「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」第11回目は特別編として指導者にスポットを当て、高校教員への授業を開催。講師は、元女子バレーボール全日本代表監督で、現在は、日本初…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」第11回目は特別編として指導者にスポットを当て、高校教員への授業を開催。講師は、元女子バレーボール全日本代表監督で、現在は、日本初の女子プロバレーボールチーム「ヴィクトリーナ姫路」のゼネラルマネジャーを務める眞鍋政義さん。女子バレーボールをはじめ、さまざまな種目の部活動で指導に当たっている現役教員約10名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

挑戦と試行錯誤 時間をかけて頑張ってほしい

眞鍋さんからの挨拶で授業はスタート。「短い時間ですが、私が経験・体験してきたことを少しでもわかりやすく伝えたい。インターハイがなくなって、先生たちも大変だと思う。スポーツ界全体で盛り上げていきたいです」と柔らかい口調で語りかけた。

まずは、眞鍋さんの指導者になるきっかけについての話題に。41歳まで現役の選手として活躍し、その後女子バレーボールの監督に。「一番のターニングポイントだった」と振り返りながら、指導者のモットーとして本田宗一郎氏の「チャレンジしての失敗を恐れるな。何もしないことを恐れろ」を挙げ、挑戦の連続であったことを伝えた。また、今の自粛期間についてふれ、「ケガした選手のモチベーションを上げるのも難しいが、目標を失った生徒のモチベーションを上げるのも難しいことだと思う」と強く共感した。

「部活動で『勝ちたい』というモチベーションを揃えることが難しい。一定にするにはどうしたらいいか?」という教員からの質問に対しては、「生徒と先生の全員の目標をチームで掲げる」ことを挙げ、技術とモチベーションを一致させる目標の重要性を語った。「日本代表にも使っていたが、スタッフが制作する全員のいいプレーを5分程度の映像にまとめた『モチベーションビデオ』を用いていた」とコメントしながら、「男性以上に女性は一つにするのが難しい。時間はかかるが、頑張ってください」とエールを送った。

テニス部顧問の教員からの「趣味でやっている生徒と大会に向けて頑張る生徒など、感覚の違う生徒への指導」についての悩みが出ると、「私も勉強になります。一人一人目標が違うことは大変だと思う」と一言。「例えば団体戦だと、バレーボールもコートの6人より控えの選手の温度が上がっている方がチームはうまくいく。なので、レギュラーでない選手に特にコミュニケーションを取るようにしていた。まめに話しかけてあげると」とアドバイスした。

監督はモチベーター 目標を達成する役目

後半はさらに積極的な悩みや質問が多く聞かれた。

「全日本で選手を選んでいく際に、外れた選手に対してどのように接しているか」との質問には、「次の大会には出られないと素直に結論を伝えるようにしている。あくまでも次の大会に照準を合わせてほしいと伝える」とコメント。「バレーボールにはデータがあります。ここが足りないからやってほしい、ここはいいから延ばしてほしいとデータで伝えている」と独自の気遣いをしていることを語った。

また、その流れで「眞鍋=データバレー」というイメージがついていることについてふれ、「監督就任2日目に面談をした時に、ある選手に『昨日あの人に5分接していた。自分には2分しか接してくれていない』言われたことがありました」と告白。「練習の最後にゲームをして、アタック決定率などが書かれた数値を翌日に大きく貼り出す。そしてこの数字のいい方からレギュラーを選ぶことにしました。(データバレーは)嫉妬や妬みをなくそうと、女性の平等性を保つために始めたんです」と話した。

「最後にいいですか?」と眞鍋さん。「インターハイがなくなって、指導者のみなさん本当に大変だと思う。監督はモチベーター。スタッフも選手も日々、監督はモチベーションをとにかく上げてあげる、これが目標を達成する役目だと思っている」と力強く話し、「男性が女性を教えるのは大変。女性はサプライズに弱い。選手が美容室に行ったりすると、女性のマネージャーが髪を切ったり、色を変えたりした選手を教えてくれる。その選手一人一人に『髪を切った?』と聞いてあげる。そういう細やかなことを8年間やっていた」と細部にわたるモチベーションへの配慮を語った。最後は全員でガッツポーズをして記念撮影。データと人情の機微、その魅力が詰まったオンラインエール授業が終了した。

授業後の「アフターセッション」で教員の本音を語り合う

眞鍋さんとのオンラインエール授業後に、指導者たちだけの「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。

「授業を受けて、選手へのアクセスの仕方」について聞かれると、「普段から女子バレーボール部を指導している中で、非常に共感できる部分があった。チャンスを平等にすることや、『絶対』という言葉を使わないことなど、こちらがいいと思っていても、生徒は結構気にしている部分があるので、生徒ともに成長していきたい」との声が聞かれた。

また、「自粛期間中の発見」について、新しい学校に転勤したばかりの男性教員は「新入部員をどうやって入れるのかだけを考えていた」とコメント。「妻に『入部していなくてもバレーボールを渡してあげたら?』と言われて、実際希望者5人にボールを渡して練習してみるように話したところ、全員が入部してくれた。女の子のことは女性の方がよくわかると思った」と話した。

同じく新しいチームを作っている女性の教員は「チームスポーツだからこそのやりがいや難しさは自分自身も感じて、ケアしてきたつもりだったが、それが全日本レベルでも大事だったんだなということを感じられたのはすごくありがたかった」と授業の成果を振り返った。

最後に3年生の引退にふれ、「一つの区切りを付けるのも指導者の役目なんだと思う。対外試合ができなくても、何かさせてあげたいなと考えている」という教員の声を受けて、「進路を考えると、これからの大会に向けて部活ができない3年生は非常にかわいそう。ただ、何かしたいという生徒への想いが伝わってきて、私も応援したいと思っている」と感化された教員もいた。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

生徒だけでなく指導者もまた、同じ悩みや想いを共有しながら、今のやるせなさ、不安感が少しでも前向きになり、明日への力につながることを願ってやまない。