「もしやこれってクジ運良かった?」そんな風に私が明るくなっていたのは金曜日、新型コロナウィルス流行のせいで3月から中断されていたCLの決勝トーナメント準々決勝組み合わせが決まった時のことでした。いやあ、もうこういうイベントではゲストのビデオ…

「もしやこれってクジ運良かった?」そんな風に私が明るくなっていたのは金曜日、新型コロナウィルス流行のせいで3月から中断されていたCLの決勝トーナメント準々決勝組み合わせが決まった時のことでした。いやあ、もうこういうイベントではゲストのビデオ参加が恒例になった昨今ですが、どういう訳か、ニヨンのUEFA本部とマドリッドの通信が不調。その夜にはアラベス戦が控えていたせいか、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場の一室でインタビューを待っていたのがブトラゲーニョ渉外ディレクター1人だったレアル・マドリーはともかく、せっかくワンダ・メトロポリターノのセットで正午から、セレソ会長、シメオネ監督、キャプテンのコケが雁首揃えてスタンバイしていたアトレティコ勢のコメントも抽選会中には聞けなかったのは残念でしたが、もちろんそれより大事なのは決勝までの道のりが決まったことの方だったかと。

ええ、16強対決2ndレグが終わっていなかったため、8月7日、1-2で敗戦した1stレグから、マンチェスター・シティに逆転するため、エティハド・スタジアムに乗り込まないといけないお隣さんやその翌日、カンプ・ノウにアウェイで1-1と引分けていたナポリを迎え撃つバルサと違い、昨季のCL王者且つ、今季プレミアリーグ王者でもあるリバプールを堂々たる2連勝で下していたアトレティコはリスボンで開催されるファイナルエイトに直接参加。一発勝負となる13日の準々決勝では、昨季のファイナリストであるトッテナムを総合スコア4-0で下したライプツィヒとスポルティングCPのホーム、ジョゼ・アルバラーデで対戦することに。

何せ、相手は先月27日に一足早く終わったブンデスリーガで今季も3位とまあ、国内戦ではアトレティコと似たような順位なんですが、CL出場はまだ2回だけで、決勝トーナメントも初体験ですからね。しかも今季、バイエルンのレバンドフスキに次ぐ28得点を挙げたエースのティモ・ベルナーのチェルシー移籍がすでに決まっており、もうライプツィヒではプレーしないというのですから、ここは結構、強気に出てもいい?

更に言うと、もしCL準々決勝に進んだ場合、バルサは8月14日におそらく、16強対決1stレグでチェルシーを0-3で下しているバイエルンと対戦。マドリーは15日、オリンピック・リヨンとの1stレグでは1-0で予想外の敗戦を喰らったものの、トリノでの2ndレグで挽回してくるだろう、クリスチーノ・ロナウドのいるユベントスと当たることになり、両者がその試練を乗り越えた先にあるのはCLクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)。

逆にアトレティコは準決勝でアタランタvsPSG戦の勝者と当たるとあって、決勝までお隣さんにも、先日はリーガ戦17試合連続白星なしとしながら、CLではシメオネ監督が2度の対戦で勝ち抜け。1月のスペイン・スーパーカップ準決勝でも2-3と逆転勝利しているバルサとも顔を合わさず済むんですが…うーん、8月23日、奇しくも2014年と同じ会場、ベンフィカのホーム、エスアディオ・ダ・ルスでのCL決勝では3度目の正直、今度こそマドリーを下して念願の初優勝っていうのが、一番魅力的なシナリオだと思っているアトレティコファンもいたりする?

まあ、どちらにしろ、リスボンでのファイナルエイトは全て無観客試合となるため、マドリーダービー決勝となっても6年前のようなファンの大移動はないんですが、今のご時世では優勝セレモニーを開催するのも難しいですからね。それでもマドリッド市は丁度、来週木曜に37節、19日の日曜に最終節を全試合、キックオフタイム午後9時にunificasion(ウニフィカシオン/時間割の統一)して行うことが発表されたリーガでマドリーの優勝が決まった場合、大量のファンが集まらないように工夫しつつ、絶賛大改装中のサンティアゴ・ベルナベウでメガフィエスタができないマドリーのため、シベレスでの祝賀行事を計画しているようですからね。

