日本最高峰のトップリーグは10月30日までに前半節が終了した。開幕9連勝のサントリーで司令塔のSOを務めたのが、小野晃征。昨秋のワールドカップイングランド大会でも、3試合で日本代表の背番号10をつけた。

 3歳半から過ごしたニュージーランドでラグビーに親しんだ身長171センチ、体重83キロの29歳は、戦術理解度と判断力を持ち味とする。無形の力でゲームを動かす。

 10月30日、東京・駒沢陸上競技場。クボタとの第9節を38-0と制した。仲間が突破するやその周りに素早く攻撃網を敷き、細かくパスをつなぐ。左右にボールが動いて相手防御がせり上がると見て、シャープな弾道のキックを放つ。状況を見る目や仲間の声を聞く耳も活用し、堅実にタクトを振った。

 攻撃的ラグビーを標榜するクラブの顔として、プレーをこう解説した。

「バックスペースが埋まっている時は(目の前の)ディフェンスが足りなくなっているというのがわかるし、(目の前の)ディフェンスが多い時はラックサイドか後ろが空くと判断…。常に皆が立ってプレーして、9番、10番(攻撃の起点となるSHとSO)にオプションを与えている。特に今年は、『これ』だけに頼るというよりも、全ての場所にボールを展開するというアタッキングラグビーを目指していきたい」

 グラウンド外では、日本ラグビー選手会の主要メンバーとして奔走。特に選手の試合出場数の管理や怪我の補償に関し、第二の母国たるニュージーランド並みの環境を作りたいと願う。「ニュージーランドには、いま着ているジャージィをよりよくして次に…という考えがある」。引退後は妻のいるニュージーランドへ戻るつもりだ。しかしいまは、20歳からプロ選手として活動する日本へ「よりよいジャージィ」を置いていきたいという。

 その延長線上か。今秋、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)率いる日本代表へは参加を辞退した。候補選手による短期合宿は第1回(10月9~11日)こそ参加も、第2回(23~25日)は不参加。本人は言葉を濁すが、トップリーグのシーズン中にいくつかの怪我を負っていたという。守備時は、故障個所への負担を軽減するようなポジショニングを取っているらしい。熟慮の末、11月は怪我を完治させることにした。

「自分のなかで、今回はリフレッシュをする、と。いまのメンタルの感じではテストマッチではプレーできない。もう1回、自分がピッチに立って活躍したいという気持ちを持てるように。そうではないと、いまの代表にとってもプラスにならない」
 
 代表入りを断ったのは、代表のジャージィを着る責任を理解すればこそ。不安定な精神状態で定位置争いに参加することは、いつか完全に手離すであろう10番のジャージィに失礼だ。きっとそんな考えから、リスクを承知で休息を選んだ。

「今回は家族のこともあって…。ジェイミーにはぎりぎりまで(決断を)待ってもらって、感謝しています。まず、サントリーで活躍する。この先でチャンスがあれば、また(代表で)プレーしたいです。去年ワールドカップを戦った選手とメッセージのやりとりはするだろうし、遠いところから応援したい」

 薫田真広・男子15人制ディレクター・オブ・ラグビーは10月31日、辞退者に関して「選ばなかった選手は、もうないと思っている。(復帰をさせるかは)パフォーマンスを観る」と発言。もっともニュージーランド出身のジョセフHCとラグビーのルーツが同じ小野は、この先のナショナルチームの底上げには不可欠な存在だろう。
(文:向 風見也)