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福島良一「MLBコアサイド」
1973年の初渡米から47年にわたってメジャーリーグの造詣を深めてきた福島良一氏に、さまざまな魅力を伝えてもらう「MLBコアサイド」。今回は「二刀流」としてメジャー開幕を迎えた大谷翔平投手について語ってもらいました。

大谷翔平がトミー・ジョン手術を経てついにマウンドに上がる
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手が2年ぶりに「二刀流プレーヤー」として戻って来ます。7月26日(日本時間7月27日朝)、敵地オークランドでアスレチックスとの開幕3戦目に先発マウンドへ。その後も毎週日曜日に「サンデー大谷」として登板していくことになりそうです。
ジョー・マドン監督は大谷投手の登板日について「登板翌日にオフというのが一番、理にかなっている」と言及しています。エンゼルスの日程で最も多いオフは月曜日。さらに日曜日がすべてデーゲームということも理由のひとつでしょう。
2018年、大谷投手はデーゲームで5試合に先発し、成績は4勝0敗、防御率2.18。一方、ナイトゲームでは同じ5試合の先発で0勝2敗、防御率5.30でした。これを見れば、圧倒的に強いのがデーゲームなのは一目瞭然。マドン監督が日曜日の試合に起用したくなるのもうなずけます。
大谷投手のピッチングでまず気になるのは、あの剛速球が実戦でどこまで戻っているのか、ではないでしょうか。
2018年4月1日、アスレチックスとのデビュー戦で初登板初勝利を飾った時、大谷投手は初回にいきなりメジャー移籍後最速の99.6マイル(約160キロ)を計測しました。その後、4月24日のヒューストン・アストロズ戦で101マイル(約162.5キロ)をマークし、早くも大台を突破しています。
さらに5月30日のデトロイト・タイガーズ戦では、ついに101.1マイル(約163キロ)を記録。データ分析システム「スタットキャスト」によると、101.1マイルはその年の先発投手のなかでの最速球でした。
ただ、今年はトミー・ジョン手術からの復活を目指すシーズンであるため、マドン監督は登板間隔や球数だけでなく、スピードガンで表示される球速にも細心の注意を払うことでしょう。米国の専門家たちの研究結果によると、肩やひじを痛める最大の要因は「剛速球」だと考えられているからです。
それで思い出すのは、シカゴ・ホワイトソックスの若き剛腕マイケル・コペックです。2018年、大谷投手と同じ年にデビューし、ほぼ同時期の9月にトミー・ジョン手術を受けました。
今年3月にオープン戦で復帰。そこでいきなり100マイル(約161キロ)以上の剛速球を連発しました。しかし、2次キャンプを前に「個人的な事情」により今季出場辞退を決断。ケガの再発かどうかの真相は明らかになっていませんが、こうした事例を考えるとマドン監督は神経を使いそうです。
大谷投手が2度目の紅白戦に登板した時、ストレートの球速は94〜96マイル(約151〜154キロ)でした。それが本番でどれくらいのスピードになっているのか、初登板のピッチングに注目です。
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その剛速球に加えて、注視している球種がもうひとつあります。それはスプリットです。
日本ハム時代の大谷投手は「速球とスライダー」という印象でした。しかし、2018年のメジャーデビュー戦では全92球のうち、速球が40球(全体の43.5%)、スライダーが26球(28.3%)だったのに対し、スプリットは23球(25%)も投げていました。
また、4月8日のアスレチックス戦で7回一死までパーフェクトの快投を演じた時は、その傾向がさらに強まっています。全91球のうち速球は42球(46.2%)で、それに次ぐのがスプリットの34球(37.4%)でした。
アメリカでは「スプリットはひじに負担がかかる」と言われ、多投する投手はあまりいません。スプリットとひじの故障との因果関係は立証されていませんが、それでも、トミー・ジョン手術後にスプリットの割合を減らす投手が少なくないのも事実です。
大谷投手もスプリットの投げ過ぎを指摘されたのか、シーズン途中からスプリットの配分を1割程度に減らしました。一方、それまであまり投げていなかったカーブが全体の1割ほどを占めるようになり、それが結果的に緩急のあるピッチングにつながったようです。
今年の紅白戦の投球データを見ると、3試合合計187球のうち、スプリットはわずか16球(8.6%)。右ひじの故障再発を防ぐため、大谷投手が球種の割合を変えるのかも見どころです。
それら大谷投手の持つ球種を、どのようなリードで組み立てていくのか。バッテリーを組むジェイソン・カストロ捕手の配球も気になります。カストロはメジャー10年目の33歳。若い投手陣の能力を最大限に引き出すため、マドン監督が今年チームに加えた優秀なベテランキャッチャーです。
カストロの一番の特徴はキャッチングの巧さ。関係者の間で「球界屈指のピッチフレーマー」と言われています。ピッチフレーマーとは、球審にストライクゾーンぎりぎりの投球をストライクと判定させる技術です。大谷投手にとっては頼もしい新女房になることでしょう。
開幕前のインタビューで、大谷投手は「ケガなくしっかり出続けるというのが一番大事」と言っていました。たしかに今シーズン、最大の課題は「いかにケガを防ぐか」にあると思います。
そのひとつに、日本ハム時代からたびたび悩まされていた「指のマメ」があります。2018年のメジャー1年目も、2度にわたって中指にマメができて降板しました。また、2018年は腰の張りを訴えたこともありました。
そういう意味では「二刀流復活」を目指す大谷投手にとって、レギュラーシーズン60試合というのは理想的かもしれません。まずはシーズンを通してプレーできること。それが叶えば、結果は自然とついてくるでしょう。