『STIコンプリートカー』スバルモータースポーツ活動の技術を結集したモデル廣本泉著(三樹書房)定価:3000円(消費税抜き)ISBN978-4-89522-663-9スバル車のファンというと、一般的には車好きとかマニアというイメージがある。…
『STIコンプリートカー』
スバルモータースポーツ活動の技術を結集したモデル
廣本泉著(三樹書房)
定価:3000円(消費税抜き)
ISBN978-4-89522-663-9
スバル車のファンというと、一般的には車好きとかマニアというイメージがある。そのスバル車ファンの中でも、あこがれつつも購入時に躊躇してしまうモデルがあるとしたら、「STI」エンブレムのついたコンプリートカーモデルだろう。
STIは、スバルのモータースポーツ活動を支援するため、専用車両やパーツの開発を手掛ける会社として設立された。ラリーやレース車両の開発の他、そのベースとなった市販車両に独自のチューニングを施したスペシャルモデルの開発も行っている。そのような車両には「RA」や「STI」「tS」といったサフィックスがモデル名に冠される(インプレッサの「S20x」というシリーズもある)。
そして、STIモデルの多くは(とくに初期モデル)、たとえば、ラインオフの状態で、エアコンなし、窓の「かき氷ハンドル」(パワーウィンドウではない)、遮音板は省略、ラリー向けの車両はグラベルタイヤが装着できるように15インチホイール(のブレーキローター)だったり、それでいて、エンジンの各部はバランスを取った選別品、LSDが機械式、軽量化のおかげで重量税が標準モデルより安くなるなど、なんちゃってスポーツモデルなどとは一線を画すものだ。ここ数年のSTIモデルは、快適装備を省略することはないが、それでもサスペンションまわりはSTIによる独自チューンであり、万人向けには作られていない。
本書は、1989年の「レガシィRSタイプRA」から始まる歴代STIコンプリートカー全6車種33モデルの装備、特徴、カタログ写真、スペックをまとめたものである。著者によるモデルごとの細かい解説と、カタログから転載した走行写真や装備の鮮明なカラー写真は、オーナーも納得の仕上がりとなっている。欲をいえば、市販車の実物、レースやラリーで活躍した競技車両の撮影写真がほしかったが、あくまでSTIコンプリートカーの集大成というこだわりも理解できる。
スバルはこの4月に「レヴォーグ STI Sport」を発表している。これもSTIが開発を手掛けているが、本書には収録されていない(9月発表の「XVハイブリッドtS」は収録されている)。STI Sportは、各車種の最上級グレードにも位置付けられるモデルで、今後は他の車種にも設定される予定があるという。そのため「コンプリートカー」ではないからということで収録しなかったものと思われる。
STIも新しいステップを踏み出したとしたら、その節目の記録としても価値のある一冊ではないだろうか。