“プロリーグを起こす”1年目と、新たな取り組みに挑んだ2年目「eBASEBALL プロリーグ」は、一般社団法人日本野球機構(以下、NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)の共催という形で発足した「実況パワフル…

“プロリーグを起こす”1年目と、新たな取り組みに挑んだ2年目

「eBASEBALL プロリーグ」は、一般社団法人日本野球機構(以下、NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)の共催という形で発足した「実況パワフルプロ野球」(以下、パワプロ)のプロ野球 eスポーツリーグだ。そのリーグのこれまでの軌跡とこの先の展望について、主催のNPB、KONAMIを代表して谷渕弘氏(KONAMI/eBASEBALL プロリーグ 統括プロデューサー)にインタビューを行った。

 第2回は「1年目、2年目を終えて」。実際に2シーズンを終えての手応えやリーグの変化について取り上げる。

 2018年7月に開催発表記者会見が行われた「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」(名称は当時。現在は「eBASEBALL プロリーグ」)。同年9月にはeドラフト会議が行われ、プロプレイヤーが決定。11月に開幕を迎えた。1年目の位置づけを谷渕氏は「“プロリーグを起こす”」と表現した。

「『eBASEBALL プロリーグ』は、これまで実施されていたゲーム大会とは一線を画すものでした。“プロ”であるので報酬やスポンサーが存在し、さらに“リーグ”であるので、1日で終わるトーナメントでもない。プロテスト、eドラフト会議、eペナントレースそしてe日本シリーズと、1年目からプロ野球のスケジュールをしっかりの盛り込んだ内容での挑戦となりました」

 1年目は新しい取り組みとしても注目され、盛況のうちに終わり、2018年シーズンのe日本シリーズで、2019年シーズンの開催も発表。2年目となった2019年シーズンは、ルール変更や新たな取り組みも行われた。イニング数やチーム人数の変更、「レジェンドOB」「セ・パe交流戦」の導入など多くの変化があった。「1年目を実施してみて課題に感じたところは、2年目に思い切って変更しました」と谷渕氏は語る。

「まず試合時間が長い点。動画配信で見る方が多いeスポーツですので、なるべく試合時間を短くしようと思い6イニングから5イニング、延長ありから延長なしとしました。また、チームの編成については、プレイヤー層の拡大、新入団選手の加入による戦力均衡化、そしてプレイヤーの負担軽減を考えて、1チーム3名から4名に変更しました。ただ、1節は3試合で3人のプレイヤーが出場するという点は変更していません」

2年目はフジテレビとタッグを組み「プロ野球ニュース」とコラボした「eプロ野球ニュース」も制作

 1年目は6イニングの延長あり、最大9イニングのルール。そのため、予定時間を越えてしまうことも少なくなかった。それを思い切って変更し、引き分けの試合は1試合から17試合と増加したが、同時に試合時間が予定を越えることは少なくなった。また、プレイヤーは1チーム4人に。継続してチームに残れる選手は2人までで、2名のみ入れ替える球団もあれば、4名すべて刷新した球団もあった。

 2年目は競技のルールだけでなく、リーグの環境も変化した。かけだしの1年目は認知度も低いことからKONAMIの自社ホールを中心に行われていたが、2年目はフジテレビとタッグを組んで開催。ペナントレースの試合はフジテレビ内の特設会場で行われるようになった。また、フジテレビのCSで放送されている「プロ野球ニュース」とコラボした「eプロ野球ニュース」も制作された。

「『eBASEBALL プロリーグ』2年目にあたり、番組としてのクオリティをあげたいと考え、餅は餅屋ということで、テレビ局各社や以前から関係のあったフジテレビさんにもコンペを持ち掛けたところ、『eBASEBALL プロリーグ』の取り組みに賛同していただけました。またフジテレビさんは、これまで早期からeスポーツに取り組んでおられ、eスポーツ番組の『いいすぽ!』でパワプロを何度か採用していただいたり、2017年度に実施したパワプロチャンピオンシップスなどでも協力していただいた経緯もあり、今回のタッグが誕生しました」

「セ・パe交流戦」は、広島で初の地方開催も行われ、地元のカープファンを中心に多くの観客が来場した。「SMBC e日本シリーズ」では、パブリックビューイングにも挑戦。新たな観戦体験を模索する一方で、「現状は、若年層はYouTube等の動画を視聴される方が多いので、Web配信も重視しています」とした。実際にネット配信では100万人以上の視聴者を獲得。590万回以上の視聴数を記録した(2020年2月末時点)。

2シーズンを終えて、1年目から2年目への変化、そして一番の課題は…

 1年目から2年目の変化について、谷渕氏はこう振り返った。

「プレイヤーに関しては、2年目の方がチーム力の重要性が増してきたと感じました。パワプロは、操作が単純なだけにメンタルが非常に重要であり、各チームはチームビルディングに力を入れるようになってきたと思います。『eBASEBALL プロリーグ』はプレイヤーに恵まれており、必死に戦ってくれています。一戦一戦の勝敗に涙することも多く、高校野球を彷彿とさせるところがあります。

 メディアについては、1年目は新たな取り組みとして注目をしていただき、取り上げてもらえましたが、2年目は厳しいと予想していました。しかし、注目プレイヤーの登場や、OB選手の起用、「セ・パe交流戦」などの新たな施策、そして何よりも視聴者を飽きさせない好ゲームが続いたことで、多くのメディアの方々に取り上げていただけました。また、非常に熱心なファンの方々が毎回来場してくれるようになりました。コアなファンを増やして、彼らたち、彼女たちを中心にコミュニティを広げていければと思います」

 コンセプトである「もう一つのプロ野球」の通り、チームとしての力も重要になった「eBASEBALL プロリーグ」。パ・リーグを制覇したロッテも、積極的な声出しが印象的だった。新たな取り組みという物珍しいものから一つの競技として、メディアへの露出や、ファンも増加している。「配信コンテンツとしては、一定の手ごたえは感じています」と感触を語った。

「2年目は、さまざまなテストを行うことができたので、何を重視するかが見えてきました。同時に課題も明確になってきていますので、このパズルをどう組み合わせていくのかが難しく楽しいところでもあります。ただ、まだまだ認知度が低い。それが今でも苦労している点です」。一番の課題はやはり「認知度をいかにして上げていくか」という点。「やること(やりたいこと)は多いですね(笑)」と谷渕氏は語った。(「パ・リーグ インサイト」丹羽海凪)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)