> チャンピオンズリーグ(CL)のラウンド16第2戦。セリエAで前人未到の9連覇を成し遂げたばかりのユベントスは、1−0で落とした第1戦のビハインドを覆し、ホームで2−1のスコアでリヨンに逆転勝利を飾った。衰え知らずのクリスティアーノ・ロナ…
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チャンピオンズリーグ(CL)のラウンド16第2戦。セリエAで前人未到の9連覇を成し遂げたばかりのユベントスは、1−0で落とした第1戦のビハインドを覆し、ホームで2−1のスコアでリヨンに逆転勝利を飾った。
衰え知らずのクリスティアーノ・ロナウド
しかしながら、2試合のトータルスコアは2−2。結局、この試合でアウェーゴールを決めたリヨンに軍配が上がり、ユベントスはラウンド16で姿を消すこととなった。
敗退翌日、フロントは指揮官マウリツィオ・サッリをわずか1シーズンで解任することを決断。同時に、U−23チームの監督に着任したばかりのクラブのレジェンド、アンドレア・ピルロがトップチームの新監督に就任することを発表し、周囲を驚かせた。
引導を渡されたサッリにとっては、スクデット獲得から約2週間で天国から地獄に突き落とされた格好だ。これも常勝軍団を率いる者の宿命なのかもしれないが、しかしネガティブなイメージで幕を閉じた今シーズンのユベントスも、振り返ってみれば9連覇も含めて収穫が少なくないシーズンだったはずだ。
とりわけ、抜群の輝きを放ち続けたクリスティアーノ・ロナウドの活躍ぶりは、今シーズン最大のトピックだろう。
御歳35になったロナウドは、年齢による衰えを見せるどころか、ますます研ぎ澄まされたプレーからゴールを量産。大舞台での強さもあいかわらずで、実際リヨンとのCLラウンド16第2戦でも2ゴールをマークしている。
なかでも、相手の寄せが甘いと見るや、一瞬の隙を突いて22〜23メートルの距離から突き刺した逆転ゴールは、利き足ではない左足を鋭く振り抜いた一撃。まさしく、35歳にしてストライカーとしての進化を感じさせる極上のミドルシュートだった。
今シーズンの印象的なゴールと言えば、セリエA第12節のサンプドリア戦で決めたヘディングシュートも、リヨン戦のそれに匹敵する驚愕的ゴールとして挙げられる。
左SBのアレックス・サンドロからのクロスボールをヘッドでとらえた時の打点の高さは、何と256cmを計測。ロナウドの身長は187cmなので、つまり69cmという驚異的なハイジャンプをしながら、かつゴール左隅に正確なヘディングシュートを決めたことになる。
30代半ばとは思えないそのフィジカル能力はもちろん、長い滞空時間で打点を合わせるテクニックも含めて、もはや神技の領域と言っていい。
結局、今シーズンのセリエAでロナウドが決めたゴールは、加入初年度の昨シーズンを10ゴールも上回る計31ゴール。得点王のタイトルこそ36ゴールをマークしたチーロ・インモービレ(ラツィオ)に譲ったが、3位ロメル・ルカク(インテル)とは8ゴール差をつけるなど、傑出した得点能力をあらためて証明して見せた。
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驚くのは、それだけではない。今シーズンのロナウドは、そのほかにも数え切れないほどの記録を達成しているのだ。
たとえば、第14節サッスオーロ戦から第25節S.P.A.L.戦までに記録した11試合連続ゴールは、2018−2019のファビオ・クアリャレッラ(サンプドリア)と1994−1995のガブリエル・バティストゥータ(フィオレンティーナ)に並ぶセリエAタイ記録。ユベントスの選手としては、史上初めて10試合連続ゴールを記録した。
ちなみにユベントスで1シーズン31ゴールをマークしたのは、1933−1934のフェリチェ・ボレル以来の偉業だ。
また、第34節のラツィオ戦では、出場61試合目にして歴代最速となるセリエA通算50ゴールを達成。68試合で50ゴールを記録していた元ウクライナ代表FWアンドリー・シェフチェンコ(ACミラン)の最速記録を大きく更新した。
その他、セリエAでプレーした歴代ポルトガル人選手のなかで初めてハットトリックを達成したのも、通算最多ゴールを決めているのも、もちろんロナウドだ。マヌエル・ルイ・コスタ(フィオレンティーナ→ミラン)やルイス・フィーゴ(インテル)など、過去にも多くのポルトガルの名手たちがセリエAで歴史を刻んだが、ロナウドは2シーズン目でレジェンドたちをあっさり追い抜いてしまった。
そして極めつけは、イングランドのプレミアリーグ、スペインのラ・リーガ、イタリアのセリエAという3大リーグすべてにおいて、30ゴール以上を記録した初めての選手になったことだ。この事実は、特徴の異なるハイレベルなリーグで同じように得点能力を発揮したという意味において、数字以上に高く評価されるべき記録だろう。
30代半ばにさしかかっても、ロナウドのフィットネスは一向に衰えを見せない。それどころか、年齢を重ねるごとに経験を上積みしていくことにより、ゴールマシンとしての進化を続けているようにも見える。
「彼はいつも準備ができていて、いつもゴールを決めるためにプレーしたがっている。だから彼は、プレーし続ける必要がある」
ユベントスが9連覇を決めた試合の3日後に行なわれたカリアリ戦の会見で、スタメンフル出場を果たしたロナウドについて、サッリ監督はそうコメントした。
約3カ月の中断後、最初に行なわれたコッパ・イタリア準決勝以降、週2試合ペースで行なわれたリーグ戦でも、ロナウドは出場を続け、ゴールを決め続けた。さすがにCLリヨン戦の1週間前に行なわれた最終節は温存されたが、再開後の公式戦13試合で連続スタメンフル出場を果たしたのは、ユベントスではロナウドひとりだけだった。
ロナウドが必要なすべてのトレーニングを行なえる施設を自宅に備えていることはよく知られているが、今回の中断期間中も、いつものようにストイックなトレーニングを自らに課していたのだろう。そのメンタリティとゴールへの飽くなき執念こそが、ロナウド最大のすごみとも言える。
世界トップレベルのクオリティを維持し続ける驚くべき35歳は、リヨン戦でCL通算130ゴールに到達し、現在もCL歴代通算ゴール記録保持者として、2位リオネル・メッシ(115ゴール)とハイレベルな競争を続ける。
おそらく来シーズンも、あらゆる記録を更新する"レコードブレーカー"は数々の記録を打ち破ってくれるに違いない。