社会人Xリーグはいよいよポストシーズンに突入する。 10月29日、30日に開催されたリーグ第6節は、JXBトーナメント進出を懸けた激しい戦いが繰り広げられた。 すでに進出を決定していた富士通フロンティアーズはワイルドカード(WC)進出を…

社会人Xリーグはいよいよポストシーズンに突入する。

10月29日、30日に開催されたリーグ第6節は、JXBトーナメント進出を懸けた激しい戦いが繰り広げられた。

すでに進出を決定していた富士通フロンティアーズはワイルドカード(WC)進出を懸けたノジマ相模原ライズに終了22秒前に逆転の末17対10で勝利し、全勝1位でシード権を獲得。1勝5敗のノジマ相模原はJXB進出ならず。

富士通と同じく全勝のオービックシーガルズは、トーナメント進出が無条件に決まる6位以内を目指したエレコム神戸ファイニーズに20対14で勝利。富士通とはスケジュールストレングス(対戦相手の勝利数の和)の差で第2シードとなった。

3位を争ったパナソニックインパルスとLIXILディアーズの一戦は、前半30対3とパナソニックが大幅リード。しかし、LIXILが後半猛然と追い上げ、終了52秒前に30対31と逆転。パナソニックはQB高田鉄男(立命館)のパスで追い上げ、試合終了と同時にK佐伯栄太(桃山学院)の38ヤードFGで33対32と再逆転した。

6位以内を争ったIBMビッグブルー対アサヒ飲料の対戦は、IBMが13対7で勝利。アサヒビールシルバースターはBattle9の東京ガスクリエイターズに38対8で快勝。IBMとアサヒビールは3勝3敗で並んだが、スケジュールストレングスにより、5位IBM、6位アサヒビールとなった。

2勝4敗のエレコム神戸、アサヒ飲料、Battle9を5勝1敗で勝ち上がったオール三菱ライオンズと4勝2敗のアズワンブラックイーグルスの4チームは、トーナメント進出残り2枠を懸けて11月5日に神戸王子スタジアムで行われるワイルドカードプレーオフに臨む。

アズワンブラックイーグルスQB17田原康平(帝京大)

エレコム神戸とアズワンのライバル対決

11月5日のWC第一試合は、エレコム神戸ファイニーズとアズワンブラックイーグルスの西地区ライバル対決だ。

今季はエレコム神戸がSuper9、アズワンがBattle9に所属しているが、両雄は長年熾烈な戦いを繰り広げてきた歴史を持つ。

Xリーグ体制となった1996年から秋季シーズンで21回対戦。これまでの戦績はアズワンの13勝8敗だが、21戦中13戦が1TD差以内の僅差。過去10年間はアズワンの6勝5敗(※)と拮抗している。

エレコム神戸はアイオワ大から加入した新卒RBジョーダン・カンザリを中心とした攻撃を夏から構築してきた。しかし、そのカンザリが第2節のパナソニック戦序盤に負傷し早々に戦線離脱。攻撃は再構築を余儀なくされた。

当初の攻撃力向上が見込めなくなった現在のチーム力は、上位陣と比較する劣ることはチームの誰もが認めるところだ。しかし、「春から上位と対等に戦うことを目指してチームを作ってきて、このまま終わってしまっては面白くない。(上位陣に)一泡吹かせる戦いをしようと、チーム全員の意思統一はできています」

エレコム神戸の主将LB香山裕俊(関学大)は、下克上を狙う意気込みだ。

10月30日のオービック戦では、突貫型RBの佐伯裕司(岡山大)と長谷知規(日体大)の中央ランと、守備の反応を見てQB木下雅斗(立命館大)、糟谷啓二郎(関学大)が走る『選択』プレーを軸に、WR 南本剛志(関学)、常包健二(大産大附高)、TE松島紘樹(関学大)らにパスを投げる攻撃を展開。14対20で敗れたものの、オービックから先制点を奪うなど一矢報いる内容だった。

