練習時に、試合のようなプレッシャーがある状況を作り出すのは難しい。だが、試合結果に最も重要となる“正念場”を再現し、プレッシャーに強くなるための練習方法はいくつかある。・相手にブレークチャンス…
練習時に、試合のようなプレッシャーがある状況を作り出すのは難しい。だが、試合結果に最も重要となる“正念場”を再現し、プレッシャーに強くなるための練習方法はいくつかある。
・相手にブレークチャンスを与えた30/40でサービスゲームを始める
・同様に、最初のポイントで相手をブレークできるチャンスのある30/40でリターンゲームを始める
・ゲームカウント6-6になったらタイブレークを行う
・試合を1セットのみにし、最終セットのプレッシャーを再現する
このような練習方法をなんと呼ぶべきだろうか?“ナダルのアンダープレッシャー・ドリル”というのはどうだろう。ATPのデータ分析によると、ラファエル・ナダル(スペイン)が2019年シーズンで最もプレッシャーに強いプレーヤーであったからだ。【動画】ナダルが最高の舞台での大逆転劇!【動画】フェデラー自身も信じられない大逆転劇
ATPの2019年アンダープレッシャー・リーダーボードでナダルは253.1点を獲得。得点は、上に挙げた練習の中に含まれる以下の4つのカテゴリーをもとに計算される。
1. ブレークポイント獲得率
2. 相手のブレークポイント阻止率
3. タイブレーク勝率
4. 最終セット勝率
面白いのは、2019年のナダルはいずれのカテゴリーでも1位にはならなかったことだ。しかし、全ての数値を合わせて見ると、プレッシャー下での全体的なパフォーマンスはナダルが最も優れていた。
<2019年アンダープレッシャー・リーダーボード>
順位/選手名 得点
1.ラファエル・ナダル(スペイン) 253.1
2.ロジャー・フェデラー(スイス) 244.8
3.ドミニク・ティーム(オーストリア) 242.8
4.ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス) 238.7
5.ギド・ペラ(アルゼンチン) 236.3
6.ノバク・ジョコビッチ(セルビア) 234.5
7.ニック・キリオス(オーストラリア) 233.9
8.クリスチャン・ガリン(チリ) 233.6
9.フェリックス・オジェ アリアシム(カナダ) 232.1
10.ファビオ・フォニーニ(イタリア) 226.8
2018年、プレッシャーに最も強かったのは錦織圭(日本/日清食品)で、ナダルは2位だった。他の年でナダルがこのリーダーボードの首位に立ったのは2010年で、得点は252.0点だった。
ブレークポイント獲得率
2019年のナダルは、出場したATPツアーとグランドスラム大会で53勝7敗の成績を収めた。その中で、得られたブレークチャンスのうち45%(250/556)をものにしている。中でも、以下の3つの大会ではブレークポイント獲得率が5割を超えた。
大会名/ブレークポイント獲得率
「ATP1000 モンテカルロ」57.6% (19/33)
「ATP1000 インディアンウェルズ」56.0% (14/25)
「全仏オープン」53.0% (44/83)
相手のブレークポイント阻止率
ナダルは去年のATPツアーとグランドスラム大会で、相手のブレークチャンスをなんと68.4%(158/231)も阻止している。特に以下の大会での成績は素晴らしかった。
大会名/ブレークポイント阻止率
「レーバー・カップ」89% (8/9)
「ATP1000 ローマ」87% (13/15)
「ATP500 バルセロナ」77% (17/22)
タイブレーク勝率
ナダルは、キャリア通算のタイブレーク勝率が60.8%(243/400)と、歴代選手の中で12位の記録を持っている。2019年は、その記録とほぼ同じ60.9%のタイブレークに勝利し、前シーズンのATPツアー選手の中で15位だった。
最終セット勝率
ナダルのキャリア通算の最終セット勝率は68.9%。ATPツアー選手の中で3番目に高い。それが2019年は75.0%まで上昇した(同じく、シーズン参加選手中3位の成績)。
世界中のコーチは同意するだろうが、練習で試合時のプレッシャーを再現する機会は積極的に取り入れたほうがいい。これらの4つのカテゴリーをすべて取り入れたフル・プレッシャーの練習を見てみると、ナダルが試合の中でも特に苦しい試練となる瞬間をいかに乗り越えてチャンスをものにしてきたか、そしてそれが彼の成功につながっているのか、理解することができるだろう。
※写真は2020年「ATPカップ」でのナダル (Photo by Speed Media/Icon Sportswire via Getty Images)
翻訳ニュース/ATPTour.com