「やっぱり祝賀行事はないのか」そんな風に私が溜息をついていたのは火曜日、6月中旬から再開して以降、連日ノンストップで続いていたリーガ戦が最後の2節は開催時刻統一となるため、ようやく途切れた午後のことでした。いやあ、先週末は土曜にマドリッドの…
「やっぱり祝賀行事はないのか」そんな風に私が溜息をついていたのは火曜日、6月中旬から再開して以降、連日ノンストップで続いていたリーガ戦が最後の2節は開催時刻統一となるため、ようやく途切れた午後のことでした。いやあ、先週末は土曜にマドリッドの2部の弟分、フエンラブラダに予想外の敗戦を喫したため、翌日、3位のサラゴサがオビエドに負けるまで待たなければならなかったとはいえ、カディスが昇格一番乗りを達成。さすがに15年ぶりの1部復帰とあって、未だに新型コロナウィルス流行の影響で自粛モードが続く中、カディス(スペイン南西部のビーチリゾート都市)市内に大勢のファンが集まって、大騒ぎしていたのがマズかったんですかね。
おかげでこの木曜の37節、バルサがすでに残留が確定しているリラックスムードのオサスナに勝っても、日曜の最終節まで持ち越されるのはマドリーがビジャレアルと引き分けか負けた時のみという、かなりリーガ優勝決定の可能性が高まった今、いえ、最初にシベレス(レアル・マドリーが優勝した時にお祝いに行く広場)でのイベントを企画したいと言っていたのは当のマドリッド市長だったんですけどね。火曜には一変、「バルコニーから、レアル・マドリーの旗と拍手で祝ってほしい。De verdad, que no se acerquen a Cibeles/デ・ベルダッド、ケ・ノー・セ・アセルケン・ア・シベレス(本当にシベレスには近づかないように)」とファンに嘆願する破目に。
実際、近年はシベレスにステージを設置、最後は女神像にbandera(バンデラ/旗)やbufanda(ブファンダ/マフラー)をキャプテンたちが巻いた後、サンティアゴ・ベルナベウでのメガフィエスタというのが定番だったクラブも何せ、後者は来季が9月に始まるまで、簡単には元に戻せない大規模改装工事中でもありますからね。昨季はCL連覇も途切れ、リーガに至っては3年ぶりの優勝となるため、祝う気満々のファンが何万人と詰めかけるのを心配したか、「nuestros jugadores no acudirían a los tradicionales lugares de celebración, especialmente a la plaza de Cibeles/ヌエストロス・フガドーレス・ノー・アクディリアン・ア・ロス・トラディソナレス・ルガーレス・デ・セレブラシオン、エスペシアルメンテ・ア・ラ・プラサ・デ・シベレス(我々の選手たちは伝統的な祝勝行事開催ポイント、とりわけシベレス広場には行かない)」とオフィシャル・ウェブに公式声明(https://bit.ly/2OoMhT5)を出して警告。
とはいえ、クラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)に勝ったぐらいでもシベレスへ行くファンは常にいますし、いくら周辺の警備を厳重にしたとて、人が集まらないことはないんじゃないかと思いますが、さて。加えて木曜の試合はバルデベバス(バラハス空港の近く)にあるエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノでのホームゲームとなれば、敷地内に入れないのはわかっていても、野っ原の中にある周辺の路上で選手たちの出待ちを兼ねて、盛り上がろうというサポーターが大量に現れても不思議じゃあありませんって。
ま、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合の話もしていかないと。実は前節、一足早く目的を達したチームもあって、それはお隣さんのアトレティコ。でもねえ、土曜の36節ではワンダ・メトロポリターノにベティスを迎えた彼らだったんですが、相手はようやく残留が確定し、ペジェグリーニ監督招聘の発表で、すでに意識が来季の巻き返しに向いていたにも関わらず、すんなり片付かないんですから、これは彼らの宿命と言っていい?
というのも前半20分、コレアがゴールを決めたものの、VAR(ビデオ審判)により、事前にマルコス・ジョレンテにハンドがあったとして認められず。36分にもコケが絶妙のスルーパスを送り、モラタが技ありvaselina(バセリーナ/ループシュート)でフィニッシュしながら、VARでほんの数ミリのオフサイドが発覚して、こちらもスコアに挙がらないんですよ。おまけに前半のうちにトリッピアーが腹痛でアリアスと交代したのはともかく、シメオネ監督が後半8分、勝負を懸けて、サウール、ジョレンテ、モラタをジエゴ・コスタ、カラスコ、ビトロへトリプルチェンジした直後、CBのエルモーソがローレンへのタックルでレッドカードって、何てまあ、間が悪いんでしょう!
