「相手は残留を争い、難しい試合だった」 セビージャの指揮官であるフレン・ロペテギは、マジョルカ戦をそう振り返っている…

「相手は残留を争い、難しい試合だった」

 セビージャの指揮官であるフレン・ロペテギは、マジョルカ戦をそう振り返っている。

「しかし我々もシーズンを通し、欧州チャンピオンズリーグ出場権を目指して戦ってきた。負けるわけにはいかなかった。暑さの中での試合で厳しかったが、選手たちは前線からよくプレスをかけ、ボールを回し、勝利をつかみ取ってくれた」

 ロペテギ監督の言葉は、戦いをよく表現していた。

 セビージャは、マジョルカよりも戦力的に明らかに格上である。相撲なら、大関と前頭15枚目ほどの差があるだろう。マジョルカではレギュラーのアレハンドロ・ポゾはセビージャからのレンタル選手で、出場機会を求めてやってきた。セビージャのサッカーは、あらゆる強度で勝っていた。アンダルシア特有のまとわりつくような暑さにも負けず、ぐいぐいと敵陣に入り込み、技量でも違いを見せたのだ。

 マジョルカの久保建英は渾身で挑んだが――。



セビージャ戦に先発したが、見せ場をつくれなかった久保建英(マジョルカ)

 7月12日、リーガ・エスパニョーラ第36節。18位のマジョルカは4位セビージャの本拠地サンチェス・ピスファンに乗り込み、一戦を交えている。残留に向け、勝利を目指した。

 しかし、試合開始直後から実力の違いは明白だった。組み合っただけで、力の差が伝わってきた。

 セビージャは中盤中央のフェルナンド・レゲス、ジョアン・ジョルダンが強力で相手を寄せ付けない。センターバックのジュール・クンデ、ディエゴ・カルロスもパワーを感じさせ、エベル・バネガは長短のパスでリズムを生み出した。ヘスス・ナバス、セルヒオ・レギロンのサイドバックは高い位置を取って攻撃に厚みを加え、サイドのルーカス・オカンポス、オリベル・トーレスと連携し、一気になだれ込む。攻撃を浴びた後のカウンターも迫力満点だった。

 マジョルカはプレッシングとリトリートを併用し、守備から入って隙を窺うしかない。

 久保は前半、自陣で二度、パスカットに成功している。相手の癖を素早く見抜けるのだろう。アンドレス・イニエスタもそうだが、サッカーIQが高く、それを攻撃だけでなく、守備にも使える。体の使い方と周りの選手との関係性で、すばらしい読みを見せていた。

 しかし、自陣でいくらボールを奪っても、戦局を動かすのは難しい。

 久保は右サイドでボールを受け、オカンポス、トーレスを外し、右サイドに展開し、攻撃の糸口を作っている。しかし、それが限界だった。右サイドで対峙したレギロンはレアル・マドリードのレンタル選手で、久保と同じ立場だが、そこで勝負するようなボールを受けることができなかったのである。

 そして前半40分、マジョルカはやや不運なVAR判定でPKを与え、先制点を許してしまう。

 後半、リードされたことで、久保は反撃の意志を見せた。カウンターで自陣からボールを持ち上がり、スルーパスを狙う。相手選手のプレスを外し、中に入って、縦パスを入れ、そのリターンを受け、右足を力強く振る。どちらもブロックされたが、敵を脅かした。しかし気負いによってボールを失う機会も増え、状況を打開するには至らなかった。

 そして84分、マジョルカはセットプレーにかけ、ゴール前に人を集めたが、得点を生み出せず。逆に相手GKの1本のパスをディフェンスが裏を取られ、GKの頭上を抜かれる。2失点目を喫し、敗北は決定的になった。

 85分、久保はパブロ・チャバリアと交代でベンチに下がっている。それはチームが白旗を上げたに等しい。大勢が決した試合よりも、次の一戦に向け、再開後9試合連続先発出場のエースを少しでも温存したかったのだろう。

 セビージャ戦、久保への現地紙の評価は大きく分かれた。マドリードに本拠を置く『アス』紙は、チーム最低の0点(0~3の4段階)と厳しい評価だった。一方、バルセロナに本拠を置く『エル・ムンド・デポルティーボ』紙はチーム最高の3点(1~4の4段階)と高得点を与えている。

 視点の置き方で、評価が極端に変わるのだろう。レアル・マドリードのレギュラーになるには、この日のパフォーマンスは物足りない。マジョルカの一選手としては、十分に可能性を示していた。厳しい評価が、むしろ久保の成長の証左だ。

 残り2試合、久保は有終の美を飾れるか。

「我々には6ポイントを争うだけの力がある」

 ビセンテ・モレーノ監督は厳しい覚悟で言う。2連勝が残留の前提条件となる(17位のアラベスが1試合未消化)。レガネスが勝利したことで、同勝ち点ながら順位は19位に後退。エイバルもエスパニョールを下して残留を決め、後がなくなった。

 7月15日、マジョルカは本拠地ソン・モイスで、10位のグラナダを迎える。久保は、乾坤一擲の勝負に挑む。