攻撃的スタイルの守備には元々定評がある。守備の負担が減ったことで、攻守の歯車が合ってきた印象だ。

第6節のサイドワインダーズ戦に24対21で勝利し、4勝2敗でトーナメント進出を勝ち取ったアズワンは、Battle9の中では安定した攻撃力を発揮してきた。走投に優れたQB田原康平(帝京大)、182センチ95キロと大型のTE/SB山本昌典(神戸学院大)、フィジカルに強いWR井本拓馬(近畿大)、スピードのあるWR清水宏樹(京都工繊大)、チーム随一の身体能力を持つ川畑一輝(天理大)ら、能力の高いパッシングユニットが武器。地上戦はベテランRB山上博之(近畿大)が、リーグ戦6試合で48回走280ヤード(平均5.83ヤード)5TDと安定した走りを見せている。

※ファースト/セカンドステージ制の2010年は2度対戦

オール三菱ライオンズRB28萩原誠人(中央大)

『学生オールスター』が揃うオール三菱とノーネーム軍団『アサヒ飲料』の初対決

もう一つのWCはアサヒ飲料とオール三菱の初対決だ。

アサヒ飲料はリーグ終盤戦から守備主導の戦い方が形になってきた。リーグ戦第6節のIBM戦は4Qに逆転の末7対13で敗れたが、ランによる時間消費と、粘り強い守備でIBMの爆発力を封じ、1Q最初の攻撃機会に挙げたRB白神有貴(大阪府立大)の42ヤード独走TDによるリードを終盤まで守った。

今季のアサヒ飲料の主力選手は、QB加納友輔、WR横山公則(ともに関学大)、副将DE山本拓也(立命館大)ら、学生時代から強豪校で活躍してきたメンバーはごく一部。学生時代2〜3部リーグで過ごした選手や、1部リーグのチーム出身でも控選手だった者たちが主力として活躍している。Super9所属9チームの中ではトップのIBM末吉智一(早稲田大)に次ぐ6試合で59回走373ヤード2TDのラッシングを記録しているRB白神、守備の要として松本直人ヘッドコーチも絶大な信頼を置くLB藤岡将史(大産大)らは『ノーネーム軍団』のハート&ソウルだ。

アサヒ飲料とは対照的にオール三菱は学生時代に1部リーグで活躍した有名選手たちをずらりと揃えたチームだ。エースQB谷口翔真(立命館大)は、2010年に立命館大が甲子園ボウルを制覇した時のエースQBでこの年の年間最優秀選手賞チャック・ミルズ杯を授賞。控えのQB斎藤圭(関学大)は、2014年に関学大が学生4連覇を果たした時のエースで、同年のチャック・ミルズ杯授賞QBだ。Xリーグ18チーム中、2人のミルズ杯QBを擁しているのはオール三菱だけである。また、10月29日の明治安田ペンタオーシャンパイレーツ戦(◯23対13)で、9回123ヤード2TDを挙げたRB萩原誠人は、中央大時代は関東屈指の好ランナーとして活躍した実績を持つ。守備では2014年度の東日本王者・日本大を主将として率いたDL宮田直人、明治大2014年度主将のLB柳龍太郎ら、大学時代に1部リーグの強豪チームで主将を務めていたメンバーも多い。

近年は「学生時代の『遺産』ではなく、Xリーグの強豪と対等に戦えるチームを目指す」という林顕ヘッドコーチの方針の下、選手の意識改革に取り組んできた。

「WC進出は確実にクリアしなければならないステージ」と、林ヘッドコーチは開幕前にシーズンの抱負を語っていた。

オール三菱にとっては、ここからが本当の戦いだ。

 

■注目カード

11月5日(土)       エレコム神戸ファイニーズ×アズワンブラックイーグルス         神戸王子スタジアム

11月5日(土)       アサヒ飲料クラブチャレンジャーズ×オール三菱ライオンズ      神戸王子スタジアム