J1第7節、横浜FCvs浦和レッズの試合は、奇しくも喜ばしくないことで共通するもの同士の対戦だった。 まずは、どちらも…

 J1第7節、横浜FCvs浦和レッズの試合は、奇しくも喜ばしくないことで共通するもの同士の対戦だった。

 まずは、どちらも2連敗中だったこと。そして、4日前に行なわれた前節の試合で、横浜FCは横浜F・マリノスに、浦和は柏レイソルに、いずれも0-4で大敗。前半は0-1と僅差の勝負を繰り広げながら、後半に3失点を重ねるという敗戦経過まで奇妙に合致していた。

 バックスタンド後方には何度も稲妻が光り、生温い南風がピッチを勢いよく駆け抜ける。両チームにとっては文字どおり怪しい雲行きのなか、連敗ストップをかけた一戦は行なわれた。

 結果は2-0。勝ったのは浦和である。

 浦和は、横浜FCが的確にヒットさせてくるジャブに手を焼き、ポイントではリードされていたものの、勝負どころで相手のスキを見逃さず、強烈なストレートと、カウンターからのフックを浴びせてノックアウト勝ち。ボクシングに例えるなら、そんな印象の試合だった。

 浦和にしてみれば、決して満足できる試合内容ではなかっただろう。しかし、それでもきっちりと勝ち点3を手にするあたりに、貫禄勝ちとでも言うべき、浦和の強さが感じられた。

 長いシーズン、特に今季のような超過密日程のリーグ戦を勝ち抜くにおいては、”こういう試合”で”こういう勝ち方”ができるかどうか。それが、強いチームか否かを分ける重要な条件となる。

 そう考えると、今の浦和は確かに強い。少なくとも、今季開幕前の評判よりははるかに。

 今季開幕前、浦和の評価はお世辞にも高かったとは言い難い。昨季はAFCチャンピオンズリーグでこそ決勝に進出したものの、J1はというと、シーズンを通して優勝争いに加われず、ラスト5試合に至っては3敗2分けと勝利なし。J2降格の危機も迫る14位に終わっていたのだから、当然と言えば当然だ。

 しかし、フタを開けてみると、浦和は開幕戦の勝利を皮切りに、4カ月を超える長期中断を挟んで3勝1分けの好スタート。特にリーグ再開後は、失点の少ない安定した試合運びから限られたチャンスを生かす、”接戦巧者”ぶりが際立っていた。

 さまざまなメディアがリーグ戦再開後に行なったJ1順位予想の”改定版”でも、浦和の評価は概ね上がっていた。

 ところが、そんな上昇気配漂うなかでの急ブレーキ。このまま連敗が続くようなら、浦和は順位とともに、自分たちへの評価もたちまち急落させかねない。この横浜FC戦は、浦和にとって序盤戦のヤマ場と言ってもいい試合だったはずである。


柏木陽介(写真)ら

「オーバー30」の選手たちが奮闘した浦和レッズ

 そこでチームを救ったのは、”オーバー30”の選手たちだった。

 浦和は、大敗した前節の試合から先発メンバーを一気に5人も入れ替え。なかでも30代の3選手、すなわち、今季まだ1試合しか出場していないDF槙野智章、DF鈴木大輔、同じく2試合出場のMF柏木陽介が名を連ねていた。そこには、悪い流れを変えたいという意志とともに、彼らに対する信頼が感じ取れた。

 今季初先発となった槙野が語る。

「2連敗するなかで、外から見ていてチームに元気がなく、声が少ないし、コミュニケーションを取っている姿が見られなかった。(自分が入ることで)ピッチの中での雰囲気作りを徹底した」

 観客数を5000人までに制限している現在のスタジアムでは、ピッチ上の選手の声がよく響く。同じくオーバー30のキャプテン、GK西川周作が仲間を鼓舞する大きな声に、90分を通して槙野や鈴木のそれが続いた。彼らを中心に泥臭くボールに向かって体を投げ出した浦和は、自陣に築いた堅牢な壁を破られることがなかった。

 槙野は「今年33歳だが、まだベテランと呼ばれる歳じゃないと思っている」とささやかな抵抗を見せつつ、こう話す。

「ベテランの意地というか、経験の差が出たプレーだったし、内容だった」

 彼らは、浦和が持つ底力、いわば、現在の強さの裏づけとなっているものをピッチ上で示したと言えるだろう。

 再開後のJ1で、浦和が評価を高めている根拠のひとつは、充実した戦力にある。

 昨季は14位に低迷したとはいえ、一昨季の天皇杯優勝、昨季のACL準優勝が示すように、そもそものポテンシャルは高い。選手個々の顔ぶれを見れば、日本人選手には代表経験者がズラリと並び、外国人選手にも多彩な実力者がそろう。

 実際、横浜FC戦での決勝ゴールも、鮮やかな展開から生まれている。

 中盤での細かいパス交換で横浜FCの中盤を食いつかせると、中盤とDFラインの間に空いたスペースへ縦パスを入れる。パスを受けたMF関根貴大はドリブルで前進しながら、DFラインの背後へスルーパス。これをタイミングよく抜け出したFWレオナルドが、難なくゴールへ流し込んだ。

「相手の2トップに動き出しのいい選手(FW興梠慎三、FWレオナルド)がいたので、それで少し怖がって(DFラインが)下げさせられた」

 横浜FCのボランチ、MF佐藤謙介がそう振り返ったように、百戦錬磨の2トップが目に見えない圧力をかけ続けた中で生まれた、必然の決勝点だった。

 東京五輪世代のDF橋岡大樹に代表されるように、浦和では徐々に世代交代が進んでいる。しかし、だからといって、それは経験豊富な選手たちがJ1のレベルで戦えなくなったことを意味するわけではない。要するに、選手層が厚いのだ。

 ズルズルと負け続けることは避けたかった横浜FC戦。そんな試合で、5人も先発を入れ替えられたのは、その裏づけがあればこそ、である。

 もちろん、すべての試合で勝てるに越したことはない。だが、それが難しい以上、重要なのは負けたあとに何ができるか。とりわけ、中2、3日で次の試合を迎えることが多い今季においては、それが顕著になる。

 この日の浦和の勝利は、ある意味で理想的な勝ち方だった。槙野が語る。

「常に準備をしていたので、しっかりゼロ(無失点)に抑えられた」

 老獪に勝利を手繰り寄せる頼もしいベテランに支えられた、厚い選手層。浦和が再開後のJ1で、評価を高める理由である。