> レッドブル・リンクでの2週連続の惨敗から4日。2020年の第3戦はハンガリーのハンガロリンクで行なわれる。 ハンガロリンクは昨年、レッドブル・ホンダが初のポールポジションを獲得したサーキット。ストレートが短いことから、パワーの差はそ…

 レッドブル・リンクでの2週連続の惨敗から4日。2020年の第3戦はハンガリーのハンガロリンクで行なわれる。

 ハンガロリンクは昨年、レッドブル・ホンダが初のポールポジションを獲得したサーキット。ストレートが短いことから、パワーの差はそれほど重要にはならない。



慎重な姿勢を崩さないフェルスタッペン

 それだけに、メルセデスAMGに圧倒的な差を見せつけられた今年のレッドブル・ホンダも、このハンガロリンクでは一矢報いることが可能なのではないか、という期待が渦巻いている。

 しかし、それを期待すべきではないかもしれない。マックス・フェルスタッペンは語る。

「チャンスがあることは事実だけど、現実的でなければならないとも思う。今のメルセデスAMGは圧倒的だし、どこのサーキットでも僕らより速いと思う。もちろん僕は全力を尽くすけど、彼らを打ち負かすのはかなり厳しいと思う」

 得意なはずのハンガロリンクでもレースをする前からそう言わざるを得ないほど、先週のシュタイアーマルクGPで見せつけられたメルセデスAMGとの差は圧倒的なものだった。

 レッドブルRB16は、低速コーナーでは速さを見せることができた。だが、ストレートと高速コーナーではメルセデスAMGのほうが速かった。

 レッドブルが苦しんでいたのは、マシン挙動の不安定さである。挙動が突然変化するために予測ができず、マシンを信頼してプッシュすることができない。

 開幕戦では極端にその傾向が見て取れ、第2戦ではダウンフォースをつけることによって改善したものの、その代償としてストレートでの速さを失うことになった。

 そして、なによりショッキングだったのは、そのマシン挙動の安定性という点において、メルセデスAMGが圧倒していたことだ。

「僕らが低速コーナーで速いのは、ポジティブな要素だ。でも、高速コーナーではメルセデスAMGがすごく強力。彼らの車載カメラの映像を見るとすごく安定していて、挙動が予測しやすそうだった。僕らも第2戦ではかなりよくなったとはいえ、彼らはもっと上を行っていると言わざるを得ない。

 彼らはマシンを信頼してプッシュできるし、しっかりと安定している。それは1周のラップタイムだけでなく、(決勝での)タイヤライフにも影響する。その点においても、彼らはかなり突出している」

 メルセデスAMGのほうがマシン挙動の安定性で圧倒していたことについて、チームメイトのアレクサンダー・アルボンも賛同する。

 アルボンに至っては、第2戦より開幕戦のほうが気持ちよく走れる状態だったと言う。それは新型ノーズを使いこなせていないことと合わせて、RB16の性能を引き出しきれないレッドブルの苦戦を物語っている。

 リアの新型翼端板スリットは2台ともに採用し、それなりに効果を発揮した。だが、レース途中で2台ともにスリットが折れて飛散し、いずれも4本のうち1本しか残っていなかった。

「投入したアップデートはきちんと機能してくれた。だけど、先週はウエットコンディションだったからあまり走行時間がなくて、その速さを引き出すためには、もう少し時間が必要だ」

 もちろん、ホンダのパワーユニットがパワーでメルセデスAMGを圧倒していれば、ダウンフォースを多めにつけても直線で負けることはなかったかもしれない。

 しかし、現行規定7年目を迎えたパワーユニットで他社に大きな差をつけるのは、理論的に言って非常に難しい。そしてなにより、今季はシーズン中の主要コンポーネントのアップグレードができない以上、出力の向上は難しい。

 つまり、現状のパワー勢力図のままで戦わなければならない、ということだ。

「なかなか難しい結果でした。今回に向けてできることは何か……チーム側も我々も考えていますし、マシンパッケージとしてパフォーマンスを最大限に絞り出して戦いたいと思っています」

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語るが、一朝一夕にマシンを改良することは実質的に不可能だ。手もとにあるパッケージの性能をフルに絞り出すことくらいしかできないのも事実。

 かつては低速サーキットと呼ばれたハンガロリンクだが、今のF1マシンのコーナリング性能を持ってすれば、曲がりくねったセクター2も中高速コーナーの連続であり、レッドブルRB16が得意とする低速コーナーだけでなく、メルセデスAMGが得意とする中高速コーナーも数多く存在することになる。

 だからこそ、昨年好走したハンガロリンクに来たからといって、無条件で好成績を期待することはできない。フェルスタッペンをはじめ、レッドブル陣営が慎重なのはそういうことだ。

「レッドブル・リンクはパワーサーキットだけど、ここはストレートが短くて去年もポールポジションを獲得し、決勝では2位になっている。だからいいレースを期待してしまうのもわかるけど、僕はそういうふうに仮定の話を考えたくない。まずはフリー走行で走って、マシンバランスを最大限にうまくセットアップしていくことだけに集中したい」(フェルスタッペン)

 レッドブルもマシンの開発やセットアップの熟成を進めることで、やがてメルセデスAMGに追いついていくだろう。

 しかし、開幕から11週間で3回の3連戦を行なう超過密スケジュールのなかでは、あっという間にシーズンが進んでしまう。ライバルとの戦いであると当時に、自分との戦い、そして時間との戦いでもある。

 ハンガロリンクでどんな成績を挙げることができるか、それはマシンのパフォーマンスにもよるし、予報されている雨を味方につけられるか否かによっても違ってくるだろう。

 ただ、それよりも大切なのは、目先の結果に一喜一憂することなく、もっと先の目標に向かって1日でも早くそこに辿り着くため、努力し続けることだろう。