現在、メキシコで開催中の「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」。グループBで戦う日本は開幕から4連勝でスーパーラウンド進出を決めた。この4戦のうち3戦で先発マスクをかぶっているのが、プロ1年目、23歳の柿沼友哉(ロッテ)だ。■最大級の…

現在、メキシコで開催中の「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」。グループBで戦う日本は開幕から4連勝でスーパーラウンド進出を決めた。この4戦のうち3戦で先発マスクをかぶっているのが、プロ1年目、23歳の柿沼友哉(ロッテ)だ。

■最大級の褒め言葉は「投げやすい捕手」、投手を気持ちよく投げさせることが信条

 現在、メキシコで開催中の「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」。グループBで戦う日本は開幕から4連勝でスーパーラウンド進出を決めた。この4戦のうち3戦で先発マスクをかぶっているのが、プロ1年目、23歳の柿沼友哉(ロッテ)だ。

 今回代表入りした11投手の中にロッテの選手はいない。「対戦相手として球筋を知っている投手もいますけど…」とは言うものの、バッテリーを組むのは初めての投手ばかり。だが、そんなことを微塵も感じさせない呼吸のよさで、投手陣を盛り立てる。

 準備期間が短い代表戦では「僕よりもピッチャー自身の方が自分の強みや長所が分かっている。基本は投手中心のリード。自分の投げたい球を投げるのが一番いい。その中で僕が気が付いたところは言わせてもらっています」と、投手が気持ちよく投げられるような状況を作っている。投手に限らず、人間は一人として同じ性格や気質ではない。普段からコミュニケーションを重ね、その人となりが分かってくると「いろいろなタイプがいるから面白い」という。

 柿沼にとって最大級の褒め言葉は「投げやすい捕手」と言われることだ。代表では、2戦目に先発した安楽智大(楽天)をはじめ多くの投手が、柿沼に対する“投げやすさ”を認めている。「この短期間で、そう言ってもらえると、本当にうれしいですね」と、素直に喜びを隠さない。もちろん、キャッチングの技術や構え方、あるいは二塁への送球の正確さもあるが、柿沼を“投げやすい捕手”と思わせる最大の理由はその雰囲気のよさにありそうだ。

 試合前練習では常に笑顔。試合開始直前になっても、ニコニコと穏やかな雰囲気で準備を進める。笑うと目がなくなってしまう、文字通りのえびす顔の持ち主。「コーチには“仏様みたいだな”って言われるんですよ」と話す顔も、もちろんえびす顔だ。この雰囲気のよさが、投手の緊張感をほぐし、信頼度を高め、持ち味を十二分に発揮するために一役買っていることは間違いない。

■育成契約から、わずか半年でU-23代表入り「まさか、ですよね」

 もしかしたら、メキシコでは、普段以上に笑顔が多いかもしれない。なぜなら、侍ジャパンのユニフォームに袖を通す自分の姿は、夢にすら描いたことがなかったから。自然と笑みがこぼれてくる。

 昨年10月22日。プロ野球ドラフト会議の会場で、柿沼の名前が呼ばれたのは、育成ドラフトに入った2巡目だった。育成選手として、今季は背番号「122」でシーズンイン。プロの厳しさを肌で感じながらも、支配下選手になることを目標に、ひたすら練習に明け暮れた。

 努力は人を裏切らない。2軍戦で存在感を見せてフレッシュオールスターに選出されると、7月29日には念願の支配下選手に。背番号も2桁の「99」に変更された。そして、今度はU-23代表入り。わずか半年で育成から代表選手に大躍進した。

「まさか、ですよね。今年は上手くいきすぎて、自分でも驚いてます。しかも、代表で先発させてもらえるなんて、まさか、です」

 捕手を始めたのは小学4年生の頃。他のポジションも試したが、やっぱり捕手に落ち着いた。一番喜びを感じるのは、ピッチャーが快投して勝った時。ピッチャーが目立つことが、我がことのようにうれしい。

「自分は目立たなくていいんです。ピッチャーをいかに盛り立てられるかが自分の仕事。もちろん、打って貢献できればいいけど、そこはあまり…(笑)。ピッチャーが気持ちよく投げて勝てた試合は、本当にうれしいです」

 代表戦であれ、ロッテの試合であれ、スポットライトを浴びる投手の笑顔がまた、柿沼の笑顔を生み出している。