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 インコースを鮮やかに打ち返した時の右バッターのシルエットは美しい。その昔で言えば山内一弘のシュート打ちが有名だが、ナマで観た記憶はない。記憶にあるのは石嶺和彦、落合博満、今岡誠、和田一浩……最近では坂本勇人や山田哲人がインコースをファウルにせず、ヒジを畳んで見事にレフト方向へ打ち返すシーンを何度も見た。



入団3年目の2012年には全試合に出場した広島・堂林翔太

 そんな中、インコースを打ち返すシルエットにひときわ美しい高校生がいた。それが今から11年前、夏の甲子園で全国制覇を成し遂げた中京大中京(愛知)のエースで4番、堂林翔太だった。堂林は決勝で対峙した日本文理のエース、伊藤直輝が投じたインコース低めのストレートを鮮やかに弾き返し、レフトフェンスにダイレクトで届くライナー性のツーベースヒットを放った。このときの堂林のシルエットに衝撃を受けた。力強さとスマートさの同居した、じつに美しいシルエットだった。

 その年の暮れ、名古屋にある中京大中京へ堂林を訪ねた。そして、夏の甲子園の決勝戦で打った、あのインコースのボールについて訊ねると、彼はこう言っていた。

「自分の場合はインコース打ちには自信があります。小学校の時から窮屈でもボールの内側を見て、腕を畳んで叩くことを意識してきたんです。練習していくうちに自然と感覚を掴んで……打つときに、このタイミングでボールとの距離を取れば自分なりにインコースは捌けるという感覚を掴みました。それで腰をうまく回せれば、レフトに大きいのも打てます。

 プロでは、シーズン200安打を目指してやっていきたいと思っています。右バッターでは、まだひとりも達成した人がいないんで……右では完璧な当たりじゃないとなかなかヒットにならないし、それだけ自分の技術を磨いてレベルの高いバッターにならないと、そういう数字には届きませんからね。

 自分はもともとホームランを打つタイプのバッターではないし、とにかく数多くのヒットを積み重ねて、率を残せるバッターになりたい。アウトコースを右中間へホームラン、インコースはレフト線へツーベースを打てる右バッターになりたいんです」

 これ、11年前の堂林の言葉である。

 その後、カープに入団した堂林は『鯉のプリンス』と呼ばれ、期待され続けてきた。

 プロ3年目の2012年には全試合に出場、チーム最多となる14本のホームランを放つ。同時に、エラーが多い、三振も多いという派手なところもファンの心を惹きつけた。何しろ球団史上ワーストとなったシーズン150三振を記録したその年のオフには、球団が『フルスイング!この先に大きな希望がある』と銘打っての”堂林翔太150三振写真展”を開催したほどだ。

すべての三振の写真が集められ、マツダスタジアムのカフェに飾られていたのだが、写真展が行われるだけあって、堂林の空振りはじつに絵になっていた。こんなふうに思わされたのはあの長嶋茂雄さんだけだったと、本気で思ったものだった。

 ただ、その時に気になったことがある。

 それは、三振の写真の中に崩されての空振りがかなりあった、ということだ。堂林の三振には、変化球に崩され、ボール球を振らされ、右手がバットから離れてしまっている空振りがたくさんあったのである。

 そんな違和感が、その後の堂林の苦悩につながっていく。プロ5年目以降、出場試合数は2ケタが続いた。未完の大器のまま、伸び悩む堂林……課題は明らかだった。打ちにいくとき、左足に体重が乗りすぎて、頭が突っ込む。そうすると、ボールになる低めの変化球を振ってしまうのだ。

 その悪癖を治そうとノーステップで打ったり、神主打法を取り入れたり、腕の反動ではなく軸で打てるフォームを身につけようと左腕をゴムチューブで体に巻き付けてティーバッティングに励んだこともあった。それでも結果がついてこない。昨シーズンはついに28試合の出場に止まり、打率も.206と、プロ10年目にして自己ワーストの数字を残してしまった。

 ところが、である。

 約3カ月遅れで始まった今シーズン、ついに未完の大器が覚醒した。6年ぶりの開幕スタメンを勝ち取った堂林は、無観客のスタンドに幾度となく快音を響かせたのだ。開幕2試合目の6月20日、ベイスターズ戦で4安打の固め打ち、6月25日のジャイアンツ戦では1121日ぶりとなるホームランを東京ドームで放つ。レフトの看板を直撃する、特大の一発だった。

 2本目のホームランは6月28日、インコースの難しい球をナゴヤドームのバックスクリーン右へ持っていくという、驚愕のバッティングだ。さらに7月8日、広島で行なわれたベイスターズとの試合では1点を追う8回裏、ワンアウト満塁からセンター、バックスクリーンへ今シーズンの3号となる逆転満塁ホームランを叩き込む。

 そして上限5000人ながらも観客を迎えて試合を行なうようになってからも、堂林は打ちまくった。チームがジャイアンツに3連敗を喫するなか、堂林は右中間へ4号2ランを叩き込むなど、気を吐いた。打率は4割を超え、リーグトップをひた走る。そんな堂林にぜひこの機に話を訊きたいとカープにお願いしたところ、インタビューは意外な形で実現することとなった。

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