東海大・駅伝戦記 第81回 ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020の第4戦・千歳大会。 これまで士別大会、深川大会、網走大会と各種目で日本記録や自己ベスト更新など好記録が続いたが、最終選の千歳大会も同様で、選手たちのレースに対する意欲が感…

東海大・駅伝戦記 第81回

 ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020の第4戦・千歳大会。

 これまで士別大会、深川大会、網走大会と各種目で日本記録や自己ベスト更新など好記録が続いたが、最終選の千歳大会も同様で、選手たちのレースに対する意欲が感じられた。

 学生は、5000mD組で駒澤大の加藤淳(4年)が13分53秒48、中央大の三浦拓朗(2年)が13分54秒91でともに自己ベストを更新。5000mB組では、早稲田大の中谷雄飛(3年)が網走大会では13分52秒37だったが、この千歳大会では13分39秒21をマークし、しっかり修正してきた。

 中谷は「網走大会ではうまく走れなかった。今回は疲労をしっかりと取ることを第一にして少し休養を多めに、軽く動きながらピークを持ってきた。今日は13分30秒台を目標にしていたので、ギリギリでしたが達成できたよかった」と笑顔を見せた。

 また5000mA組では、中央大の吉居大和(1年)が深川大会で13分38秒79を出して陸上関係者の度肝を抜いたが、千歳大会でも13分28秒31をマークして15年ぶりとなるU−20の日本記録を更新するなど、大物ぶりを発揮した。

 そして東海大の主将・塩澤稀夕(きせき/4年)も千歳大会に出場。久しぶりのレースとなった。



ホクレン千歳大会が久しぶりのレースとなった東海大主将の塩澤稀夕

 外国人選手や遠藤日向(住友電工)らがトップ集団を形成するなか、塩澤は大きな第2集団で先輩である鬼塚翔太(DeNA)とともに粘りの走りを見せる。だが、持ち前のスピードが上がらず、13分49秒56でフィニッシュ。遠藤が13分18秒99という好タイムを出すなか、塩澤は自己ベスト更新を果たせず、悔しいレースとなった。

「まだ調子が上がらないなか、40秒切りが目標だったのですが、50秒切れたぐらいなので……まだまだ力不足ですね」

 塩澤は厳しい表情でそう語った。

 塩澤は3月から5月まで故障により練習が積めなかった。ちょうどその時期、コロナ禍によりチームの活動も停止。自粛期間が明け、戦列に復帰してからも十分な練習ができなかった。

 そうしたなかで迎えた今回の大会だった。

 思うような結果は出なかったが、塩澤にとっては大きな刺激になったようだ。同組で遠藤がすばらしいタイムを出し、中央大の吉居も1年生とは思えない堂々とした走りを見せた。

「同世代の(遠藤)日向だったり、中央大の吉居くんだったり、駒大の鈴木(芽吹)くんだったり、本当に勢いがあります。トラックでは、今年は日本選手権の標準記録を切れているので、日本選手権優勝を目標に頑張っていきたいと思っています。駅伝では、昨シーズンの相澤(晃/東洋大→旭化成)さんのように、どの区間を任されても区間新を出せるようにしたいですね」

 個人の目標は明確だが、現状は「まだ最低限の走り」ができている程度だという。昨シーズンは故障がなく順調だっただけに、今年は調整の遅れを感じているようだが、チームとしてもホクレンや東海大記録会の結果を見て、危機感を抱いている。

「現状は、まだ全員がチームに戻ってきているわけじゃないです。一部のメンバーで練習をしていて、制限があるなかでうまく(練習が)できなかった部分もありますし、先日の東海大記録会ではほぼ全員がいい記録ではなかった。

 ほかの大学の選手のタイムを聞くと、あらためて自分たちの置かれている状況がわかりました。まだまだ層の薄さが目立つので、これからしっかり立て直していきたいと思います」

 今年の東海大の目標は「学生3大駅伝3冠」、スローガンは「自覚と責任」に決まったという。
※7月27日に出雲駅伝の開催中止が正式に決定した

「昨シーズン、3大駅伝優勝を目指していたので、その目標を自分たちが超えるというのと、スローガンについては、コロナ禍のなかうまく練習できない部分があるので、一人ひとり自覚ある行動や責任ある生活が求められるので、これにしました」

 ホクレンで上半期の活動が終わり、これから夏合宿に入っていく。個人もチームももうひとつという状況のなか、主将としてどのようにチーム力を上げていこうと考えているのだろうか。

「この1週間で、自分自身もそうですし、チームとしてもまだまだ力不足を感じました。やっぱりタイムというのはひとつの目安だと思います。夏合宿では全員で切磋琢磨して、充実した練習をできるようにしたい。(4年生の)自分と名取(燎太)、西田(壮志)が中心となって、もう一度チームの層を厚くしていけたらいいなと思っています」

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 今年の東海大は”黄金世代”が卒業し、戦力的なダメージは計り知れないが、幸いなことに4年生の3本柱は健在だ。

 昨年、出雲駅伝、全日本選手権ですばらしい走りを見せた市村朋樹(3年)、今年1月の箱根駅伝7区で堂々をした走りを見せた松崎咲人(2年)らはいるが、3冠奪取を目指すには新しい力が必要になる。夏合宿で新たに頭角を現す選手が出てくるのか、非常に楽しみだ。

 なにより塩澤にとっては、自らの調子を上げること、そしてチーム全体を俯瞰して選手を引っ張るなど、タフな仕事が求められることになる。