万が一、アトレティコが8月にネプトゥーノで祝うことになれば、それもいい参考になるかと思いますが、はあ。最近、スペインのワールドカップ優勝10周年となる7月11日が近づいてきたせいで、当時、マドリッド市内の大通りが群衆で覆い尽くされたパレート風景の映像などをTVで見る機会が増えているんですが、そういう大規模なイベントって、当分の間はできないんでしょうね。

そんなことはともかく、今週のマドリッド勢の試合を振り返っていくことにすると、火曜にまず、35節をプレーしたのはアトレティコだったんですが、やっぱり開始55秒で先制するなんて、せっかちな真似をしたせいですかね。そのプレーはセルタから中盤でボールを奪い、マルコス・ジョレンテ、アリアス、コレアと繋いだ後、コレアのラストパスがベルトランの「me dio en la rodilla/メ・ディオ・エン・ラ・ロディージャ(ヒザに当たった)」おかげで軌道がずれ、ゴール前左側にいたモラタが押し込んでゴールという見事なものだったんですが、その後が全然、続かないんですから、困ったもんじゃないですか。

しかも不運なことに後半開始早々3分にはそのベルトランが汚名返上、ブライス・メンデスのクロスをエリア内でvolea(ボレア/ボレーシュート)したところ、大きく孤を描いたボールがGKオブラクを越えてネットへ。その日はジエゴ・コスタが出場停止、ジョアン・フェリックスは足首を負傷、カラスコもビーゴ(スペイン北西部のビーチリゾート)遠征出発直前に胃腸の不調で不在と、アタッカーのオプションが少なかったのも響いたか、「Teníamos el partido controlado, pero ante un gol así poco se puede hacer/テニアモス・エル・パルティードー・コントロラードー、ペロ・アンテ・ウン・ゴル・アシー・ポコ・セ・プエデ・アセール(ゲームはコントロールできていたんだけど、ああいうゴールを入れられては、できることはあまりない)」(モラタ)というアトレティコはそのまま1-1で引き分けてしまいましたっけ。

これでクラブのシーズン最多記録を更に更新する今季15回目のドローともなると、もう私なども何と言っていいのかわからないんですが、シメオネ監督にまで、「Los empates existen como existen los triunfos, la derrota y el rival que también compite/ロス・エンパテス・エクシステン・コモ・エクシステン・ロス・トリンフォス、ラ・デロータ・イ・エル・リバル・ケ・タンビエン・コンピテ(勝利や敗北があるように引き分けだってある。相手も競っているんだし)」と開き直られてもね。おかげで木曜にアスレティックに1-2で逆転勝ちした4位セビージャに勝ち点で並ばれてしまったんですが、それでもCL圏外5位との差は勝ち点6あるって、ちょっとは慰めになる?

そのビジャレアルにはゴールアベレージで上回っているため、ファン的には土曜午後10時(日本時間翌午前5時)からのベティス戦で勝利して、早めに来季のCL出場権を確定してもらいたいところですが、さて。ルビ監督を解任した後、現在、クラブスタッフのアレクシス暫定監督が指揮する相手は先日、残留が確定したのを機に来季はペジェグリーニ監督が来ることを発表したばかりで、今はもう消化試合体制ですからね。ジョアンはまだ回復せず、ヒメネスもセルタ戦で足を痛めたとはいえ、得意のワンダでの試合なら、十分勝機はあると思うんですが、どうなんでしょうね。

え、それでマドリッド3番目のチームとして、兄貴分に続こうとCL初出場を目指していたヘタフェはどうなったのかって?いやあ、それがビジャレアルを後押しすることになってしまったのが、まさに彼ら自身で水曜にコリセウム・アルフォンソ・ペレスで迎えた直接対決で大ヤケドをしてしまったから、さあ大変!というのも0-0だった後半21分、カソルラのスルーパスを受けたモイ・ゴメスからボールを奪ったGKダビド・ソリアのプレーがペナルティ判定されてしまったから。それにはボルダラス監督も「VAR(ビデオ審判)もあって、ソリアの手がボールを触っているのははっきりしているのに理解できない」とカンカンでしたが、ここはカソルサがPKをきっちり決めてビジャレアルが先制することに。

それでも35分にはCKから、カンテラーノ(ヘタフェBの選手)のウーゴ・ドゥーロがヘッドで嬉しいトップチーム初ゴールを挙げ、同点に持ち込んだんですが、まさか41分、ポルティージョの足がモイ・ゴメスの足とぶつかったプレーまで、ペナルティにされてしまうとは!このPKもカソルサが成功させ、再びリードを奪われたヘタフェが最後の攻勢に出たところ、ロスタイムにはペーニャに3点目を入れられて万事休すとなりました。ただ、1-3で負けたことより、もっとマズいのはロッカールームに戻る途中、カッカしていた選手たちがtangana(タンガナ/小競り合い)を始めてしまい、両チーム計5人が試合後にレッドカードを出されてしまったことだったんです。

