◆JERAセ・リーグ公式戦 巨人2-3ヤクルト(12日・ほっと神戸)昨日の試合でそのプレイは起きた!!巨人が攻撃中の6回…

◆JERAセ・リーグ公式戦 巨人2-3ヤクルト(12日・ほっと神戸)

昨日の試合でそのプレイは起きた!!
巨人が攻撃中の6回裏、2-3と巨人が1点を追う緊迫した場面。1死走者一、三塁で炭谷銀仁朗選手が三遊間の深い位置へゴロを打った。

打球をヤクルトの遊撃手・エスコバー選手が捌き二塁へ送球して2アウトとなったが、この直後に起きたプレーにスタジアムは騒然となった。
アウトが成立した後に二塁へスライディングした一塁走者・パーラ選手と山田哲人選手が交錯。
おそらく交錯していなくても一塁はセーフだと推測されるプレイではあったが、山田哲人選手は交錯したことにより一塁へ送球できず、結果的に併殺崩れとなり、三塁走者の亀井選手が同点のホームインを踏んだ。

しかし、もう知っている方もいると思うが、このプレイは高津監督のリクエストによりダブルプレイが認められ、無得点となったのである。
ダブルプレイへと変わった理由はパーラ選手のスライディングが「ボナファイドのガイドライン」を違反していた為であると責任審判の丹波さんが説明している。

今回はこの「ボナファイド」って何だ?って思った方のために、説明しようと思う。

勘違いしている人も多いと思うので先に言っておくが、近年よく話題となる「コリジョン」とは別のルールである。

「ボナファイド・スライディング(スライド)」は公認野球規則の6.01(j)に記載されている。
と言っても普通はルールブックなんか持っていないと思うのでわかりやすく説明しよう。

まず大前提として、併殺をしようとしている塁にのみ適用される。
※併殺とは今回のような「ダブルプレイ(和製英語:ゲッツー)」などのプレイを指す。
この大前提(併殺をしようとしている塁にのみ)の元、審判員は走者が下記の条件通りに“正しいスライディング”をしているのかを確認する。

⑴   ベースに到達する前からスライディングを始め(先に地面に触れる)、
⑵   手や足でベースに到達しようとし、
⑶   スライディング終了後は(本塁を除き)ベース上にとどまろうとし、
⑷   野手に接触しようとして送路を変更することなく、ベースに達するように滑り込む。


おそらく今回のパーラ選手のスライディングは(3)に抵触していたと予想される。
そのために、打者走者の炭谷選手もアウトとなり無得点となったのだ。
“たらレバ”の話になってしまうが、今回のスライディングが“正しいスライディング”であった場合、一塁はセーフであった可能性が高く、亀井選手はホームインが認められ同点となっていただろう。
たかが“ワンプレイ”かもしれないが、巨人にとっては痛すぎる“ワンプレイ”であり、ヤクルトにとっては大きすぎる“ワンプレイ”となった。

野球ではよく「故意ではないから」「たまたまそうなってしまった」などと言うことを聞くが、基本的にルールの適用に故意であるかの有無は関係なく適用しなくてはならない。
もちろん故意で妨害をしたのが明らかな場合は、より厳しい判定を受けてしまう。

今回のプレイに関しては、原監督もコメントで出しているように、故意ではなくたまたまなってしまったのかもしれないが、試合結果を見た時に、このプレイが試合の勝敗を決するワンプレイであった可能性が高い。
“正しいスライディング”をしていれば巨人は勝利していた‥‥かもしれない。
野球には今回のように知らない人が多いルールや、名前は知っていてもかなり複雑で理解できないルールも数多くある。

今後も子供や野球に興味がない人でも、わかりやすいようになるべく簡単に説明していこうと思う。

文:元プロ野球審判 坂井遼太郎