にスコアを落として、最終的には23位タイという結果に終わったが、そのプレーぶりから今季の躍進を予感させた。そんな彼女に、今後のシーズンに向けての意気込みを聞いた--。
NEC軽井沢72ゴルフトーナメントの活躍が期待される臼井麗香プロ
--まずはアース・モンダミンカップにおける自身のプレー、結果について、振り返っていただけますでしょうか。
「3日目まではトップ10をキープしていたので、23位タイという結果は、すごく悔しいです。ただ一方で、オフにスイング改造をして『本当にこれで大丈夫なのかな?』という不安を抱えていて、右手首を痛めている状態で臨んだ試合でもあったので、この結果には少し驚いています。満足はできませんが、(状態が悪いなかで)思っていたよりも成績が残せたことで、次の試合に向けて、すごくやる気が出ました」
--初のツアーフル参戦を果たした昨季、賞金ランキングは59位。シード権獲得にはわずかに及びませんでした。その分、今季にかける思いが強いのではありませんか。
「そうですね。昨季は『もし、あの一打を決めていたら......』と思うシーンがたくさんありました。あの悔しさを忘れないで、今季の試合に臨んでいきたいです」
--初めて1シーズンを通して戦ってみて、いかがでしたか。
「すべてが新鮮で、『プロゴルファーって、こんなに大変なんだ!?』と、改めて痛感させられたシーズンでした」
--「大変だ」と最も感じたのは、どういった点ですか。
「体力面です。昨季は、シーズンが始まった時点では、私のQTランクだとすべての試合に出られない状況で、(自らも)すべての試合に出られるとは思っていなかったので、1シーズンを戦い抜く準備が、心身ともにできていなかったなと思っています。
連戦が続くと、2日目が終わった時点で、全日程が終わったくらいの疲労感を感じました。当初の予定では、毎週月曜日をトレーニングに当てるつもりだったんですが、疲労回復に努めるのが精一杯で、トレーニングがほとんどできませんでした。
特に8、9月の暑い時期は、疲労から食事も満足に摂れず、体重が5kgも落ちてしまって......。普通の女子ならうれしいのかもしれませんが、プロゴルファーにとっては(体重減によって)飛距離をロスしてしまうので致命的です。本当に気持ちだけで1年間を乗り切ったって感じでしたね」
--それでも、7月のセンチュリー21レディスでの4位タイをはじめ、トップ10入りが3回あるなど、何度か優勝争いにも絡んでいました。優勝までの"距離"というのは、見えていましたか。
「何度か優勝争いができたので、その成績だけを見ると、ツアー初優勝も近いように見えたかもしれませんが、実際にプレーしている自分としては、『(優勝には)すごく遠いな』と感じていました。ショットはまだしも、上位選手とはパットの精度で、まだまだ差がありました。
ただ今年は、昨年とは気持ちも、経験も違います。優勝ということに、よりこだわっていきたいなと思います」
--今季に向けて、年明けからタイ、マレーシアで合宿を行なってきたと聞いています。どういったところを重点的に強化してきたのでしょうか。
「合宿では、スイング改造をメインにやってきました。飛距離を伸ばすために、(昨季よりも)ヘッドスピードを上げています。そして、体調のピークを当初開幕予定だった3月に持っていく形で調整していました。
でも、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で多くの試合が中止となってしまって、アース・モンダミンカップを迎えた時には、体調のピークから落ちてしまっていた状態でした。そのため、試合ではオフの成果を示すことができませんでしたが、これから今季、飛距離に関してはまだまだ伸びていくと思います」
--予定どおり3月に開幕していれば、イメージどおりの、万全の準備を施した状態でシーズンを迎えることができたのでしょうね。
「どうでしょう。私は"完璧主義"とまでは言えないんですけど、どれだけ練習をしても『よし、やるべきことは全部やれた』とは思えないんですよね。『もっとできた。もっと、もっと』と焦ってしまうんです。『ここがダメだ』って、ついマイナス面が目についてしまって。周囲からは『焦らなくていいんだよ』と言われるんですが、やっぱり焦ってしまうんですよね(苦笑)」
