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プロ野球は、公式戦開幕から1カ月が経過した。セ・リーグでは、東京ヤクルトスワローズが一時首位に立つなど、ペナントレースを盛り上げている。昨年最下位だったヤクルトは、高津臣吾監督の下、新スローガン(NEVER STOP 突き進め!)のごとく上位街道を”突き進める”のか。2015年に監督としてヤクルトをリーグ優勝に導いた真中満氏に、ここまでのヤクルトの戦いぶりと今季の展望について、たっぷりと語ってもらった。

活躍を見せるヤクルトの4番・村上宗隆
開幕前、ヤクルトの評価は極めて低く、ほとんどの野球解説者が最下位を予想。その中で、Aクラス入りを展望していた真中満氏は、「僕だけでしたね」と笑みを浮かべながら、その根拠をこう説明した。

好調ヤクルトの戦力を分析する真中満氏(村上庄吾・撮影)
「まず、昨年に比べてチームにどのようなプラスアルファがあるか考えました。ヤクルトは先発陣が課題でしたが、キャンプでアルバート・スアレス(2年目)とガブリエル・イノーア(1年目)を見て、先発投手として機能するイメージがわいたんです。また、昨シーズンはケガに泣かされた石山泰稚も開幕からいけそうな様子でした。2人の外国人投手に加え、石山が万全ならAクラスまでいけるかな、と。
他にも、昨年から若い選手が多く出てきていましたからね。塩見泰隆は開幕後にケガをして2軍調整中ですが、山崎晃大朗はキャンプから調子がよかった。彼らがいい仕事をすれば、上位に食い込むことは十分に可能だと思っていました」
当初、主砲ウラディミール・バレンティンの移籍によって生じた「4番の穴」を不安視する声は多かった。しかし、真中氏は「打線は他球団に引けを取らないので、得点力は心配していません」と話す。
「『4番の穴』という発想はなかったです。バレンティンの守備力が、投手に与える影響なども大きかったですからね。僕のイメージでは、若くて動きのいい選手たちを積極的に起用し、新しいチーム作りや本塁打に頼らない戦い方を身につけていく方がいいと思っていました」
ヤクルトは7月21日までに26試合を消化。14勝10敗2分で首位巨人に3.0ゲーム差の2位。チーム打率は.261でリーグ4位ながら、チーム得点は128点で2位となっている。
「今のところ打線がつながっていますよね。山田哲人、青木宣親、村上宗隆の軸がしっかりしていて、さらに西浦直亨と山崎がしっかり仕事をしています。2人が5番、6番で活躍することで打線が安定している。そして、何よりも1番の坂口智隆がよく機能していることが大きいです」
高津監督はキャンプ時から「1番は坂口でいく」と明言。出塁率は.422と高く、四球の数は21個でリーグ1位となっている。
「僕としても坂口は頑張ってほしい選手。36歳という年齢的にシーズン通してはどうかなと、少し不安はあるのですが、本当にいいスタートが切れました。高津監督の期待に十分に応えていると思います。彼が出塁すれば、山田、青木、村上と続いていくわけですから、それは得点力が上がりますよね」
開幕から4番を任された村上は、7月21日時点で本塁打こそ3本にとどまっているが、打率.379(リーグ2位)、打点29(同1位)と期待値以上の活躍をみせている。
「去年、ホームランを36本打ちましたし、誰がみても4番は村上だと思います。しかし、まだプロ3年目の20歳の選手なので、その点にやや心配はありましたがまったくの杞憂(きゆう)でした。強い存在感が出てきましたし、去年の経験を生かしていろいろ試せていると思います。ただし、まだシーズンは始まったばかりなので、どこが進化したかは、シーズンが終わってから話しましょう(笑)」
一方で攻撃的打順の目玉として期待された2番・山田哲人。疲労により3試合連続で欠場するなど、調子が上がらない。
「山田は1番でも3番でも、今の2番でも変わらないので、打順の影響はないと思います。調整が遅れているようにも見えませんし、開幕からホームランも打っています。シーズン通して、ある程度の数字を出してくれる選手です。今は波に乗れていませんが、チームが苦しくなったときに力を発揮してくれたらいいんじゃないですかね」
ベテラン・青木の存在は今年も頼もしい。休養日でも代打で出れば、ひと振りで試合の流れを変える。
「山田も村上もまだ若い選手ですからね。青木がいることによって、プレーだけに限らずメンタル的な支えにもなっていますよね」
