今シーズンはコロナ禍の影響により、開幕は約3カ月遅れ、例年より23試合少ない120試合制で行なわれている。なかでもパ・…
今シーズンはコロナ禍の影響により、開幕は約3カ月遅れ、例年より23試合少ない120試合制で行なわれている。なかでもパ・リーグは、史上初の同一カード6連戦を強いられている。はたして、この異例のシーズンをどのようにして戦えばいいのか。近鉄、ヤクルトなどで打撃コーチ、ヘッドコーチを歴任し、多くの選手を育てた伊勢孝夫氏に聞いた。

開幕カード2戦目でロッテに6連敗を喫して肩を落とすオリックスナイン
今シーズンの日程が発表された時、いったい誰がこのスケジュールをつくったのだろうと目を丸くしたものだ。もちろん、苦肉の策であったことは理解できるが、パ・リーグの同一カード6連戦なんて……現場の者に言わせれば、まさに地獄である。
対戦相手が変わらない連戦といえば、日本シリーズを思い浮かべる人もいるだろう。しかし、実際はかなり違う。日本シリーズは、まず2試合戦って移動し、3連戦してまた移動と、球場が変わることで気分的にリセットできる。移動日があることによって”潮目”が変わることもある。
ところが、同じ球場で同じ相手に6連戦となると、この”潮目”が変わりづらい。好調なチームにとってはいいが、不調のチームにとってはまさに地獄の6連戦となるわけだ。開幕2カード目にオリックスがロッテに6連敗したが、まさしくこれは”潮目”のなさがもたらした結果だといえる。
では、この同一カード6連戦をいかにして戦うべきか。あくまで個人的な意見だが、前半の3試合と後半の3試合を2つに分ける。そして、それぞれ頭のカードをなんとしても取りにいく。一見、当たり前に思えるかもしれないが、チーム全体でそうした意識づけをしておかないと、漠然と6試合に臨んでしまう可能性がある。
同一カード6連戦は、先述したように日本シリーズのような”短期決戦”のイメージがあるが、ポストシーズンとレギュラーシーズンとでは、まるで緊張感が違う。
毎日同じチームと戦っていると、無意識に気が緩んでしまい、それがプレーに出てしまうことがある。とくに4、5戦目あたりは要注意だ。ベンチだって3試合も戦えば策も尽きてくるし、選手だって相手の好不調は理解してくるようになる。どうしても大味な試合になってしまう可能性をはらんでいる。
逆に言えば、4、5戦目をしっかりした形で白星を稼いでいるチームは強い。それを可能にするのは、やはり投手力ではないだろうか。
言うまでもなく、先発投手をどれだけ揃えられるかは重要なことだが、今シーズンはリリーフの使い方こそ、異例のシーズンを乗り切る大事な要素になると見ている。
勝つチームというのは、いわゆる”勝ちパターン”の投手リレーを確立している。先発が6回まで試合をつくれば、7回からはどんな顔ぶれでつないでいくか。チームによっては、相手の打順や相性に関係なく、イニングによって誰に任せるのか決めている。無論、こういうチームは強い。
ただ、今季のように休みがほとんどないと、投手マネジメントは難しくなる。
普段のシーズンであれば、たとえば先発が序盤で崩れた試合になれば、いつもとは違う継投で臨むことがある。ある程度、大敗しても仕方ないと割り切って戦う、いわゆる”捨て試合”というものだ。
近鉄がリーグ優勝を果たした2001年、私はヘッドコーチを任されていたが、ある試合で序盤に大量点を取られたことがあった。その時、投手コーチの小林繁が私のところに来て「今日の試合、捨ててもいいですか」と言ってきた。こちらとしては「直接、梨田(昌孝)監督に言ってくれ」と内心思ったが、小林も私のほうが言いやすかったのだろう。そこで監督に進言し、その試合はリリーフを温存して負けた。
ただ、これは同一カード3連戦だからできることであって、6連戦となると難しい。
野球における流れとは不思議なもので、1試合のなかにも、3連戦のなかにも、当然6連戦のなかにもある。オリックスが5連敗のあと、エース山本由伸でも抑えられなかったように、”流れ”は侮れない。
だからこそ、嫌な流れの時はいかにして早く食い止めかが重要になるわけだが、だからといって毎試合必勝リレーで戦っていたらパンクするのは時間の問題だ。つまり必勝リレーを確立しつつも、試合展開や相手の状況によって、何パターンか継投の形を用意しておく必要がある。投手コーチにとっては難題を突きつけられた心境だろう。
そしてもうひとつ大事なことは、大型連敗をしてしまった時の戦い方だ。いちばん怖いのは、ただ漠然と試合をして黒星を重ねることだ。私ならローテーションの再編、配置転換、選手の入れ替えなど、あらゆる手を尽くして目の前の試合を取りにいく。それぐらいの思い切りが必要だ。
1週間で6つもの借金をつくってしまうと、後々の戦いが本当にしんどくなる。とくに今年は試合数が少なく、連戦が多いため、取り戻すのは並大抵のことではない。だからこそ、連敗の怖さをいつも以上に意識することだ。
プロ野球には、シーズンの波というのがある。たとえば、3月末に開幕すれば夏場に入る前に1回目のバテが襲う。そこを乗り越えても、シーズンが佳境になる9月中旬に2度目のバテがくる。本来なら、この時期に万全の状態に持っていけるようにするため、8月終わりから選手を休ませながら戦っていくのだが、今年に限ってはその経験則があてはまるかどうかわからない。
しかも、コロナ禍の影響で開幕前の練習も不十分だったに違いない。それに何日も続けてホテル生活を強いられ、容易に外出もできない。そうしたことを鑑みると、肉体的にも精神的にも相当追い込まれている。いつもよりも早くバテがくるのではないかと思う。首脳陣は選手の状態を見極める”眼力”が必要になるだろう。
普段どおりのシーズンではないからこそ、固定観念にとらわれることなく、臨機応変に対処していかなくてはならない。それができたチームが最後に笑うことになるだろう。