リオで日の丸を胸に勇敢に戦った副島亀里ララボウ ラティアナラ(33歳)が、新たな夢の舞台で確かな第一歩を踏み出した。日本人女性と結婚して2009年に来日し、道路工事の現場などで働きながらアマチュアのクラブチームで楕円球を追い、セブンズで脚光を浴びたフィジアン。今夏のオリンピックでの活躍が認められてトップリーグ開幕直前にコカ・コーラレッドスパークスに加入し、10月29日、福岡・レベルファイブスタジアムでおこなわれたヤマハ発動機ジュビロ戦で念願のデビューを果たした。

「2年ぶりの15人制の試合だったんですけど、すごく楽しく試合ができました」

 後半21分だった。スコアは6-38で、敗戦ムードが濃厚だったコカ・コーラだが、赤いジャージーの23番をつけた副島がグラウンドに足を踏み入れると、スタンドからこの日一番の歓声が上がった。

「この試合のメンバー入りを告げられたとき、泣きそうになりました。チャンスをもらえたことに感謝して、一生懸命プレーしようと思ってました。試合に集中していたので、観客の声はあまり聞こえなかった。少し緊張感もあったからかな」

 チームのために、自分の仕事を忠実にやろうと決めていた。舞台に立った副島は、途中出場してわずか1分後、味方の選手が長く蹴ったボールをチェイスし、処理しようとした相手選手にプレッシャーをかけてキックチャージ、こぼれ球を拾った仲間のFB川口皓平からパスをもらうと、ゴールへ運んでデビュー戦初トライを挙げたのだ。
「みんなの働きがあったからこそのトライです」
 照れくさそうに、ちょっとだけ笑った。

 実はこの試合、普段は離れて暮らしている母親も観戦に来ていた。イスラエルに用事があり、その帰り道のトランジットで日本に寄ったため、幸運なことに息子のデビュー戦を観ることができたのだ。
「まったくの偶然です。タイミングがすごく良かった。とてもラッキー。ママとは試合後に少し話す時間があって、『おめでとう』と言ってくれました。レッドスパークスの仲間も『なんかモッテルね』と言ってくれたよ(笑)」

 ギャムの愛称で親しまれるこの好漢。後半25分にもゴール右隅に飛び込んだ。その前にスローフォワードがあって2本目のトライとはならなかったが、コカ・コーラのXファクターになれる力を秘めていると感じさせた。
「リザーブとしてのインパクトは十分発揮してくれた」と臼井章広監督。「彼の、外側でトイメンを抜くスピードはトップリーグで十分通用すると、改めて確認することができた。今後も彼がそういったシーンを作ってくれて、我々がグラウンドいっぱい使ってアタックできるように、ひとつのオプションになったと思う」と評価した。

 ヤマハに大敗して1勝8敗となってしまったコカ・コーラだが、残り6試合へ向けて、ファイティングスピリッツは衰えていない。

 12月からはワールドラグビーセブンズシリーズも始まるが、副島はいまのところ、セブンズについては何も考えていないと言う。
「コカ・コーラに集中したい。自分が与えられた仕事をしっかりこなして、チームのためになることを考えています。きょうは20分間という短い出場時間だったけど、自分がやったプレーがコーチングスタッフにアピールになったと思う。でも、次の試合に出たいという焦る気持ちはなくて、自分がやらなければいけないことをしっかりやるだけです」

 33歳のオールドルーキー。日本最高峰リーグで、ビッグチャレンジは始まったばかりだ。

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