実際、それについては当のシメオネ監督も「後半、退場者が出た時間が早くて、残り40分近くあったし、選手たちの疲労も溜まっていた。Se me pone la piel de gallina explicándolo/セ・メ・ポネ・ラ・ピエル・デ・ガジーナ・エクスプリカンドロ(説明しているだけで鳥肌が立つね)」と言っていた程で、コレアを下げ、フェリペ投入で守備体制を整えた彼らは、唯一の武器を使えるチャンスを辛抱強く待つことに。もちろんそれは人数的不利があまり関係ないセットプレーで28分、カラスコが蹴ったFKをコスタがヘッドしたところ…。
ていうか、「Si remato bien creo que va fuera, pero el cabezazo es mordido.../シー・レマト・ビエン・クレオ・ケ・バ・フエラ、ペロ・エル・カベサソ・エス・モルディードー(しっかり撃っていたら外れていたと思うけど、完璧なヘッドじゃなかった)」と本人も告白していた通り、頭なんだか、肩なんだか、胸なんだか、腕なんだか、映像でもはっきりしない部分で叩きつけたボールがGKダニ・マルティンを破っただけでなく、VAR裁定もクリアして、とうとう先制点となってくれるとは!その後はロスタイムのベティスのシュートもGKオブラクが難なく捌き、アトレティコは1-0で勝利。勝ち点3ゲットでとうとう、マストのCL出場圏順位確定が叶いましたっけ。
いやあ、度重なる逆境にもめげず、選手たちが目標を達成してくれたことに対して、シメオネ監督は「en el campo no hay gente, pero sí está el alma de ellos y apareció todo eso que tiene el Wanda Metropolitano/エン・エル・カンポ・ノー・アイ・ヘンテ、ペロ・シー・エスタ・エル・アルマ・デ・エジョス・イ・アパレシオ・トードー・エソ・ケ・ティエネ・エル・ワンダ・メトロポリターノ(スタジアムに人はいなくても、彼らの魂はあって、そういうワンダ・メトロポリターノが持っているものが現れた)」とやっぱり、コロナ警戒事態によるparon(パロン/リーガの中断期間)中、下手したら、シーズン打ち切りになって、6位で終わっていたかもしれないという心労もあったんでしょうか。どこか、スピリチュアルな話になっていましたが、TVで試合中継を最後まで見ていたファンはロッカールームに引き上げる際のロディの行動にも感動。
ええ、彼はベティスのエメルソンと話しながら歩いていたんですが、ピッチ入り口前の地面に描かれているクラブの紋章を迂回するよう、さり気に同胞を誘導(https://bit.ly/3fuCrLd)。入団1年目のロディまでが、クラブのレジェンドであり、2008年のユーロ優勝でスペイン代表の黄金期の礎を築いた、今は亡きルイス・アラゴネス監督の名言、「El escudo del Atlético de Madrid nunca se pisa/エル・エスクード・デル・アトレティコ・デ・マドリッド・ヌンカ・セ・ピサ(アトレティコの紋章を決して踏んではいけない)」を忠実に実践している辺りがツボに入ったのかと。
まあ、そんな彼らは日月と2連休を取った後、木曜一斉午後9時(日本時間翌午前4時)キックオフの試合ではコリセウム・アルフォンソ・ペレスで兄弟分ダービーとなるんですが、日曜にはセビージャもマジョルカに勝ったため、勝ち点で並んだまま、3位の座を確定させることはできず。いやまあ、3位でも4位でもCLグループリーグに直接参加できるんですが、ここ8年連続でチームをCL出場に導いているシメオネ監督は常に3位以上で終わっていますからね。2試合の出場停止処分を受けたエルモーソはもう今季は出られないものの、何せヘタフェの方は中断期間中、ずっと5位と兄貴分の上に立ちながら、再開後はと1勝5分け3敗と絶不調に突入。