--なぜ焦ってしまうのでしょうか。
「やっぱり『黄金世代』と呼ばれていることが大きいかな、と思います。そして、『黄金世代』からすでに9人の選手が優勝を経験しています。まだ勝てていないのは、私を含めて数名なので......」
--やはり「黄金世代」、同い年の選手たちのことを意識していますか。
「しますね。もう(自分だけ)『置いていかれた!』って、ずっと思っています。でも、モチベーションを自然と上げられるのは、そうやって『黄金世代』のみんなが勝って、活躍してくれているからなので、感謝しています」
--「黄金世代」ですでに優勝している選手たちに対して、嫉妬というか、そうした感情を抱くことはありますか。
「それはありません。小さい頃から仲よくやってきた選手たちですから、みんなが勝つのは、純粋にうれしいです。昨季、アクサレディス in MIYAZAKIで(河本)結が初優勝した時も、最終日最終組で一緒に回っていたんですが、自分のことのようにうれしかったです」
--「黄金世代」の面々は、ライバルでありながら"親友"のような関係なんですね。
「そうですね。ジュニアの頃から大会で顔を合わせているので、みんな、すごく仲よしです。幼馴染に近い感覚というか、プロになっても、周囲を見渡せば『あっ(ジュニアの頃と)同じメンツだ』といった感じで、一緒にプレーするのも楽しいです。
そうやって、学園生活みたいに、みんなで楽しくキャー、キャーやっていますけど、(試合では)運動会になったら真剣勝負、みたいな感じで戦っています(笑)。ゴルフを離れても仲がよくて、先日も(勝)みなみの誕生日をみんなで祝いました」
--特に仲のいい選手はいますか。
「結ですね。小学校5年生の頃からの友だちです。付き合いが長いので、プライベートで一緒にいても楽ですね。また、私の考えに近いこともあって、ゴルフに対する姿勢や考え方、プレースタイルなどは、とてもリスペクトしています」
--「黄金世代」が強いのはなぜでしょう。何か理由がありますか。
「う~ん、どうしてでしょうね。(強さの)理由と言われても、ちょっと......。みんな、かなり個性が強いのは間違いないですけど。私は、試合でできるだけリボンをつけたり、かわいいウエアを着たりといったことを心がけているんですけど、それも大勢いる『黄金世代』の中で、プレーだけでなく、見た目でも個性を出していかなければいけないと思っているからなんです」
--ネイルも、常にキレイにされています。
「ネイルは月1回、サロンに通っています。ゴルフは見られるスポーツでもあるので、いつでも(自分自身を)綺麗にしていたいので。"プロとして"という以前に、女性として爪は綺麗にしていたい、という思いのほうが強いのかもしれませんが(笑)」
--さて、今季の目標を教えていただけますか。
「1勝とシード権を獲ること。あとは、試合数がどうなるのか不透明なんですが、トップ10に10回は入りたいです。
それから、ちょっと先の目標がひとつあります。私には、高校3年生の妹がいるんですね。背が高くて、スタイルもよくて、足も長くて、顔も小さくて、『妹のほうがかわいいね』ってよく言われるんですが、その妹もゴルフをしていて、いつか妹と優勝争いをしたいです」
--多くのファンが初優勝を待ち望んでいると思います。
「ありがたいです。でもそれは、誰よりも私自身が一番望んでいることだと思います。メンタルトレーナーやキャディーさんに、『麗香は気持ちが強すぎて、それを抑えるのが大変だ』って、よく言われるんです。そして、『麗香の気持ちはすごくわかる。でも、特に1回目の優勝は取りに行くものじゃないよ』って。ですから、あまり優勝、優勝と気負いすぎることなく、できるだけ焦らずに優勝を狙っていけたらいいなと思っています」
(つづく)
臼井麗香(うすい・れいか)
1998年12月7日生まれ。栃木県出身。身長158cm。血液型:O型。
女子ゴルフ界を席巻する「黄金世代」のひとり。
2019年シーズン出場27試合。
賞金ランキング59位(獲得賞金1978万499円)。
2020年シーズン出場資格=QTランキング37位。
日本ウェルネススポーツ大学在学中。