男子バレー・龍神NIPPONの要柳田将洋の決意 後編前編:柳田将洋が明かした日本復帰の理由>> 昨年のワールドカップバレーボール(W杯)で、28年ぶりのベスト4という好成績を収めた日本代表。来夏に予定されている東京五輪でのメダル獲得に向…

男子バレー・龍神NIPPONの要
柳田将洋の決意 後編

前編:柳田将洋が明かした日本復帰の理由>>

 昨年のワールドカップバレーボール(W杯)で、28年ぶりのベスト4という好成績を収めた日本代表。来夏に予定されている東京五輪でのメダル獲得に向け、主将・柳田将洋が感じた手応えと課題とは。さらに、20歳の西田有志に続くブレイクが期待される、若手選手の名も挙げた。



男子バレー日本代表で主将を務める柳田

――今年の3月に、東京五輪が延期になったことを聞いた時の気持ちはいかがでしたか?

「その前に、『中止か延期になる』と聞いていたので、ひとまず中止にはならなくてよかったと個人的には思いました。多くのアスリートがそうだと思いますが、東京五輪がなくなってしまうと、目標をどこに置けばいいのかわからなくなりますから。ただ、まだ安心できる状況ではありません。まずは今の危機をどうやって乗り越えていくのかを考え、自覚を持った行動を続けていくことが大事だと思っています」

――延期された1年を、どう過ごそうと考えましたか? 

「来年にオリンピックが開催できたら、そこで周囲の予想以上の結果を出すことが、この1年間を有意義に過ごせたかどうかの証明になる。そのために、(4シーズンぶりに復帰した)サントリーサンバーズでも1日1日を無駄にしないよう練習に取り組んでいます」

――昨年のW杯で28年ぶりに「ベスト4」という成績を残し、ファンの期待も高まっていると思います。それでも、以前お話を伺った際には「満足はしてない」と話していましたが、チームとしてさらに上積みができる部分はどこになるでしょうか。

「これは以前から話していたことではありますが、上位国に対していかにミスなく戦えるか、自分たちと力が同じかそれ以下のチームにどう勝ち続けていくかに尽きると思います。昨年のW杯でも、日本が負けた上位3カ国(ブラジル、ポーランド、アメリカ)との試合では、勝負どころでもったいないミスがありセットを取り切れない場面がありました。

 個の力の底上げが必須であることは選手全員がわかっています。今年の代表合宿の後にそれぞれのチームでさらにレベルアップし、また来年に再会してチーム力を上げたいですね。これまでは、大きな大会に臨む際に誰かがケガをしたり、調子が上がらない選手がいたりということがあったので、ベストな結果を残すためにはコンディション調整も重要だと考えています」

――反対に、チーム力が上がってきたと実感する点はありますか?

「リオオリンピックの予選で敗退し、中垣内祐一監督とフィリップ・ブランコーチの体制になってから今年で4年目。体制が変わればバレーボールのシステムも大きく変わりますから、特に1年目は新しいスタイルに転換することに苦労していた印象があります。体制が変わる前から代表でプレーしている選手が、新しいスタイルに適応するのは簡単なことではない。日本代表の活動期間は1年のうち約半年しかなく、解散した後はそれぞれの所属チームの戦術などに対応するわけですから、なおさら難しいですよね

 それが、やっと代表のメンバーも固定されてきて、スタッフの指示やシステムがスムーズに遂行できるようになってきました。相手の守備を惑わせるためのフェイクセット、ハイブリッドなサーブなど、トレンドもしっかり取り入れながらチームを強化できています。それがW杯の結果(ベスト4)に現れたんだと思います」

――昨年は、ビッグサーバーが柳田さん含めて何人も出てきたと思うんですけれども、サーブ以外の攻撃とかでもっと伸びるかなというところはありますか?

「サイドアウト(相手がサーブ権を持っている時に得点すること)に関しては、レシーブからしっかり組み立てられれば、センター中心にできる実感がありました。トランジション(ラリー中のボールを扱うチームが切り替わる場面)の組み立ても、昨年のW杯でかなり形になってきたと感じます。

 石川(祐希)を中心にフェイクセットなどを展開することで、勢いを呼び込むことができた試合もありましたね。無理に新しいプレーに挑戦するのではなく、いい感触を掴めているプレーの質を高めることを、チーム全体でやっていけたらと思っています」

――自粛前の4月に行なわれた代表合宿などで、柳田選手の印象に残った若手の選手はいますか? 

「高橋藍(日体大1年)や、大塚達宣(早稲田大2年)などは、伸び伸び練習していました。プレーのレベルは、年齢を感じさせないくらい高いですよ。2人とも僕と同じポジションですから、あまり褒めてばかりもいられないんですけどね(笑)」

――高橋選手は、当時のインスタライブで「柳田さんが合流してきたら、チームの雰囲気がグッと変わった」とコメントしていましたが。

「そんなことを言っていたんですか? 僕はドイツから帰国して、自宅での自粛期間を経てから合宿にはさらっと参加した感じなので、ちょっと大げさかなとも思いますが(笑)。彼のように新しい力がどんどん育ってくることは、日本にとっての明るい希望です。

 あとは、そういった選手をどう伸ばしていくのか。プレー面だけでなく、人間としても成長できるように周囲も考えていかないといけない。僕も選手として彼らと接する機会が多くなると思うので、これまでの経験を伝えていきたいですし、逆に彼らからパワーをもらえることもあります。年齢は関係なく、刺激を与え合える関係でありたいと思っています」

――最後に、東京五輪での目標を聞かせてもらえますか?

「目標はメダルを取ること。ずっと前からそれは変わりません。チームの姿勢は目標によって変わると思うので、ブレずに突き進めたらと思います。僕も日本代表のキャプテンとして、チームをまとめることに尽力したいですし、もちろん選手としてもステップアップし続けて大舞台に臨みたいです」