幾度となく立ちはだかる壁を越える背中はたくましいー。自身の夢と、私たちの“思い”を背負い、東京の地で躍動する。昨年のNH…
幾度となく立ちはだかる壁を越える背中はたくましいー。自身の夢と、私たちの“思い”を背負い、東京の地で躍動する。
昨年のNHK杯兼日本代表選手権大会で東京五輪の座を勝ち取ったのは、カヌースラロームカヤックの足立和也。
前編(https://sportsbull.jp/p/774211/)では、足立が選んだ壮絶な道や、コロナ禍での影響を紹介した。
カヌースラローム男子カヤックの決勝が行われる2021年7月31日までは約1年。
後編では、延期となった東京五輪への思いや、さらにその先の“ビジョン”など足立和也の「未来」に迫った。
「ようやく水上でのトレーニングができるようになった」。
新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が5月25日に解除されてからは、水上での練習を再開。自粛期間の遅れを取り戻すために、午前と午後で各2時間みっちり鍛錬している。家に帰ると「ヘトヘトで一歩も外に出たくない」というほど追い込んでいるが、「やっぱり、水上での練習は楽しい」と白い歯を見せた。
カヌー競技が大好きだからこそ、試行錯誤しながらも自分自身を信じて世界と戦えるまでの実力を身に付けた。

■■■五輪金メダルは通過点■■■
現在は1年後に向けて、技術の習得に尽力する足立。舞台となる 東京都江戸川区の五輪本番コース「カヌー・スロラームセンター」を想定し、“勝てる”レースを展開できるよう日々の練習に汗を流すが、「東京五輪が終わりではない。次のパリ五輪も見据えている」。五輪金メダル獲得は幼少期からの大きな夢で1番の目標でありつつも、「あくまでも通過点の一つ」と言い張る。
カヌーは、経験を積めば積むほど速くなると言われる競技で、30代半ばでトップになる選手もいる。そのため、現在29歳の足立からすれば、まだまだ伸びる可能性は高い。毎年、昨年と比べて“今”の方が速く、昨年の方が速かったとなる瞬間が訪れるまでは続けるという。息が長い競技である分、ゴールは全く見えていないので「これ以上伸びないと感じた時に辞める」とし、「上手くなり続けるのであれば、続けていく」と強調した。
「限界に達するまでは絶対にやってやろう」。己の可能性を信じ、止まらない進化と飽くなき探究心が足立の原動力となっている。

■■■最高の景色は敢えて想像しない■■■
「最高の景色を見ることへの欲望は世界の誰よりもある」。五輪の舞台で表彰台の頂に到達するために、競技を続けているといっても過言ではない。レース展開や順位がどのような形になるかは正直やってみないと分からないけれど、「勝つ自信はある」と足立。
しかし、歓喜のイメージは全くしていないという。「勝利後や快挙の達成後は想像した以上のものを見せてくれる」。アジア大会での優勝や国際大会でメダルを獲得した時も「僕の想像をはるかに超えた景色が目下に広がった」と振り返り、「その同じ景色をいつも応援してくれている方々と共有したい」と話す。最高のパフォーマンスをすることが1番の恩返しだと考えているようだ。

■■■本気で夢を叶えたい子どもたちへ■■■
「本気で夢を叶えたいならば、諦めないで前を向いて頑張り続けてほしい」。環境面や金銭的において、ハンデを背負った状況下でも「やり方やアイディア次第で何とでもなる」と誇張した。それぞれの成し遂げたい夢や理想の姿は誰にでもあると思うけれど、現実的に難しいと自覚して諦める人はいる。ただ、そこで立ち止まるのはなくて、競技にかける思いが誰にも負けないというのであれば、「もちろん、これまで以上に大変な道にはなるけれど、一直線に突き進むべき」とエールを送った。足立自身も何も無いところから今のスタイルを確立した。「今後も、今用意されている道の全てが正解ではないことを結果で証明していく」。足立の挑戦は、始まったばかり。まだ見えないゴールに向けて、今日も全身全霊でパドルを漕ぎ続ける。
取材・文/山本未来王
●前編はこちら https://sportsbull.jp/p/774211/
プロフィール
あだちかずや/カヌー日本代表。1990年10月生まれ。神奈川県出身。3歳でカヌーを初経験。世代別日本代表選手権に選出される。日本選手権3連覇。2014年、アジア大会優勝。16年、日本人で初となるワールドカップ決勝進出。19年NHK杯兼日本代表選手権大会で4位入賞し、東京五輪代表選手に内定した。5月11日に自身のYouTubeチャンネル「足立和也の『東京五輪へ真っ直ぐ!』」を開設した。