「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第6回目の講師は、インターハイ2連覇、全日本主将での北京五輪金メダル獲得、リーグ通算安打歴代1位達成(400安打、2018年)な…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第6回目の講師は、インターハイ2連覇、全日本主将での北京五輪金メダル獲得、リーグ通算安打歴代1位達成(400安打、2018年)など、数々の功績を残す女子ソフトボール界のレジェンド・山田恵里選手。全国女子ソフトボール部の現役部員など約30名が集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

今まで活動できなかった想いをソフトボールにぶつけてほしい

まずは山田選手の高校時代の写真とともに当時を振り返りながら、配信がスタート。中学校までは野球部、高校生からはソフトボールに転身し、2000年、2001年のインターハイで優勝。「朝練から放課後の練習まで、当時は毎日、毎日ソフトボールに明け暮れていた。今の守備やバッティングの原点は高校の基礎練習。基本的なことがまさに今につながっていると思う」と、高校時代の基盤の重要性について語りかけた。

大会を50日後に控えた3年生からは「試合までのモチベーションの維持、平常心を保つコツ」についての話題が。「自粛期間中はあまり外に出られていなかった。次の大会が引退試合になる」という生徒の声を受けて、「私もモチベーションが保てなくなったことはあります」と共感。「(できなかった分)あらためてソフトボールができることは幸せ。そういう想いで活動すれば自然と目標もできると思う。そのエネルギーをソフトボールにぶつけてほしい」と励ました。

同じく試合の話題につながり、「7月に大会があるが練習試合ができていない。いきなり試合になるのは不安がある」という悩みに対しては、「『試合感』は本当に大事。でもイメージ次第で練習の時に試合感を考えることはできる」とコメントし、「他(の高校が試合できていないの)も条件は同じなので、常に高い意識を持つことは大事。実際にゲーム形式での練習もいいと思う」とアドバイス。生徒も「紅白戦など取り入れてみたいと思う」と意欲を見せていた。

仲間と道具を大切に全力で楽しんでほしい

後半は、多くの生徒が抱えがちな「コンディション」や「メンタリティ」の悩みについての話題に。

「バッティングの調子が最近急に悪くなった。原因はありますか?」という悩みには、「打てないのには必ず原因があります。どうなると打てなくなるのかのポイントに早く気づくことが大切」と山田選手。「自分が考えているのと人が見ているのは違う。例えば、うまくいっている時の自分のビデオを撮っておいて見返してみるのもいいと思う。バッティングは繊細なので、気づけるまで練習を繰り返して、いい時の自分を忘れないことですね」とジェスチャーを交えて答えた。

「入部した時からインターハイを目指していたので、中止が本当に残念」と話した高校生の、「(山田選手の動画を以前観て)『どんな球でも打ち返せる』という言葉が印象に残っている。どんな心構えをしているか?」という質問には、「変化球が多かったり、コースを突いてきたりするピッチャーが多い」と分析。「ライズ(ボール)が多いとライズに対する練習、ボール気味の球を打つ練習など、練習の中で常に相手を意識していて、どんな球種に対しても打てるようにしています」とまっすぐ語りかけた。

「明日へのエール」としてメッセージを求められると、「これからソフトボールを続けるかどうかに関わらず、目標を持つことで人は変われる。仲間と道具、周りを大切にして、一日一日を大事に過ごしてほしい。明日は必ず作りあげることができるから、全力で楽しんでください」と山田選手。最後は、高校生から自然と起こった「指でハートマークを作るポーズ」を全員でイメージしながら記念撮影。大きな拍手とともに、約1時間の授業が終了した。

授業後の「アフターセッション」で高校生の本音を語り合う

山田選手とのオンラインエール授業後に、高校生と先生たちだけの「アフターセッション」を開催。授業でのエールを受けて、今のリアルな想いを自由に語り合った。

授業後の感想としては「こういう機会を作ってもらって本当によかった。普段の練習で意識していることも聞けた」と技術面での会話に充実感を感じる声や、「モチベーションや平常心の保ち方が参考になった」といった、アスリートとしての意識を刺激された声も多く聞かれた。

先生からも貴重な声が聞かれた。「最後の大会は思い切ってプレーしてほしいので、こういった機会で少しでも元気になってもらいたい」と優しい言葉をかける先生や、「(インターハイがないので)例年とは違う最後の大会になりそうだが、チームにはインターハイに賭けるような指導をしていきたい。容赦なくいきたい」と笑顔で答える先生に、「容赦なく来られるのに負けないように頑張りたいと思う」と生徒が応戦する場面もあった。

以前対戦したこともある学校同士の交流も見られた。普段会えなかったので、離れている生徒が頑張っているのを知れたことが嬉しかったという声も聞かれた。短い時間ながらも、活発な意見が飛び交うアフターセッションとなった。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、今のやるせなさ、不安感を少しでも前向きにしていける高校生が増えることを切に願ってやまない。