ディフェンス面では、高津監督が就任時から言い続けている「取れるアウトを確実に取る」という考えがチームに浸透。昨年散見された守備のミスから失点を重ねて試合が壊れるような場面はなく、併殺を完遂させた数はリーグトップとなっている。
「内野手を固定できていることが大きいです。昨年は、セカンドは山田で固定でしたが、ショートはレギュラーがわからない状態が続き、サードも最初は村上でしたけど途中でファーストに回りました。今季は、ショートに新外国人選手のアルシデス・エスコバーが入ったことで、山田とのセンターラインがうまくハマっています。村上がサードをしっかり守れていることも大きいですね。
エスコバーはメジャーリーグでゴールドグラブ賞を獲得するほど選手なのでしっかり守れます。加えて、西浦が頑張っていることで『俺も安泰ではないな』とエスコバーにとっていい刺激になっているようにみえます。ファースト、ショート、サードについては、村上以外の選手は調子が悪くなれば替えられてしまう可能性がある。いい意味でライバル争いし、相乗効果を生んでいますね」
投手陣を見てみると、今年も苦しい状況は続いている。チーム防御率4.56はリーグ4位。先発投手がクオリティ・スタートを達成したのは9試合と厳しい数字となり、開幕投手を任された石川雅規は上半身のコンディション不良で登録抹消となっている。
「今年に関しては、開幕が3カ月遅れたことが影響しているのか、他の球団も投手の調子が上がりきらない。先発投手になかなか勝ちがつかないと言われていますが、僕は数字はあまり気にしていません。ヤクルト投手陣の内容はいいと思っていますよ。先発が早めにマウンドを降りることが多いですが、他球団と比べたら、ヤクルトのブルペン陣はよく抑えています」
ヤクルト救援陣は、ホールド数をリーグダントツの33個稼いでいる。貴重な働きをしているのが、清水昇(2年目)と寺島成輝(4年目)の2人。先発投手と期待され、ドラフト1位で入団した投手たちだ。プロ入り後、結果が残せずに苦しんでいたが、その才能が今、花開こうとしている。清水は11イニング連続無失点を記録し、寺島も安定感をみせ、念願のプロ初勝利も飾った。
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「清水、寺島ともに打者に向かっていけるようになった印象です。最近は勝ちゲームでも投げますが、場面問わずとても落ち着いている。寺島は僕が(監督時代に)見ていた時よりも球速が10キロくらい速くなっていますよ。結果を出すことで先発に回ることもあるでしょうし、将来が楽しみな投手になってきました」
さて、もうすぐ8月に入ろうとしているが、コロナ禍の影響で開幕が遅れ、シーズンはまだ始まったばかり。これから長く続いていくリーグ戦の中で、真中氏はヤクルトのキープレーヤーを誰と考えているのだろうか。
「野手では、やっぱり村上です。正直、20歳の選手に4番の重圧をかけるのは酷かと思いますが、村上ならやってくれそうです。ベンチでも大きな声を出すなど、これまでと比べて立ち振る舞いが全然違います。一皮むけたというのか、チームメートと一緒に戦っているというのが伝わってくる。野球を純粋に楽しんでいるように見える。すべてにおいて前向きに取り組むことで、いい方向に向かっています。期待したいです。
投手は小川泰弘ですね。ここまで4勝していて、ピッチング内容も悪くありません。ただ、僕からすればもどかしいというか。もっともっと数字を残せるピッチャーなんですよ。さらに力を発揮してほしいですね」
カギを握るという点では、2軍に期待値無限大の新人投手・奥川恭伸がいる。短いイニングではあるが、イースタン・リーグで好投している。
「みなさん『早く、早く』と大きく期待していて、僕もテレビで『そろそろ』とかコメントしています(笑)。しかし、まだ2軍で1試合の短いイニングしか投げていませんから、9月までは1軍で投げないでしょうね。奥川はチームが優勝争いに残った時の隠し玉というか、まあ全く隠れてないんですけど。チームに最後のふんばりが必要な時に出てきてくれたらおもしろいです。まあ僕としては、やはり小川がキーといいますか、小川に頑張ってほしいですね」
ヤクルトが前評判を覆すような好調ぶりを見せているセ・リーグ。まだシーズンは序盤だが、ここまでの各チームの試合を見て、真中氏は今季のペナントレースはどう進んでいくと予想しているのだろうか。
「正直、一つのチームが突っ走ることはないと思っています。団子状態が続き、優勝チームが終盤まで見えない戦いになるんじゃないでしょうか。ヤクルトは、勝てる試合を取りこぼさないことです。そうすれば結果として優勝がみえてくる。そこがいちばん大事だと思います」