月曜のアラベス戦でも前節、ビジャレアル戦でtangana(タンガナ/小競り合い)に参加したエチェイタ(3試合)、ダミアン(2試合)、ニヨム(1試合)、更に累積警告のアンヘルの出場停止が響き、カンテラーノ(ベタフェBの選手)、ウーゴ・ドゥーロの2試合連続かと思われたゴールもVARでマタがハンドを取られ、得点にならずとはツイていない。せっかく日曜にはブタルケでGKクエジェルがパレホのPKを止め、ルーベン・ペレスの先制PKゴールを守って、バレンシアに1-0で勝ち、アラベスと勝ち点差3まで詰めていたお隣さん、レガネスの援護射撃もできずにスコアレスドローで終わったため、まだEL出場も確定できていないですからね。そんなボルダラス監督のチームの希望を砕かず、尚且つ、レアル・ソシエダと対戦するセビージャに抜かされない結果になってくれればと。
何にせよ、こちらは高みでの贅沢な悩みと言ってもいいんですが、やはり絶望的なのは19位のレガネスで、だってえ、16、17位のセルタ、アラベスは勝ち点差4と、あと2試合で追い抜ける可能性はあるものの、間の18位にはマジョルカもいるんですよ。バレンシア戦では、エスパニョール戦で貴重な決勝ゴールを挙げたジョナタン・シルバが退場と、木曜のアスレティック戦なんて、更に得点源が減っている状況ですが、こう悪循環ばかりではねえ。アギーレ監督は「No esperamos nada de nadie. Nuestro objetivo es ganar los dos partidos y esperar/ノー・エスペラモス・ナーダ・デ・ナディエ。ヌエストロ・オブヘティボ・エス・ガナール・ロス・ドス・パルティードス・イ・エスペラル(誰にも何も期待しない。ウチの目標は2連勝して待つことだ)」と言っていましたが、せめて日曜の最終節ではすでに優勝を決定したマドリーをブタルケに迎えられるといいのですが。
え、私がそんなことを言うのは月曜にグラナダ戦に挑んだマドリーが前半8分にはメンディが、10分にはベンゼマが今季リーガ19本目、現在最多のメッシまであと3本と迫るゴールでチームの2点目を挙げた後、「En lugar de ir a matar el partido buscando el 0-3 nos relajamos/エン・ルガール・デ・イル・ア・マタール・エル・パルティードー・ブスカンドー・エル・セロ・トレス・ノス・レラハモス(0-3にして試合に決着をつけにいく代わりにボクらはリラックスしてしまった)」(セルヒオ・ラモス)という状態になったからなのかって?
そうですね、もちろんこの連戦日程をこなした後ですから、どのチームも疲れが溜まっているんだと思いますが、後半4分にカセミロがカルロス・フェルナンデスにボールを奪われ、エレラからラストパスを受けたマチスが1点を返したグラナダは終盤、まさに追いつかんばかりの勢いでしたからね。おかげでロスタイムなど、GKクルトワがゴールキックで時間稼ぎして、イエローカードをもらったりしていたんですが、それでも1-2で逃げ切れるのですから、しっかりしているじゃないですか。苦しい試合もあったとはいえ、リーガ再開後、9戦9勝しているとなれば、アトレティコと同じ6勝3分けのバルサが2連覇中だったリーガの王座を譲る破目になってもまったく、文句は言えないかと。
何せ、丁度、木曜の相手、ビジャレアルはセビージャ勝利と自身のレアル・ソシエダ戦での負けが重なり、CL出場権獲得の望みが消滅、その一方でEL出場権は確定とある意味、詰みの状態ですからね。となると、マドリーが勝つのも決して難しくはないかと思いますが、果たして結果は如何に。ちなみにカディスの昇格決定の後、やはり結末が近づいている2部の41節は金曜午後9時から一斉にスタート。直接昇格2番手には岡崎慎司選手のいるウエスカ(現在、3位アルメリアと勝ち点差1の2位)が来るのか、香川真司選手のいるサラゴサ(同、2位と勝ち点差2の4位)になるのかといった興味もあるかと思いますが、マドリッド勢の弟分たちもここが正念場です。
ええ、カディスに勝ったフエンラブラダがプレーオフ出場圏の6位と勝ち点1差の7位、最短1部復帰を狙うラージョはその1つ下の8位で勝ち点差2、そしてアルコルコンも11位ながら、勝ち点差は4と到達可能範囲にあるため、私もそれぞれエルチェ戦、マラガ戦、ラス・パルマス戦が気になるところですが…いやあ、たとえ、レガネスが2部に落ちてもマドリッド1部4チーム体制が維持できるよう、応援している訳では決してないですよ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。