選手や監督の声が、客席に吸収されることなく、跳ね返って冷たく響くだけ。得点後にはサポーターの声援がスピーカーから流されたが、残念ながらそれもむしろ虚しさが増すように感じられる……。そんな雰囲気で再開したJ1第2節。川崎フロンターレ対鹿島ア…

 選手や監督の声が、客席に吸収されることなく、跳ね返って冷たく響くだけ。得点後にはサポーターの声援がスピーカーから流されたが、残念ながらそれもむしろ虚しさが増すように感じられる……。そんな雰囲気で再開したJ1第2節。川崎フロンターレ対鹿島アントラーズの一戦は、2-1でホームの川崎が勝利した。

 川崎の先制点は2分、左のショートコーナーからの流れの中から谷口彰悟がフリーで押し込んだ。



川崎フロンターレ戦に先発、60分までプレーした内田篤人(鹿島アントラーズ)

 映像で見る限り、明らかなオフサイド。試合後、オンラインでのミックスゾーン取材に対応した谷口は「疑惑の………」と苦笑い。鹿島のザーゴ監督は「明らかにオフサイド。(審判の)ミスから相手に流れが」と、恨み節を繰り返した。

 鹿島に盛り返して逆転するだけの力がなかったことも事実だが、再開初戦の早い時間帯でのイレギュラーな得点は、試合の流れを大きく決定づけた。

 長きに渡る中断期間はチームや選手に大きな影響を与えたが、必ずしもマイナスのものばかりではなかった。たとえば、この期間でコンディションを取り戻し、先発に返り咲いたのは鹿島の内田篤人だ。

 内田は2月1日のプレシーズンマッチ、水戸ホーリーホック戦で先発したが、試合途中に負傷し、65分で交代している。

「大事をとるためだ」と言い、自ら歩いてピッチ外に出たものの、このときの負傷は予想以上に尾を引き、2月16日のルヴァン杯、23日のJ1開幕戦には間に合わず、ベンチ外だった。

 公式戦が予定通り続いていれば、かなりの期間ベンチにも入れず、試合に出られない時期が続いたはずだ。それが中断期を挟んだことで、休んだのはわずか1節のみで、第2節からの復帰となった。

 先発しているくらいだから、負傷の状態やコンディションに大きな問題はないはずだが、前半はどうもうまくいかなかった。中盤とサイドバックのパス交換を増やしたい鹿島だが、本来ビルドアップに加わることを得意とする内田が、トラップやパスのミスでリズムを崩す。

 そして30分、家長昭博の右サイドからのクロスに対して、ヘディングでクリアしようとするがボールに触ることができず、内田が見ていたはずの左サイドの長谷川竜也に楽々とボールコントロールを許し、シュートを決められた。内田はピッチに膝をついて落胆の表情を見せた。

 試合後のリモート合同取材に応じた内田はこのミスに、自ら言及した。「いつもと違う試合運営に気になったことはないか?」という内容の質問に答えている最中のことだ。

 内田はまず、”キングカズ”に憧れていたこと、そして、そのカズの時代から脈々と続くJリーグの歴史を後の世代につなげていかなくてはいけないという決意を述べた。「僕らで止めない、Jリーグを」と、自分に言い聞かせるような口調で語る。そして、いきなりこう切り出した。

「その中で、内田が前半、”あーっ”というのをやっちゃいました」

「誰かにいじってほしかったんだ」とでも言わんばかりの雰囲気だ。

「家長さんのボールが伸びたんだよ。で、俺は(レアンドロ・ダミアンが)目に入ったんだ」

 自分の背後に位置する長谷川ではなく、内側のゴール前に入ってきたレアンドロ・ダミアンに気を取られていたことを告白すると、内田はそのまま机に突っ伏した。

 確かにピッチ上には強い風が吹き、ボールは落ちずに長く伸びていった。だが、それでも落下点とマークの判断を誤るようなプレーは内田らしくない。だからこそ、カメラ前でうなだれたのだろう。

 後半に入るとようやく好クロスを連発し、ストロングポイントが健在であるところも見せだが、60分で交代。内田自身、「ディフェンスの選手はフル出場してこそ」と常々語っており、満足できるプレー時間ではないだろう。

 例年とは違う変則的なシーズンに、どのように調整して自身のプレーを取り戻していくのか。内田はスタートラインに立ったところだ。