「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第12回の講師は、15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位、プロに転向後はグランドスラム3度優勝など輝かしい記録を残し、現役…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第12回の講師は、15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位、プロに転向後はグランドスラム3度優勝など輝かしい記録を残し、現役引退後はコメンテーターや解説者としても活躍する杉山愛さん。全国高校テニス部の現役部員や顧問の教員など約20名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

プロを意識した高校生今しかないと思った

笑顔で登場した杉山さんの挨拶から授業はスタート。「私自身も自粛を余儀なくされています。みなさんも大変だと思う。この期間があるからこそ喜びが感じられると思うので、ぜひインタラクティブにやり取りできたら」と挨拶。生徒からの「勉強も頑張っているが、テニスと同じぐらいできていない」という反応に、「バランスは大事だと思う。けれど、今これを頑張るというプライオリティ付けも大事」と励ました。

次に、杉山さんの高校時代の話に。「高校が一番楽しかった。男女共学で、頑張っている同級生に刺激をもらった。高校での友達が一番長い付き合いになっている」と振り返りながら、中学3年生の時に世界ジュニアランキングで1位になったことについてふれ、「プロになるなと思っていた。スポーツ科があるような高校に進学しました。今しかないなと思ったので、テニス中心を優先した」と当時の熱意を思い起こしていた。

ケガで悩むことが多い高校生からの「ケガで悔しい思いをした時、どんなモチベーションで向き合っていますか?」という質問には、「体って本当にバランスよく使っていかないと。疲労から来るケガもある」とコメント。「腹筋と背筋のバランスが崩れたり、歩き方も影響したりする。不調な時はフォームが乱れていて前肩に負担がかかるので、専門家に相談して、自分の体を俯瞰で見てみることが大切ですね」とアドバイスした。

呼吸法とイメージ自分に合った方法を

後半は悩み相談も含めた、パーソナルな内容に。

「勉強も行事にも力を入れている学校で、自分だけが部活に打ち込んでいると不安」という悩みには、「私はもうテニス、と決めていた。中学まで勉強した貯金で高校を乗り切った」とコメント。「なかなか何かにフォーカスするのは難しいと思うけど、プライオリティや時間の割り振りがとても大切だと思う。高校生は何にも代えがたい時間。社会に出ても必ず役に立つので、友達・勉学・部活、いろいろあると思うけど、その時その時のベストでいいと思う」と打ち込む大切さについて語った。

「スポーツをする上で挑戦しないといけないと思うが、なかなかできない。自分を抑制して、勝つためのコツ」についての質問が出ると「高2でこんなに深く人生と向き合っているのは素晴らしい」と感心。「自分の時間、家族の時間、社会にギブバックする時間、いろいろあると思う。自分に厳しい真面目な性格かもしれない。ただ、頑張るにはエネルギーチャージが必要。スイッチが入らないでダラダラするなら、覚悟を決めて休んでほしい。私も1時間だけカラオケに行ったりして切り替えることもあった。自分へのご褒美の時間は大切。ただ、この質問をしている時点で大丈夫ですよ」と笑顔で答えた。

最後に「明日へのエール」として「質問のレベルの高さにびっくりしました。これだけ向き合えていたら未来は明るい。自分も元気をもらいました。今だからこそ自分に向き合える時期だと思うので、またこういう考える機会を設けてもらいたい」と語った杉山さん。フォアハンドで決めた姿を全員でイメージし記念撮影し、全員が満面の笑みを浮かべながら配信は終了した。

授業後の「アフターセッション」でみんなの本音を語り合う

杉山さんとのオンラインエール授業後に、高校生と先生たちだけの「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。

まずは先生を中心に授業の感想が聞かれた。「時間のプライオリティ」のキーワードが印象に残った先生が多く、「勉強と部活と行事のバランスを取らなければいけない生徒にとって一番の悩みの種。いい学びだったのではないかと思う」という女性教員や、「何をやるべきかということをしっかり整理することは、あらためて大事だと思った」と答えた男性教員の声もあった。

また、その流れの中で「単に楽しむためだけのスポーツもありだと思うが、部活で本気になってやることでプライオリティや時間の悩みが出てくる。そのことこそに意味があると思うので、杉山さんにお話しいただいたことがまさしくエールになったと思う」と手応えを感じた教員の声も聞かれた。

最後に、今年で引退する高校3年生の声が聞かれ、「最後にずっと目指していた大会がなくなってしまって、私たちの代はかわいそうというイメージが多いけど、マイナスの面ではなくプラスの面もあって、今まで部活でやってきたことがテニスだけでなく、これからの受験勉強や今後の人生にもプラスにしていけることがたくさんある。前向きに明るく頑張っていけたらいいなと思いました」と軽やかに語る姿が印象的だった。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、今のやるせなさ、不安感を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。