「オカザキ(岡崎慎司)が、敵のアウェー無敗神話を打ち破るゴール!」 スペイン大手スポーツ紙『アス』は、そう見出しを打って…

「オカザキ(岡崎慎司)が、敵のアウェー無敗神話を打ち破るゴール!」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』は、そう見出しを打っている。

 リーガ・エスパニョーラ2部、第39節。7月8日、岡崎慎司を擁するウエスカは自動昇格を懸け、2019年6月以来、敵地での無敗を誇っていたアルコルコンと戦っている。ジンクスに守られた相手を打ち破るのは至難の業だ。

 しかし、日本を代表するゴールゲッターである岡崎は、それを見事にやり遂げた。



7月8日のアルコルコン戦で決勝ゴールを決めた岡崎慎司(ウエスカ)

 前半終了間際、右からのライナー性のクロスだった。岡崎は敵ディフェンダー2人の間をすり抜けるように飛び込んで頭で合わせ、ゴールネットを揺らしている。技術的に、決して簡単ではないプレーだ。高速クロスに対し、正しいポジションを取り、適切なタイミングで飛び込み、的確に頭で合わせる必要がある。しかも、相手が必死に足を上げても、少しも恐れずに飛び込んだ。

 岡崎らしい「勇者のゴール」だった。

 これが決勝点になって2-1でアルコルコンを撃破。岡崎のウエスカは、自動昇格圏内である2位に暫定的に浮上した。

 来シーズン、岡崎は1部の舞台に立てるのか?

 今シーズン、岡崎はストライカーとして輝きを放っている。なにより、ゴールに対する集中力は達人の域と言える。

 第35節、首位を走るカディス戦だった。FKからのボールに岡崎はジャンプで合わせようとするが、クロスは頭上を越え、いったんは右サイド流れる。必然的に人が入り乱れていたが、岡崎は正しいポジションを取り、混戦から出てきた折り返しを、上半身を畳み込むボレーで正確にヒットし、ネットを揺らした。勘のよさも際立っていた。

 ゴールをするための技量も飛び抜けている。

 第37節、ラス・パルマス戦では、左サイドをドリブルで持ち上がるダビド・フェレイロと絶妙の呼吸を見せる。決して急がず、ふらふらとゴール前に上がりながら、スペースを探す。そして右利きのフェレイロが切り返し、やや近づいた瞬間、ディフェンスの背後に忍び込むように入り、右足で送られてきたクロスをヘディングで叩き込んだ。

 岡崎の身長は174cmで、けっして高いとは言えない。にもかかわらず、リーガ2部ではゴールの半数以上がヘディング。これは怖がらずに飛び込み、動物的な勘のよさもあるだろうが、天才的と言えるほどポジショニングとタイミングの取り方がいいのだ。

 ボールを呼び込み、仕留める。その点で、動きの質がいいだけではない。岡崎の場合、味方選手の動き方や蹴り方など癖を見抜き、そのよさを引き出すことによって、信頼を深めている。それが、同じく能力はありながら、ヨーロッパで活躍できなかった日本人ストライカーたちとの差だ。

 そしてスペインという国では、シーズン二けた得点したストライカーに対し、敬意が払われる。カテゴリーは関係ない。

 2007年6月、スペインのソリアという小さな町のパラドール(昔、王家の宿泊施設だったスペースで、各地にある)では、当時、ヌマンシアに所属していた福田健二が関係者の盛大な祝福を受けている。日本人で初めてリーガで二けた10ゴールを記録し、チーム得点王を獲得。小さな町で、福田はヒーローとして愛されていた。

 アルコルコン戦で岡崎は11点目を決め、福田が持っていたシーズン日本人最多得点記録を堂々と塗り替えている。彼は今や、ウエスカのアイドルと言えるだろう。

 VARによって7ゴールも取り消されている。そんな不運にも負けず、チームを引っ張る姿は雄々しい。そもそも、シーズン開幕前はマラガの経営トラブルに巻き込まれ、合流は開幕してからで、大きなハンデを背負ってのスタートだったのだ。

 34歳になる岡崎は、ゴールゲッターとして円熟味を深めつつある。ラス・パルマス、アルコルコン戦と勝ち点3に直結する得点を記録。それはエースの証と言えるだろう。

 はたして、岡崎は1部でも通用するのか。

「オカザキを(2部のクラブの)戦力として抱えられるなんて、とても贅沢なことだよね。非常に高い水準のプレーをする選手だ」

 ミチェル監督の言葉は、その回答になるだろう。

 岡崎とともに1部復帰へ--残るは3試合だ。次節は7月11日、ウエスカはすでに降格が決まっている最下位のラシン・サンタンデールとアウェーで激突する。