「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第8回目は特別編として指導者にスポットを当て、高校教員への授業を開催。講師は、陸上競技短距離選手として3年連続インターハイ出場、米国にてスポーツ科学を学び、現在は教育、研究活動のほか、アスリート・指導者などを対象にメンタルパフォーマンストレーニングのプログラムやセミナーを提供している園田学園女子大学教授荒木香織さん。さまざまな種目の部活動で指導に当たっている現役教員5名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

外側に目を向ける取り組みたくなる雰囲気づくり

荒木さんからの自己紹介から配信はスタート。「これが正解だ、確実だという方法はありませんが、先生方の力になりたい」と笑みを交えて挨拶した。高校では陸上部で、3年連続インターハイに出場。「全国インターハイに出ることが目標だった」としながらも、「指導者に恵まれていた。結果よりもプロセス自体が心に残っています」と振り返った。メンタルトレーニングコンサルタントとして大切にしているものは、「直接会いに行って話をすること。今はオンラインもあるが、面と向かって座って話を聞くことを大切にしています」と、対面での伝わり方の重要性について語った。

「(今のコロナ禍に対して)指導者としてどう向き合っていくべきか?」という質問に対しては、「生徒に目がいきがちだけど、保護者の方とうまくコミュニケーションをとりながら生徒の現状について理解をすること」と、「生徒が取り組みたくなるような雰囲気づくり」が大切とコメント。「大人が『かわいそうだ』とか『どうしたらいいのだろうか』と、そういう情報を発信しすぎると実際子どももそういう空気になってしまう。外側に目を向けていくことが大事」と丁寧に話しかけた。

海外でスポーツ心理学を学んだことについて「日本との違い」についての話題になると、「当時は日本ではあまりスポーツ心理学を学べるところがなかった」としながら、「緊張したらリラックスしろ」という指導の仕方を例に挙げ、「心理学に『緊張』という言葉はないんです。不安や興奮のレベルと言いますが、認知の不安と体の不安を具体的にどうコントロールするかということ。そういった、もっと先生方に届く情報を伝えられるような活動をしていくのが私達の役割でもあります」と説明した。

スポーツの力、克服する力を子ども達に

後半は、さらにパーソナルな相談が多く聞かれる展開に。

「(生徒が)チャレンジすることをためらってしまう。引き出せるいい方法は?」という質問には、「失敗したら終わりではなくて、これをすれば修正できる、というようにそこから始められることがある」と反応。「それには、なるべく分かりやすく覚えられる短い言葉を作るといい。うまくいく時と、失敗した時にかける言葉を作って、3年間続けることが挑戦したくなる空気を作る」とアドバイスした。

サッカーの指導者からの「タックルやトライするには(根性論ではなく)気持ちも大事ですよね?」という疑問には、「難しい質問ですね…」と一言。「練習中はプロセスにフォーカスできるか、試合は健康的な情熱をフィジカルに体現することが必要」と解説しながら、「最後はメンタルではなく判断力だと思っています」と分析し、指導者も大きな発見があったようだった。

陸上部の指導者からの「どんな言葉をかけるといいですか?」というやや抽象的な質問にも、「不安は悪くない。頑張りたいことの証拠。解消されなくても、整理できていれば大丈夫」とし、「興奮レベルは種目によって変わる。例えば全身の筋肉を使う短距離走や投てきなどは、興奮レベルを上げるのが重要」と、コントロールの仕方をアドバイスし、指導者も意外な一面に驚いていた。

最後に明日へのエールとして「スポーツに価値があるんだろうかと思われる日々だったかもしれない。今こそたくさんの先生方に期待しています。子どもたちにスポーツの楽しさ、様々なことを克服していくことの大切さを伝えていってほしい。私もそのために活動していきたい」と笑顔で語り、「子ども達に元気を与える立場」として、全員ガッツポーズでの記念撮影をし、授業は終了した。

荒木さんとのオンラインエール授業後に、先生たちだけの「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。

「(生徒が)チャレンジすることをためらってしまう。引き出せるいい方法は?」との質問への荒木さんの回答について、教員がコメント。「何をするにしてもその土台をどうやって作ってあげられるのかがすごく大事だと思った」と気づきを語り、「練習に勝る才能なし、という言葉があるが、試合にどう逆算して取り組ませていくか、一概にメンタルと言っても、その強いメンタルを作り出すのもいろんなことの積み重ねなんだなということを感じたので、非常に勉強になった」と、授業の価値を噛みしめていた。

8月が引退試合になってしまう陸上の指導者は、「なかなか部活に気持ちが入らないんじゃないかと思っていたが、今日の(会話が大切という)話を聞いて、実際に話してみないと分からない、というところは大きくあるのかなと思った。やっぱり生徒は生ものというか、リアクションを大切にしたいということは強く思った」と、気づきを語った。

また、さまざまな種目の先生が一堂に会した今回の授業を「こうやって話すことができて、他の種目の先生からでもいろんなことを学べることがあったので、もっと生徒のために何ができるのか考えながら生活ができればなと思った」と振り返る教員の声も聞かれた。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

生徒だけでなく指導者もまた、同じ悩みや想いを共有しながら、今のやるせなさ、不安感が少しでも前向きになり、明日への力につながることを願ってやまない。