だってえ、翌日、競技委員会から課された処分がこれまた深刻で、CBのエチェイタが今季絶望となる3試合、左SBのダミアンが2試合、そしてニヨムが1試合の出場停止にされてしまったんですよ。ビジャレアル戦にエースのホルヘ・モリーナが累積警告でいなかっただけでもあんなに大変だったというのに、いや、これじゃウーゴ・ドゥーロでなくたって、「No quieren que entremos en Europa/ノー・キエレン・ケ・エントレモス・エン・エウロッパ(ボクらがヨーロッパの大会に行くのを望んでないんだ)」と嘆きたくなるのも当然だったかと。

いえ、まだ境界線の8位バレンシアや金曜にレアル・ソシエダに勝ち、同勝ち点の9位に上がってきたグラナダとは3差ありますし、来週月曜のアラベス戦に勝てば、2年連続でELに出場できる可能性は十分にあるんですけどね。ただ、CL抽選会の後に決まったEL決勝トーナメント準々決勝の組み合わせでは、ヘタフェは8月5日の16強対決、一発勝負となったインテル戦にドイツのアレナ・アウフシャルケで勝っても、次はレンジャースvsレバークーゼン戦の勝者と顔を合わすことに。こうも強敵が続くとEL優勝も難しそうですし、4位セビージャとの差が勝ち点10あることからも考えて、CL挑戦はまた次の機会を待つというのが現実的ではありましょうか。

そして木曜にはレガネスがアウェイでエイバルとスコアレスドローとなり、実際、メンディリバル監督も「Ha sido un partido muy malo/ア・シードー・ウン・パルティードー・ムイ・マロ(ひどい試合だった)。誰も入場料を払わず済む無観客だったのが嬉しいね」と言っていたぐらい、内容が乏しい展開だったんですけどね。後半ロスタイムなど、勝ち点1では全然、足りないレガネスの方が、GKクエジェルがゴールキックを遅らせているって一体、どうなっているんでしょう!

いえ、エン・ネシリ(セビージャ)とブライトワイテ(バルサ)の移籍、オスカルの謎の負傷欠場でゴールが生まれなくなったのはわかりますし、普段3部でプレーするカンテラーノ(レガネスBの選手)のFW、アビレルとマヌにアギーレ監督が重荷を背負わせたくないのももっともなんですけどね。とはいえ、同時刻にプレーしていたマジョルカが久保建英選手の2点目もあって、レバンテに2-0と勝利。17位のアラベスに勝ち点差3に接近と、必死に残留を目指してあがいているのを知った日には私だって、悲しい気分になってしまいますよ。

ええ、金曜にはそれこそマドリーがもちろん、バルサが水曜にエスパニョールに1-0で勝利し、差を勝ち点2に縮められたせいもありますけどね。セルヒオ・ラモスとカルバハルが出場停止、マルセロは太もものケガで残り3試合には出られないことが判明、あまつさえ、ヨビッチなど、月曜にセルビアから訪ねて来た友人がコロナ検査陽性となり、自宅隔離中という逆境にも関わらず、前半にはベンゼマのPKで先制。後半にもアセンシオがVARによるオフサイド疑惑を乗り越えて2点目を決め、アラベスにしっかり2-0で勝って、弟分が勝ち点差6のまま、少しでも希望を持てるように援護射撃もしてあげたなんてこともあったんですが…。

このままだと、カタルーニャダービー敗戦で降格確定一番乗りとなったエスパニョールの後を近日中に追うのはかなり確実のように見えますが、そんなレガネスの次節は日曜のバレンシア戦。3試合ぶりにアザールが途中出場で復帰したマドリーの方は月曜午後10時にグラナダとのアウェイ戦が控えていますが、すでに残留確定したバジャドリーと土曜に当たるバルサも躓きそうにありませんからね。やはり最短でも優勝が決まるのは37節のビジャレアル戦となりそうですが、うっかり最終戦、ブタルケでのレガネスとのミニダービーまで結末がもつれ込むようになると、どちらも辛いかもしれませんね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。