今から5ヶ月前の2020年2月26日、新型コロナウイルスによる大混乱が始まるほんの少し前に、女子テニス界のスターだったマリア・シャラポワ(ロシア)が現役引退を発表した。だが彼女は引退発表のタイミングを間違えたのではないか。豪ニュースサイトn…

今から5ヶ月前の2020年2月26日、新型コロナウイルスによる大混乱が始まるほんの少し前に、女子テニス界のスターだったマリア・シャラポワ(ロシア)が現役引退を発表した。だが彼女は引退発表のタイミングを間違えたのではないか。豪ニュースサイトnine.com.auが伝えている。【動画】記憶に残るシャラポワのスーパーショット集

シャラポワは「全豪オープン」にワイルドカードで出場したが、1回戦でドナ・ベキッチ(クロアチア)にストレートで敗れた。その時、来年もここに戻ってきますか?と問われたが、彼女は「分からないわ。今回出場できたのは幸運だった。この先12ヶ月間に自分に何が起こるのか、今答えることはとても難しいわ」と、はっきりとは答えなかった。

それまでの数年間は、シャラポワにとって試練の連続だった。詳細に報道された例の事件、禁止薬物の服用により、出場停止処分を受けた。さらに、その前からあちこちの負傷、特に右肩の怪我に苦しんだ。それでも彼女は、手術を受け、リハビリを続けてカムバックを果たした。

自分の愛するスポーツへの復帰を目指して努力を続けてきた精神力の強さが、彼女らしさである。お金は問題ではなかった。彼女がそれまでにコートの内外で得た収入は、少なくとも人生を4回生きられるくらいの額に達していた。

勝負への執念が、彼女を動かしてきた。キャリアの絶頂期にはあり得なかったような敗北への落胆を、彼女は観客の前で味わわねばならなかったが、矜持を失うことはなかった。彼女は決してその内面の感情をあらわにしなかった。彼女の血管に流れているのはシベリアの氷なのかと思ってしまう時もあった。

シャラポワが引退を発表した時には、既にコロナの問題は始まってはいたが、ロックダウンや自主隔離などによりテニス界もこれほどの影響を受けるとわかっていたら、果たして彼女はあのタイミングで引退を決めただろうか。

5回のグランドスラム優勝(最初は2004年の「ウィンブルドン」で、最後は10年後の「全仏オープン」)を含む36個のタイトルを持つシャラポワは、テニスがシャットダウンされているこの期間にテニスから離れて休養をとり、プレッシャーなく負傷の治療に専念できたのだ。

まだ33歳の彼女は復帰を考えないだろうか。

選手たちは引退しても、一定レベルの体力を保つ習慣を続けるのが普通であろう。それが彼らのそれまでの生活スタイルでもあるのだから。しかし、激しいトレーニングをする必要はなくなるはず。シャラポワの様子を見ていると、以前と変わらない激しいトレーニングをしているように見えるのだ。

彼女は、自身の経営するお菓子ブランドのプロモーションだったり、ファッションをファンに披露したり、トレーニングの様子を報告したりと、これまでもSNSに頻繁に投稿してきた。それは変わってはいないのだが、最近の彼女のトレーニング動画を見るとかなりハードなもので、まるで大事な試合前のように見える。彼女は引退発表をもう少し待つべきだったと考えているのだろうか。

引退を発表した時、彼女はこう語っていた。「テニスは私に世界を見せてくれた。そして私がどんな人間なのか教えてくれた。テニスで自分を試し、テニスで自分の成長を測ってきた。だから、次に何をすると決めても、次の山の征服を目指すわ。まだまだ登っていたいし、まだまだ成長していきたい」

(テニスデイリー編集部)

※写真はニューヨークでのシャラポワ(2020年2月)

(Photo by Donell Woodson/Getty Images)